第235話
オフ会に参加した俺はあの事件の後の話と、クリンとルゼダの事情と砂糖を吐きそうなのろけを見せられて祝う為にケーキを注文した。そしたらリダが俺の職業を聞きたいという。ならば教えて進ぜよう!!俺の職業は!!
「俺の職業は小説家だ。」
「「「小説家何ですか!?」」」
「と言ってもまだ売れてないけどな。」
元々は自衛官をやっていたんだが、体を壊して引退。次の人生を始める中で本を読むことが好きだったのを思い出して小説家を目指し始めた。
有難い事に人気が出て、書籍化をする事になってその打ち合わせに行く途中にリダの事件に遭遇したんだなぁこれが。
「自衛官・・・その体でですか?」
「リバウンドしたんだよ。当時はもっと引き締まってたんだぞ?ほらその時の写真がこれ。」
「あっ!こっちはゲームの中のルドさんそっくりです。」
「顔は変わってませんわね。」
「かっこいい・・・・。」
「何か言ったかリダ?」
「あっいえ!何でもありません!!食生活と適度な運動をして貰えばこの体形にブツブツブツ・・・・。」
「それで!!どのような話を出版するんですの!!」
「僕も気になります。」
「あぁ、ALOでの体験を元にした奴でな。タイトルは・・・。」
何やらブツブツ言い始めたリダを放っておいて、ルゼダ達が俺の発売する作品について質問してくる。俺は自分のカバンからこれから出版する小説を取り出しながらタイトルを答える。
「『VRMMOランダムを選んだら攻撃力0になったんだが。』だ。」
「ルドさんにぴったりのタイトルですね。」
「それでずっと苦しんでましたものね。」
「まぁ理不尽な目にあったが楽しかったけどな。だから筆が進む進む。良かったら買ってくれよ。」
「絶対買います!!」
「私達も出てきますの?」
「名前は違うけどな。」
「なら買います!!」
「ヒロイン!!ヒロインは誰ですか!!」
「ぬおっ!!リダ落ち着け!!顔が近い近い!!ヒロインは読んでのお楽しみだ!!」
「む~。なら私も買います!!」
「特製ケーキ、お待たせしましたー。」
オフ会は賑やかに、楽しく過ぎ去って行った。他にもそれぞれの家庭の話だったり、今度出るゲームがどんなものなのかの予想の話をしてすごく盛り上がった。最後にはまたオフ会をしようと話をして、リダとルゼダを見送る。クリンもこの病院に入院しているからな。
看護師さんに連れられて自分の病室に戻って行くクリンを見送ってから俺も自分の部屋に戻った。うん、オフ会も良い物だな。皆と又遊ぶ約束もしたし。新しいゲームが待ち遠しいな!!
~・~・~・~・~
ALO内、城塞都市ルド。守備隊隊長室。
神々の争いからすでに1年経った。争いに巻き込まれた旅人達は亜空に帰り。それから姿を見せていない。リダちゃんの話だと旅人達はしばらくこちらに来れなくなると聞いた。戻って来るのもいつになるかは分からないらしい。少し寂しい気もするが、こればかりは仕方ない。神々の都合だと言うし、俺達に出来る事は何もない。
城塞都市はあれからさらに賑わいを見せた。旅人達が齎したスキルの修練方法を求めて各地から人が集まってきている。飛行船の製造も順調で、その飛行船で各地から人を呼び、訓練を付ける事がこの街の産業になっている。
賑わう街を見下ろしながら、空を見上げる。この世界を守って消えて行った俺の息子は亜空で無事生きているそうだ。だがこちらから連絡が取れない。その話が事実だと確認が取れない現状でその話を俺はどうにも信用できていなかった。
カマーンも、シルも消えてしまったルド達を今でも心配している。シアとアイギスもあの事件の後不思議な結晶に包まれて消えてしまった。いつも騒がしかった奴等が居なくなって、家の中は幾分か静かになってしまったな。その分双子とシルが元気に声を上げているが。
「なぁルド。お前さんは本当に無事なのか?」
カタンッ
窓の外に言葉を呟いたと同時に、俺の後ろで何かが動いた音がした。気配察知を行っていなかったはずなのに、何が起こったのか。
ゆっくりと警戒しながら後ろを振り返ると、俺の執務机の上に先ほどまでは無かった木の箱が置かれていた。
「何だこれは?」
罠を警戒しながら箱を調べる。どうやら何も仕掛けられていない様だ。俺は意を決して箱の蓋を開けた。
「これは・・・羽飾りに・・・手紙か?」
木箱の中にはどこかで見たような羽飾りと手紙が入っていた。そして、その手紙の送り主を見た所で俺は部屋から飛び出した。
「あれ隊長?どこに行くんですか?」
「ちょっと所用で家に帰る。今日は何も予定はなかったな?」
「はい、予定は今のところありませんが・・「なら後は任せる。」・・あぁ、行っちゃった。」
途中副隊長に見つかり足止めを喰らったが、後の事は全て任せて家に急ぐ。手には先程の手紙と羽飾りを握りしめて。
バァーン!!
「カマーン!!シル!!居るか!!」
「もう、どうしたのあなた。乱暴にドアを開けるなんて。壊れてしまうでしょう?」
「どうしたのお父さん?」
俺は震える手で掴んでいた手紙を見せる。握りしめていたからかくしゃくしゃになってしまったが、その手紙の宛名にはこう書かれていた。
ルドより、親愛なる親父へ
「ルドから、あいつから手紙が来た。」
「っ!?ちょっとまって!あの子達を連れて来るわ!」
「ママ!私も行く!!」
俺達は一家そろってリビングに集まり、あいつの手紙を開ける。
家族へ
元気してるか?俺の方は元気だ。生きて亜空へ戻って来たから心配しなくても良いぞ。その後そっちはどうなった?都市は無事だったか?シルやカマーンさんに双子が無事だと良いが・・・。いや無事だな、親父が付いてるなら大丈夫なはずだ。
今回は旅人の神様の協力でこの手紙を一回だけ送る事が出来る事になって、手紙を書いている。
残念な事に俺達は親父達が生きている間に戻れそうにない。こっちで色々あって戻るのはかなり先になりそうなんだ。もう親父達に会えないと思うと寂しい気持ちで一杯だ。
でも俺は何時か必ずそっちに戻る。それまで元気に・・・は無理だろうから。俺が戻った時に解るようにしておいてくれ。親父達の墓にお参りくらいしたいからさ。
一緒に送ったのは俺がずっと使っていた頭飾りだ。もしよければ使ってくれ。と言っても何も特殊な力はないけどな。力のある奴は送れないって言われたからそれにした。
親父はもうそろそろ良い年なんだから体に気を付けて家族を守ってくれよ。無茶したらカマーンさんが止めるだろうからあまり心配していないけどな。
カマーンさん、子育ては大変だと思うけど、皆に協力してもらって頑張って欲しい。親父が無茶しないように見張りも頼む。体に気を付けて。
シル、親父とカマーンさんの事頼むな。後2人が双子に無茶しない様に見張ってくれ。そしてシル自身も、一杯食べて一杯遊んで元気に成長してくれ。
事がうまく運べばルーシとドルーには生きて会えるかもしれない。まぁ未来はどうなるか分からないけどな。
皆長生きして幸せに生きてくれ。俺がそっちに戻った時に悲しい話を聞かされるのは無しだぞ?そうなったら死んだ親父達の魂引っ張り出して一発殴ってから冥府に送り返すから。
色々あったけど、俺は親父達に会えて本当に良かった。助けてくれてありがとう。息子と呼んでくれてありがとう。これでお別れになるけど、俺はずっと家族だと思ってる。
お元気で。
ルドより親愛を込めて。
「ったく何が心配してないだ。」
「まったくねぇ。私なんて頼まれ事ばっかりよ?」
「ルド兄、私頑張るよ!!」
手紙を読み終えて、全員の瞳には涙が浮かんでいる。ルバートは再度手紙を読み直し、カマーンは双子にお兄ちゃんが居るんだよと話しかける。
シルは、ルドが送って来た髪飾りを頭に付けて拳を握る。兄の様に人を守れるように訓練している最中なのだ。その思いは手紙によってさらに高まった。
「あいつが帰って来た時にすぐ解るようにしないとな。」
「あら、なら何か偉業を達成するのが近道ね。」
「無茶しちゃダメなんだからね!!」
ルドからの手紙で笑い声が響く家。その空気は最初の様に少し沈んだ物では無く、あの巨人が居た時と同じような暖かい空気になっていた。
後年、城塞都市の守備隊長ルバートは攻めて来たアメロ法国からロロキー王国、ニノヒ帝国、ソノーハ魔道国の3国を守ったとして貴族に任命される。領地として望んだのは城塞都市であった。死後、いつもは倹約家だったルバートの墓がこれでもかと派手に作られた理由を知る物は家族だけであったという。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited
これで第1部完!!という感じですw
どうですかね?色々やりたいことを詰め込んだ作品です。週間ランキングに載ったり、フォロワーが1000人を超えたり、星と♡に応援コメントを沢山頂きました。お陰様でここまで続けることが出来ましたよ!!応援ありがとう!!
一応の一区切りで・す・が!!まだまだルド君たちの話は続きます!!ちょっと盛り込み過ぎたので次からは色々と整理してリスタートです!!それでもドタバタわちゃわちゃの物語になると思いますので、引き続き応援よろしくお願いします!!
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