第188話
はい、黒い瘴気に取り込まれ絶賛クエストのラスボスとして鎮座しているルドです。暇です。だってこいつ全然動かないんだもん。
侵食率はやっと50%行った所。アロハ達も動けるようになって色々討伐の準備してる。そんでもって新発見!!なんとこいつ瘴気の塊だけあって浄化石の効果が在ったよ!!
浄化石を投げられると侵食率が下がります。うん、そうなんだ。本当ならもう侵食率100%になって暴れてる時間なんだ。ログイン制限時間が来てログアウトして戻ってきても状況変わってないって何なの?ゲームやってるはずなのに暇すぎて死んじゃうよ?
動かない俺の目の前には旅人と巨人族の村の住人が次々集まってきている。仲間も合流したよ。ローズ何て俺の変わり果てた姿に涙流してたわ。その後浄化石の効果が在るって解った時は鬼の様な形相で投げまくってたけど。
あとはまぁ時間が余りまくってるからヘルプさんに色々聞いてみた。まぁ今回のワールドクエスト関係の事だね。
ワールドクエスト:世界の存亡に関わるクエストの総称。クエストの成否によって世界は形を変えていく。
破滅級魔物:世界の在り方を変えてしまうほどの力を持った魔物の相称。その魔物に破壊された場所は何人たりとも立ち入る事の出来ない禁忌の土地になってしまう。
はい、これくらいしか返事は帰って来ませんでした。でだ、今回のクエストの報酬どうなっとんの?と聞いた所。
ルドの貢献度 通常 50% 特殊 80%
こんなんでましたぁ。通常ってのは浄化をどれくらいしたとか、住民をどれだけ助けたかって事らしい。特殊はストーリーに関わったキーとなる住民を助けたかどうか。俺の場合は生贄にされそうだったローズの身代わりになった事でなんと50%も稼いでいた。後の30%は万魔図書と村長を助けた事だね。どれだけ重要なんだローズの奴は・・・。
【ルドさーん。大丈夫ですかぁ~?】
【おうクリンか。暇すぎてしぬぅ~。】
【あはは、元気そうですね。】
【そっちはどうなってんだ?もう動けそうなのか?】
【今参加者が続々こっちに来てます。浄化石の確保も行ってますよ。】
【まさか瘴気石を使ってわざとミアズマを沸かせるとわなぁ。】
【アロハさん達がやろうとした事をメガネさんが修正して安全になりましたからね。石の確保は順調ですよ。】
瘴気石は使用すると汚染地域を広げる。だけど、瘴気自体は空気より重いので壁があれば閉じ込められる。メガネは壁を作って区画を作り、そこに瘴気石を使ってミアズマが沸く状態を作り出したって訳だな。アロハ達が瘴気石を1カ所に使って瘴気汚染を広めない様にしようとしたって話からヒントを貰ったらしい。
そんでもって今回のキーアイテムはどう考えても浄化石なのでその数を確保しようって事だ。瘴気が集まった時になぜか瘴気石だけ残ったからな。こういう風に使う事も想定されてたんだろうってルゼダが言ってた。
【今侵食率は何%ですか?】
【ん~?今70%くらいか?】
【あっじゃあ追加の浄化石投げときますね。】
【おう、しっかしいつまでこの状態が続くんだ?マジで暇で死にそう・・・。ゲームで暇で死にそうって何言ってんだって感じだが。】
【クエストの開始時刻が明確じゃ無いですからね。まぁもう少しでメガネさんが算出した浄化石の数が揃いますし、それまでの我慢ですよ。】
【そうだな、早く揃ってくれねぇかなぁ石。】
【それじゃあ浄化石投げますねぇ。】
【あいよ。】
クリンが浄化石を使って瘴気の体に投げ入れる。通常であれば石はその効果を発揮して瘴気が少し晴れ、そこを埋める様に他の場所の瘴気が動くんだが、今回は様子が違った。瘴気の体が投げられた浄化石を避けたのだ。
『GUUUGAAAAAAAAAAA!!』
【いきなり動き出したぞ!!うわっ!!侵食率がいつの間にか100%になってる!?】
【僕皆を呼んできます!!】
走り去っていくクリンを見送りながらいきなり侵食率が上がった原因を考える。侵食率は瘴気を晴らせば下がる。ってことは瘴気を補充すれば侵食率は進む?でもここら一体の瘴気はこいつが全部吸収して・・・。おや?よく見たら脚から触手が地面に突き刺さってるが?
もしかしてこいつ、浄化石を確保する為に作った瘴気エリアから瘴気吸収してた?こりゃ急いでチャットで知らせないと!!
【エラー!!現在他者との連絡は一切取れません。】
だぁーーーっ!!侵食率が上がったからなのかチャット使えねぇ!!
『GIIIAAAAAAAAA!!』
動き出しちゃったなぁ。もうこうなったら俺に出来る事は無い。外の皆、頑張って!!
~・~・~・~・~・~
クリンの報告で湖の外れに作られていたベースキャンプは大騒ぎになっていた。
「戦闘要員はすぐに戦闘準備!!浄化石は確保できた量を運び出せるようにして下さいまし!!」
「浄化石の確保は継続!!数の確保を最優先!!」
「ルシファーにも連絡!!いつでも動けるように準備を!!」
「お前等キリキリ動け!!ちんたらしてたらやられちまうぞ!!」
相手が突然動いても大丈夫なように準備は進めていた。だが浄化石の量が心許ない。その為に浄化石の確保は継続して行われる事になってしまった。それが相手の力になるとも知らずに。
「隊長!!あいつこっちに来るっす!!」
「瘴気が狙いか!!あいつをこっちに近付かせるな!!」
「テッタさんがすでに向かっていますわ!!ヘイトが取れれば何とかなるはず!!」
「へいへい師匠こっちですよ!!『誘引の歌』ららぁ~♪」
最大まで巨大化した真っ黒なルドがテッタの歌に気を取られる。その間に他の旅人の準備が終り、攻撃が開始された。だが参加したメンバーの中には自分勝手に動く者達も居た。
「じゃんじゃん攻撃しろ!!相手はデカいだけのウスノロだぞ!!」
「おらっ!!毎度毎度重要そうなクエスト拾いやがって!!俺らの恨みを思い知れ!!」
「盾職が出しゃばってるんじゃねぇよ!!」
「お前等むやみやたらに攻撃するんじゃねぇ!!このままじゃヘイトがっ」ドガーンッ!!
今回のクエストはワールドクエストの一環、そこに参加を拒否するフィルター機能は無かった。過去ルドに対して鬱憤を溜めていた連中がここぞとばかりに攻撃を続ける。そして、テッタのヘイトスキル以上のヘイトを稼いでしまった。
ルドの攻撃により舞い上がる土埃、傍から見ればその光景は絶望そのものだっただろう。しかし彼らは落ち着いていた。
なぜならばルドを取り込み巨大化した瘴気は攻撃力を持たないと予想されていたからだ。過去、ハンニャベアゴーストに憑依されても攻撃力を発揮しなかったルド。今回も同じようになると予想されていた。
だが彼等は気が付くべきだったのだ。瘴気を纏った彼に“いつも以上にダメージが入っている”事に、ダメージが入った事によりヘイトが移ってしまったという事実に。
あの敵に攻撃力は無いという予想は最悪の形で裏切られる。
「今の攻撃で攻撃班の1割が死亡!!」
「なに!!」
「HPを削られた者も複数です!!瘴気汚染の状態異常も広範囲に!!」
「すぐに回復職は浄化と回復を!!」
「瘴気エリアが綺麗に無くなっています!!エリアの地面に穴を確認!あの巨人が瘴気を取り込んでいった模様!!」
「見て下さい!あいつの形が変わっていきます!!」
ルドの体を黒く染めていた瘴気は、メガネが作った瘴気エリアの全ての瘴気を吸収してグネグネと気味悪く動いていた。そして次第にその形がはっきりと見える様になると、黒い戦国武将が着ていた様な甲冑の姿を取っていた。そしてその両手にはいつの間にか、ルドでは装備できない大太刀が握られている。
「おいおいおい、マジかよ・・・。」
『GIIIIIIIIIIIIAAAAAAAAAAAAAA!!』
大太刀を掲げながら叫び声を上げ、般若を模した仮面の目を赤く光らせる黒い巨人。攻撃を加えた場所は地割れを起こし、戦っていた旅人の姿はそこにはない。絶大な破壊力を持った本当の巨人との戦闘が今、始まった。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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