デスゲームのその後

第233話

俺は病院で目が覚めた。どうやらご近所の人達が通報してくれたらしい。俺がALOをプレイしているのは話していたからね。消防隊に救助されて入院中だ。ドアの修理代いくらになるんだろう・・・。


「まっ、生きているだけ儲けもんか。」


病院のテレビでは今も大々的にALOの事件を取り扱っている。一般人が遊ぶゲームを軍事利用したとして、国のお偉いさん方がどんどん捕まっているそうだ。下手をしたら死人が出ていたって事で厳しい罰が言い渡される予想だってさ。


その中で某国と繋がり、そこからもたらされたプログラムを勝手に使った阿呆議員の罪が一番重いとして終身刑の判決が出ていた。何やら今回の暴走騒動の原因がそれだったんだとか。


その詳細はEEDに登録していた情報端末に送られてきた。どうやら神様たちから話を聞いたリダ達が送ってくれたみたいだな。


俺が消滅した後、何やらリダが強烈な一撃を放って父神を吹っ飛ばしたんだそうだ。その時父神から飛び出した水晶が某国の作ったプログラムの核だったんだと。


父神は家族のいる世界と、母神の存命を求めて議員と契約。その某国のプログラムを受け入れる事にしたんだけど。純日本製のAIに無理矢理某国プログラムを入れたものだから不具合起きまくりのバグ大量発生に繋がった。


おかげで感情制御プログラムが外れて行動を縛られる事は無くなったけど、バグを制御しきれずに暴走。母神と家族を奪おうとした人間を憎むようになったんだとさ。


父神に組み込まれたプログラムは内部から国内のセキュリティプログラムを攻撃する物だったみたいで、そのせいで母神の事を認識出来無かったらしい。彼女元々は防衛用のAIだから敵認定だったそうだ。プログラムを持ち込んだ某国は軍の中枢にそれを仕込んで日本の情報管理をガタガタにしようと目論んでいたと父神自身から話を聞かされたらしい。


捕まった議員の家からその計画のやり取りと、マスタープログラムが出たからさぁ大変。大勢の人の命が失われる所だったと日本の議員の間で会議が紛糾。これじゃ埒が明かないと議員の一人が仲間と協力して独断でその情報を国連に提出。厳しい処罰を求めた。


その行動に日本国内も大慌て、でも裏で某国と繋がっていた議員が事件と関連した情報を消そうとしていたという話が密告という形で出て来てお咎めは無しに、それ所か証拠と情報を守ったファインプレーだったとして多くの人に受け入れられた。


国連の方も明確な侵略行為であると某国を批難。各国からの経済制裁が加えられて今悲鳴を上げているらしい。今回の件は何処の国も擁護して貰えなかったみたいだね。


残った皆は無事にゲームからログアウトした。俺みたいにゲーム内で死亡した人達は、気を失うだけで済んでいるけど、脳に電気を流されているから異常が無いか念のために調べるって事で検査入院をしているのが現状だね。


そうそう、残念な情報が1つ。それはALOのサービス終了のお知らせ。今回の事件を受けて、ALOは一旦サービスを終了させてセキュリティやゲームシステムを根本から見直すらしい。海外での発売もあったのに中止になってその発表に批難轟轟ですわ。


もちろんそのヘイトは馬鹿な事をした議員連中に集まっている。なんと海外の首相からも残念だと直接声明を出される程日本の恥になったよ。まぁ某国が一番恥を掻いていたけど。


再販は未定、一応プレイしていた人達には優先して購入権を与えられるらしい。EEDも全て返品処理。代金の方は返金か、新しいゲームが出来たら購入権を使って機器とソフトを貰うかで選べるようになっていた。俺はもちろん機器とソフトを選んだぞ!!


ピロン♪


「おん?あっルゼダからか。」


情報端末にメッセージが送られてきた。送り元はルゼダから。題名は・・・『オフ会について』?


拝啓ルド様、お加減は如何でしょうか?

この度連絡をしましたのは、先に約束していたオフ会について話を詰めたかったからです。と言っても大抵の事は決めてしまいましたわ。


場所はルドさんの入院している病院の1階にある一般人も使えるレストランですわ。明日の正午、そこに来て下さいまし。私が個室を予約しておきましたのでルゼダの連れと言って下されば案内してもらえますわ。


心配させた償いとして代金は全てルドさんに持ってもらいます!!皆沢山食べるつもりですから覚悟しておいてくださいまし!


と言う事で明日を楽しみにしておきますわ。


追伸:ルドさんが生きていてくれて本当に良かったです。また一緒に遊べるようになる事を願っています。


おいおいかなり急な話だな?しかも集合明日って検査だったらどうするつもりだったんだ?まぁそんなものはないから大丈夫だけど。でも俺オフ会入院服で参加するの?いや着替えて行けばいいか、ご近所さんが持って来てくれているし。とりあえず明日の12時はレストランでオフ会っと。


しっかし暇だなぁ。こういう時こそALOがやりたいぜ。親父達とか無事かなぁ。シアとアイギスはどうなったかなぁ・・・。そこら辺の情報が全く無いのも心配だよな。


コンコンコン


「はい?」


俺、一応今回の被害者なんで治療費もろもろはセカンドライフ社(に迷惑を掛けた議員の資産)から出して貰っている。そんでもって個室なのよね。いやぁ、重い病気でも怪我でもないのに個室使えるとか本当に贅沢。そんな部屋に誰か来たみたいだ。


「失礼します。私、セカンドライフ社の社員で佐藤と申します。この度は多大なるご迷惑をおかけして申し訳ありません。海堂守様。」


おっと、セカンドライフ社の社員様のお出ましだぞ?と言っても悪いのはこの人達じゃないしね。むしろこの人達は俺達の命を救ってくれた側だ。だから謝られる事は無い。


「いえいえ、皆さんがいなければ私はこうして生きていません。どうぞお掛けください。」

「そう言って頂けて助かります。次がありますのでこのままお話させて頂きます。守様のプレイデータについてです。」


佐藤さんの話によると、俺のキャラデータであるルドはウイルスに汚染されて消失してしまったんだそうだ。ただ、キャラデータが消えただけでその付属データである装備やアイテムのデータに、友魔であったシアとアイギスは無事だったらしい。


「つまりはSPやステータス、スキルのデータが消えただけと?」

「そうです。つきましては、守様はわが社の次世代ゲームとソフトの交換を望まれています。その際に残ったデータを引き継がせて頂ければと。」


なるほど、これも補償っていうわけだね。シアたちのステータスはもちろん新しいゲーム用に調整するらしいけど、思考AIはそのままにしてくれるみたいだ。うん、それは願っても無い事だ。


「お願いします。あのままお別れは寂しいですから。」

「・・・そうですね。もう一点お詫びをしなければいけません。」

「もう一点ですか?」

「はい、新しいゲームの舞台は皆さんが遊んでくださったあの世界になる予定です。」

「おぉっ!!それじゃあ住民たちにもまた会えるんですね!!」

「それが・・・。」


父神にいじられた世界は見た感じ普通だったけど中身がグチャグチャになっていたらしい。その世界の修復と、今後同じような事が起こらない様にする調整で、あの世界の時間は今60倍になっているそうだ。


「あの事件からもう3日経っている。と言う事は・・・。」

「すでに180日経過しています。ゲーム発売も未定ですので、守さんが仲良くしていた住民に会う事は・・・。」


そっか、親父達にはもう会えないのか。それは、寂しいな。


「すみません補償を貰うついでに一点だけ良いですか?」

「なんでしょう?」

「住民にメッセージを送らせて欲しいんです。」

「それは・・・・すこし本社に確認します。」


あぁ、俺のわがままの所為で仕事増やしちゃったな。でもシアとアイギスにまた会えるとしても、親父達に別れの言葉を言えないのだけは辛いよ。


「はい、はい、ありがとうございます。では失礼します。確認が取れました。1通だけメッセージを送る事を許可できます。」

「それは1人に1通ですか?」

「すみません、一度だけです。複数の人には送れません。」


だったら親父に送ろうかな。メッセージは佐藤さんが責任をもって送ってくれるというからお願いした。うん、会えなくても別れの挨拶が出来たなら割り切れる。それに、同じ世界なんだから親父の子孫に会える可能性もあるし。


「それではメッセージの件、確かに承りました。退院までもう少し時間が掛かりますのでご自愛ください。」

「ありがとうございます。ではよろしくお願いします。」


部屋を出て行く佐藤さんを見送って、窓から外を見る。あの世界で見たように澄んだ色はしていないけれど、そこには青空が広がっていた。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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