第166話

あの後村の復興は急ピッチで進んだ。俺も昔取った杵柄じゃないけど、慣れた土木工事をガンガン進めて村はあっという間に元通りに。


「うっし、これで終わり!!」

「あなた~ご飯ですよー!!」

「おいおいリダさんや。記憶戻ったんじゃなかったの?」

「いやぁ~。ルドさんって呼ぶと周りの人の目に疑問が浮かぶんですよ。この間何て近所の奥様に喧嘩したの?何て聞かれましたよ?」

「あぶぶぅ~。」


リアンも又赤ん坊の姿に戻っている。どうやら俺は鎧を着ている間、本からの影響を遮断出来るみたいだが他の2人は違うようだ。俺の鎧が在ったくらいなんだから恐らくリダの装備もどこかに在るはず。それを装備したら影響は無くなるんじゃないかってシロクマが言ってた。外界に由来の在る物がこの世界の物を遮断するとかなんとか?


詳しく説明すると俺達はどうやらこの本に書かれた物語の登場人物の一人として役割を押し付けられているらしい。だって初対面のはずのドータイ村の人達から昔から住んでいた夫婦として認定されているからね。かなりおかしい状態よこれ?


だからこの世界では俺とリダは夫婦で、リアンは息子の役をやらないといけないという強制力が存在する。


いやぁ記憶を取り戻した夜に、リアンを寝かしつけたリダがきわどい格好で寝室に来た時は驚いたよ。世界の強制力が在るから俺が拒否しようとすると涙目になるし、(実際少し泣いちゃったし・・・。)しょうがないから俺は鎧を着たままベットで一緒に寝る羽目になった。


鎧の周りを癒す力で影響力を抑えられるとシロクマが言ったからね。仕方ないね。しかも俺が鎧を着てないとその効果が発揮されないっていう・・・。寝にくいったらありゃしなかったよ。それと不思議な事にログイン制限時間が大幅に伸びてた。なんと本の世界で10年だとさ。現実の俺の体大丈夫かね?


と言う事で悠長にしてられない現状。畑と家はサニアさん家にお願いして俺達は旅に出る事にした。早く呪いの元凶叩かないと何させられるか解ったもんじゃねぇ。


道中でリダの装備も探していかないとなぁ。四六時中べったりはさすがに俺も堪えるのですよ・・・・・。俺にだってそういう欲は在るんだから、リダみたいな人と同衾なんて身が持たんわ!!


てなわけで今最後の畑の世話を終えた所だ。朝飯を食ったら出発する。記憶を取り戻した事でステータスやスキルも戻ったし、インベントリも使えるから旅の準備は万端だ。


「それで、どこに行くんですか?」

「とりあえず王都アルデニアを目指そうと思うよ。何も情報が無いからな。」

〔呪いはこの世界の深い所に在ると推察されます。王都に向かうのは無駄にならないかと。〕

「赤ん坊の姿で流暢に喋るとちょっと不気味だな・・・・。」


想像してみ?赤ん坊が突然表情を消して淡々としゃべるんだよ?めっちゃ怖いよね。


「あぶぶぅ~?」

「はいはい、リアンちゃんご飯ですよー。」

〔私に母乳は必要ありませんよ?〕

「はっ!?又引っ張られました。」

「ちょっと楽しんでない?」

「楽しんでませんよ?」


一応今は癒し効果の範囲に2人を入れてるけど、強制力がよっぽど強いのかたまに役割としての動きをしてしまう。リアンなら赤ん坊として、リダは母親として妻として動いちゃうんだよね。じゃないと俺の目の前で授乳しようとしないだろ普通。


リアンは元々魔導具だったからなのか、赤ん坊の体でも食事やら排泄はしないらしい。体調に変化も無い事から事実だと思う。でも姿は赤ん坊なんだから気を付けろよ?ふわふわ浮かんでいたら某サイボーグ集団のエスパーベイビーに見られるぞ?あっ知ってる奴が居ないか。


朝食を取り、忘れ物が無いか確認してから家を出る。村の入り口に行くとそこにはサニアさん一家と村長が見送りに来てくれていた。


「あんた達が居なくなると寂しくなるね。」

「ドータイ村には長い間お世話になりました。」


実際にはそんなに世話になって無いけどな。


「わしからも礼を言う。村の住民を救ってくれてありがとう。村の復興までして貰って助かった。お礼と言っては何だがこれを持っていくと良い。」


そう言って村長が取り出したのはどこかで見た事の在る手甲。


「我が家に代々伝わる防具じゃ。持っていくとええ。」

「あっはい、貰っていきます。リダが持ってて。」

「やっぱりしっくりきますね。これで私も戦えます。」

「赤ん坊を抱っこしてるんだから戦うのは控えなよ?」

「あぶぶー!!」


村長から渡された手甲はリダが使っていた物だ。俺の装備は全部シロクマがかき集めて持って来てくれたから揃っていて問題ない。でもここでリダの装備が来たって事は本来なら事件を解決して装備を集めていくのか?ダンジョンとかが在ったら宝箱の中に入れられてそうだなぁ。集めるの相当面倒くさいぞ?


「それでは、これで失礼します。」

「いつでも戻っておいで。それまで家は綺麗にしておくよ。ジークが。」

「サニアさん程々にしてあげて下さいね?それでは失礼します。」

「ばぁーぶぅ~。」

「気をつけて行くんじゃよ~。」


こうして俺達はアルデニアに向けて旅を始めるのだった。


はい、旅を始めたつもりでした。今起こった事を簡単に言うと、村を出たと思ったら大きな街の入場列に並んでいたでござる。なして?


「なんでもう着いているんだ?」

「物語的に省略したからじゃないですか?ほら、良く話が飛んでいる事って在るじゃないですか。」

〔道中何も無ければ省略されるあれですね。〕

「しかも何やら見覚えのないアイテムがインベントリに入ってるし。」

「それは多分あれですよ。道中倒したモンスターの素材って奴ですね。この後換金して資金にするとか、王都に入る為の支払いに使うんですよ。」

〔これも良くある奴ですね。〕


王都に入る為の身分証はドータイでちゃんと貰ったから問題ない。資金は手持ちのマネがそのまま使えるからそっちもしばらく大丈夫。まぁ本の中の素材は何かに使えそうだから取っておくか。


「あっルドさん見て下さい!!私の装備がいくつか入ってます!!」

「よく見たら俺のインベントリに盗賊の頭が入ってるんだが?えっ何?俺達盗賊のアジト襲って来たの?マジで?もしそうなら文章になるよね?なんでなって無いの?」

〔あっ盗賊の頭の説明文に何か書いてありますね。〕


盗賊の頭:王都に向かう夫婦を金づるだと思い襲った哀れな男の頭。子供を人質に取ろうとして親の逆鱗に触れ、一方的に殲滅された。本来であれば主人公にサクッと倒されるはずだったが、その前にサクッと倒された可哀そうな人。


「うっわ、物語り捻じ曲げちゃったよ。」

「良いんじゃないですか?おかげで私のアクセサリーは全部戻って来ましたし。」

〔綺麗な指輪ですね。おやお揃いじゃないですか。結婚指輪ですか?〕

「違うな。」

〔では婚約指輪ですね。おめでとうございます。〕

「違うからな?リダもそこで顔赤くして無いで反論してくれよ。」

「結婚・・・・婚約・・・・・ぷしゅ~。」


真っ赤な茹でタコになっているリダは放っておくとして、説明文の中に気になる文章が在るな。やっぱりこの話には主人公が居るんだな?一体だれだろう?


〔呪いと関係しているかもしれません。その主人公を見つける事も目標とした方が良いかもしれませんね。〕

「つってもこっちもヒントは無いんだよなぁ・・・。いや在るか?」

「在るんですか?」

「この盗賊、主人公にサクッと処されるって書いてあるだろ?だったら主人公はいずれ俺達が通ったルートに来るって事だ。そこで盗賊を倒した奴が主人公だろ?」

「盗賊、全滅しているみたいですが?」

「そうなんだよなぁ・・・・。しまったな。」


インベントリの中に盗賊の頭の首ってのも在るんだよ。うん、やっちゃったみたいだぜ☆


〔物語の強制力で盗賊が復活する可能性もあります。〕

「それもあるか、まぁでもまずはリダの装備集めと呪いの所在を掴む事だな。簡単な場所に在ると良いんだが・・・。」

「まずは宿を取らないとですね。それと冒険者登録ですよ。」

「俺達農家だからな今。登録は必要だな。」


街に入ったら冒険者ギルドに登録して賊の討伐報告だな。いつまでもインベントリに生首入れとく趣味は無い。ここら辺もパッと場面転換してくれませんかね?


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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