第145話

「おーいルドさーん、こっちでーす。」

「おー、メガネ待たせたなぁー!!」


広場に到着するとすでにメガネ達は待っていた。でも来るって言っていたもう一つのギルド2人はまだ見えない。


「イベントダンジョン以来だな。」

「えぇ、その節はお世話になりました。おかげで魔法銃開発が進みましたよ。」

「実用化できそうなのか?」

「やはり起動に必要なMP量がネックですね。あそこだけはまだ弄れてませんので。」

「館長?自己紹介は良いのですか?」

「おっと申し訳ありません。こちらが英知の図書のメンバーで今回の記録役の」

「ノートと言います。よろしくお願いします。」

「ルドです。解りやすい名前ですな。」

「ルゼダですわ。よろしくお願いしますわ。」

「ははは、良く言われます。あぁ敬語は必要ありませんよ。こちらは館長が厳しく指導しているのでこのような話し方ですが。」


ノートさんもメガネと同じようにアクセサリーとして片メガネを掛けている。白髪くせ毛で緑のベストに茶色いズボン。ベストのポケットにはペンとメモが差し込まれ、手には本を持っていた。


「珍しいですか?」

「ん?あぁじろじろ見てすまない、見た事なかったからな。これが『書記』の武器なのか?」

「えぇ、職業としての『書記』は陰陽師とかに近いですね。紙に言葉を綴り、それを武器としますから。制限はありますけどね。」


書記ってのは特殊職の1つで、生き残った他の開拓村が街に発展した時に発見された職業だ。図書館のある場所で見習いからコツコツ修行する事で転職出来る様になる。攻撃方法は手に持った本に文字を書き、その文字の意味する事象をMPにより具現化する事。


メモ帳なんかでも良いらしいけど、書き込む紙が小さいと発動する文字が一文字とかになってしまって威力が出ない。だからノートさんは本を持っているというわけだな。前衛と言うよりは後衛職って感じの職業だ。


なお、開拓村が発展すると特殊職が出てくると知って最初の襲撃を逃げ出した旅人達は阿鼻叫喚の責任のなすりつけ合いをしたそうな。結果、助けようとした旅人を邪魔した赤落ちが悪いという事になったらしい。なんだかなぁ。


「それで、他の2人は?」

「少し遅れるそうです。1人は知っていますよね?」

「あぁ、砦を襲撃するときに助けてくれた『森の人』のウケンさんだろ?もう一人は?」

「『森の人』から優秀なスカウトが来ると聞いて居ます。」


スカウト、これは盗賊からの派生職業。盗賊と違って罠の発見や使用に特化していて、隠れたモノを見つける力が強い。戦闘方法はなんと銃とナイフ。銃が使える数少ない職業として最近人気らしい。ちなみにスカウトも元開拓村で最近発見された職業の1つだ。


「おう、待たせちまったか?」

「すみませんっす!!待たせたっす!!」


そこに、皮の帽子にゴーグルを付けて、ベージュの服に革ベルトを沢山括り付け、道具をジャラジャラぶら下げた、細見でちょっと背の高い、それでも鍛えている様な体をした男と。左右の大きさが違うレンズの着いたゴーグルと同じくベージュの服と帽子を着け、一部分がとても大きな小柄な女性が到着した。


「丁度あなた達の事を話していたんですよ。」

「おうそうか。丁度よかったな。俺はウケンだよろしくな。」

「自分ララって言うっす!!あこがれはトレジャーハンターっす!!よろしくっす!!」

「ルドだ。よろしくな。」

「ルゼダですわ。よろしくお願いしたしますわ。」

「メガネです。今回の調査ではお2人の力に期待していますよ。」

「ノートです。バシバシ記録を取りますので任せて下さい。」


自己紹介が終った所で今回の目的地についての話になった。


「その場所ってどこに在るんだ?」

「3番目の開拓村があった所から、ぐるっと山を回ってソノーハ側に行った所だ。」

「領地的にはロロキー王国の土地なんですが。たまにソノーハ側の人が関与しているとみられる盗掘が在る場所なんです。」

「それは国として抗議しませんの?」

「ロロキー王国としては抗議していますよ。情報によるとソノーハ魔道国でも犯人を捜していますが捕縛までは出来ていません。どうやら第3国の介入があるそうです。でしたよね?ノート。」

「違います、しっかりしてください館長。記録によるとロロキー王国とソノーハ魔道国合同で何度か盗掘者の一斉検挙が実施され大半は逮捕されました。ですが何か月かすると又盗掘者が出るという鼬ごっこに発展。現在は発見された遺跡群は両国の兵士が管理しています。第3国の関与はまだ確認されてませんが旅人が関与していると思われる事件は多数あります。」


ノートが胸からメモ帳を取り出して調査結果を話す。それを見ながらメガネはうんうんと納得したかのように頷いていた。


「きちんと情報を整理していつでも引き出せるようにしている。師として鼻が高いですね。」

「こんな所で試さないで下さい。」

「でだ。話を戻すと俺達のギルドにまだ未発見の遺跡があるかもしれないから調査して欲しいと依頼が来てな。そこで発見されたのが例の遺跡だ。」

「すでに遺跡の場所は両国に報告して警備の兵を送って貰っています。私達はその遺跡がどのような遺跡なのかの調査を追加でお願いされたんです。」

「だがいくら調べても壁画くらいしか無くてなぁ。そこで関係ありそうなルドに声を掛けたんだ。」

「なるほど?」

「どうしてルドさんが関係していると解りましたの?」

「ノートが一度下見に赴いた時、遺跡の入り口に書かれていた文字の解読に成功したんですよ。」

「それで?何が解ったんだ?」

「遺跡の名前です。あの遺跡は『巨神墓所』という名前で呼ばれていたそうです。」


巨神墓所?あー、心当たりあるわぁ~。めっちゃ心あたり在るわぁ~。これの事ですね解ります。


<金剛巨人体>:その肉体はかつての巨神の最初の体。いずれそこに至る為の鍵。


鍵なんて書いてあるからなんのこっちゃと思ってたけどこう言う事だったのかぁ。あれ?って事はオリジンスキル強化されるの?待って?突っ込んだSPどうなるんだ?


「何か心当たりがあるんですかルドさん?」


俺が難しい顔をして考え込みだしたのを見て、メガネが声を掛けてきた。


「あー、多分俺のオリジンスキルに関係してるんだとは思う。でも確証は無いぞ?」

「本当か!?」

「確証が無くても良いんすよ。我々としたら調査が進む方が大事っす!!」

「ルドさんに心当たりが在るのでしたらさっさと向かいません事?時間が勿体無いですわ。」

「おう!!情報はSNSに上げちまったからな。無茶な調査をする連中が出ないうちに行くぞ!!」

「移動手段はどうすんだよ?結構遠いんじゃないか?」


俺の疑問にウケンがニヤリと表情を歪ませる。ララも何やらマネをしてフッフッフッフと笑ってるな。何か在るのか?


「俺達の秘密兵器を見て腰抜かすなよぉ~?」

「なんですの?もったいぶらずに早く教えて下さいまし!!」

「じゃじゃーん!!簡易転移装置ぃ~っす。」

「説明しよう!!この簡易転移装置とは、転移魔法を1度だけ発動できる魔道具なのだ!!通常転移魔法は二つの魔法陣の間を行き来する魔法だが、この簡易転移装置はマーキングした場所に飛ぶことが出来る!冒険を続ける中で物資の補給を行う際、今まで移動してきた道筋をショートカット出来る便利な道具なのだ!!」

「まぁこれも発見した遺跡の遺産を研究して作ったんっすけどね。」


ドヤ顔で取り出したのは何やら筒の様な装置。ライトの様になっている頭と、銀の本体、そしてその本体の真ん中に赤いボタンが付いている。うん、3分間しか変身できない巨人の変身アイテムそっくりだ。開発者の中にあの作品が好きな人が居るな絶対。


「それで遺跡まで一気に飛ぶんだな?」

「そうだ。本当なら飛行船とか作りたいんだけど安全面と素材が足りん!!」

「なぜ飛行船ですの?」

「冒険家といったら飛行船っす!!ロマンっす!!」

「そのロマンは最後炎上して墜落したりしてませんか?」

「そんな恐ろしい物には乗りたくないですね・・・。」

「えぇい!!今回はこれを使うから大丈夫だ!!と言う事で早速いくぞララ!!」

「ハイっす!!それじゃ早速ポチっとな。」


ララが装置のスイッチを入れると俺達の足元に魔法陣が光り、次の瞬間には視界が真っ黒になっていた。

 

毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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