第48話
訓練用に使っているであろう場所で相対する俺とリダさん。俺は攻撃を受けるだけだから気楽なもんだけど。リダさんは見るからに緊張している。
そんなリダさんの様子を見てミオカさんはため息を吐いている。
「こりゃリダ!!もっと肩の力を抜かんか!!そんな事では技は出せんぞ!!」
「はいっ!!」
おぉっ!!ミオカさんの激励で見た目には緊張が解けた!!ってかミオカさん普段はおっとりしてるのに、今すっごい迫力だったな。
「では準備は良いかの?では始めっ!!」
お爺さんの始めの声にリダさんが突っ込んでくる。俺は盾を構えて技を受ける態勢を取る。あれ?なんかリダさんの腕が輝いている様な・・・。
「心義夢想流『心通』!!」とんっ
それはとても軽い音だった。盾で受けたかどうかも分からない程の衝撃。でも次に起こった事に俺は驚愕する事になった。
「グッ!!」
「ルドさん!?」
リダさんの攻撃はちゃんと盾で受けたはず。なのに俺の体にはダメージがしっかりと入っていた。確認したら・・・・HPが100程減っている。
「リダや。良くやったの。」
「えぇえぇ、最初はどうなるかと思いましたが。きちんと出来ていましたよ。」
「ほっ本当ですか?本当に?」
「えぇ、完璧な『心通』でした。」
「やったー!!」
嬉しさのあまりリダさんがピョンピョン飛び跳ねてるよ。俺はと言えば受けたダメージに驚いて尻もちを着いちゃった。でもちゃんと防御してるのに何でダメージが?
「ふふふ、不思議かの?」
「ちゃんと防御したはずだよな?何でダメージ受けてるの?」
「しておったな。さすが村の英雄じゃ。じゃからこそ余計に解らん、そうじゃろ?」
「全然予想が付かないなぁ。リダさんが何かやったのは解ったけど。あの腕が光ったのが原因?」
もし何か在るのならあれが原因としか考えられないんだよなぁ。爺さんの顔を見ると何やら考え込むような顔をしてらっしゃいますけど?
「・・・・見えたのなら特別に教えてやろうかの。あの子の使った技、と言うか流派じゃな。あれはわしらが使っている流派の元になる物の1つじゃ。そしてその流派は心の強さを尊ぶ。」
「心の強さ?」
「そうじゃ、人の心は弱い。誘惑に、暴力に、己自身の意思にさえ簡単に負けてしまう。そんな不自由な心を完全に自身の制御下に置き、何度折れても、何度負けても立ち上がり目標に向かって邁進する強い心にするのが心義夢想流じゃ。そしてその技は文字通り、心に義を宿し、夢や想いを拳に乗せて相手に叩きつけるのじゃよ。リダが使ったのはその技の初歩じゃ。」
「えっとつまり、あの攻撃は物理的な物じゃなくて。かといって魔法的な物ではない。その人の心そのものだと?」
「そうじゃ。じゃからこそ防御は意味をなさぬ。まぁまだまだ未熟じゃからの。ルド君を倒すには至らんかったがの。」
いやいやいや!!それってDEF無視攻撃って事ですよね!?俺の存在価値全否定の技伝授しておいて未熟なんて辞めてくださいよ!!免許皆伝とかなったら俺消し飛びますよ!?
「さて、リダや。」
「はいっ!!」
「これで正式に心義夢想流の弟子となれるが。どうするね?」
「お願いします!!私はまだまだです!!だから本格的に鍛えてください!!」
「その意気や良し!!これまでより厳しい修行となるが覚悟しておくのじゃよ?」
「負けません!!」
「ふふふ、強くなったわね。」
これ入門試験だったのか。良かったねリダさん。俺も何か対抗策考えないとなぁ。このままだともしこれからDEF無視攻撃をしてくる敵が現れても盾にすらなれないよ。
ピンポンパンポーン⤴ お知らせします。世界で初めて指南役の内弟子になったプレイヤーが現れました。これより師弟システムを起動します。内弟子プレイヤーが新たなステータスMINDを発見しました。ステータスに反映いたします。ご確認をお願いします。ピンポンパンポーン⤵
「えっ!?」
「どうしたリダや!?どこか具合でも悪いのかい?」
「あらあら大変、すぐにお薬を。」
「あっ違うんです、突然力を貰ったんでびっくりしちゃって・・・。」
「ふむ、さっきの声はリダの事じゃったか。まったく王都の連中は何をしておるのか・・・。」
「秘伝を教えるつもりは無く、簡単な技術のみを伝えたんでしょうね。そんなものは師弟とは呼べませんから。」
おう、俺の目の前で新たな可能性が花開いたぞ!!なるほど、リダさんみたいに誰かに教えを乞い、認めて貰えばその人の秘伝を教えて貰えると。
あっなるほど!!クイシさんが言っていた制度ってこれの事か。そりゃ武術大会に出るなら弟子入りの話になっても不思議じゃない。
( ゚д゚)ハッ!なら俺も爺さんに弟子入りすれば攻撃出来るのでは?そうとなれば早速ステータスを確認してMINDが在るかチェックしなければ!!
名前 ルド
ATK 0
DEF 40(+400)
SPD 10
MGK 0
DEX 40
LUK 20
MIND 100
良しっ!!良しっ!!よぉぉぉぉぉぉっし!!在った!!俺にも在ったぞMIND!!しかも100も!!これで後は弟子入りして流派を覚えたら攻撃出来るかもしれない!!
あれ?でも100って強いの弱いの?初期ステより頭一つ突出してるから強いんだろうけど・・・。うーんどうなんだろう?
「お爺さん、私MINDが200も在るんですが普通ですか?」
「ほっほっほ、それは修行の成果じゃよ。わしらから見ればヒヨッコじゃが、今それだけあるなら他の連中よりは高いはずじゃ。」
「なるほど!!じゃあもっと修業を頑張れば・・・。」
「もっともっと強くなれるの。本当なら数値化なんぞしない方が良いんじゃがな。」
おろ?爺さんは数値化反対ですか?同じ事を思ったのかリダさんが爺さんに質問している。
「お爺さんは数字で見える事に反対なんですか?」
「心とは目に見えぬものじゃ。調子の悪い日、調子の良い日もあるじゃろう。たとえ心義夢想流を会得したとしても、その時々の状況で心には影響が出てしまう。そんな物が数値化できるわけないからの。じゃからリダは目安程度にしておくのじゃよ。」
「はいっ師匠!!」
「うむうむ、良い子じゃ。」
ふむふむ、なる程ねぇ。まぁ心なんて見えない物を数字に表すのは難しいか。
それよりMIND100は結構多い方なのか。あっさっきダメージが100も有ったのはMINDの差か!!MIND攻撃は自身のMIND-相手のMINDで威力が決まるのか。早めに知れてよかったな。
「あっルドさん今日はありがとうございました。これで正式に弟子になる事が出来ました!!」
「こんな事で良いならいつでも手助けするよ。でも弟子ならすぐに成れたんじゃないの?」
「それは私の方からお願いしたんです。試験をして合格したら本当の弟子にして欲しいって。」
「そっか、でも良かったね。合格おめでとう。」
「ありがとうございます!!」
さてここからが本題だ!!俺も爺さんに弟子入りして攻撃力を手に入れるぞ!!
「爺さんちょっと尋ねても良い?」
「んっ?なにかの?」
「俺もリダさんみたいな技が使いたいから弟子入りしたいんだけど。」
「無理じゃな。」
無理なの!?あっこれ又何か条件が在るパターン?そろそろ俺も慣れて来たな。
「あー、条件を満たしてない?」
「そうじゃの、お前さんの場合は格闘系の技を覚える職業ではない。じゃからわしらの技は覚えられんの。」
あー、やっぱりそうかぁ。まぁうすうす分かってましたけどね?だってもし覚えれるなら攻撃力が無くて嘆いてる俺に一番最初に声かけてくれるはずだもの。それくらいの信頼関係は築いてるよ。
「あっなら他の師匠になってくれるような人に心当たりない?もし知ってたら教えて欲しいんだけど?」
知っていたら親父に手紙を頼んで出して貰えばコンタクトは取れる。今の所旅人で双盾使いは俺だけだからもしかしたら村に来て貰えるかも知れないしね。
「うーん、わしには覚えがないのー。どうじゃ婆さん?なにか知っとらんか?」
「あら?お爺さん忘れたんですか?とってもお強い双盾使いの方がいらしたじゃないですか。」
「そうじゃったか?誰じゃったかのぉ~。」
おぉっ!!そんな人物が居たのか!!ミオカさんが強いというならかなりの実力者のハズ。ぜひ弟子入りしたい!!
「シチートさんですよお爺さん。」
「おぉ!!あの若者か!!最近とんと活躍の話を聞かんのう。」
「風の噂で聞きましたが、どうやら王都を追い出されたみたいですよ。」
「何とっ!!あの御仁のおかげで多くの命が助かったというのに、王都の連中も薄情じゃの。」
王都を追い出された?なにかあったのかな?まぁそんな事はいいや、それより俺の師匠になってくれそうな人の情報もっとプリーズ!!
「そのシチートさんって人が双盾使いの師匠なのか?」
「双盾師だったはずですよ。どんな技を使っていたかは聞いたことが無いのだけど『城塞のシチート』と言う異名で知られた方だったの。」
「その人は今どこにいらっしゃるんですか?例えば他の場所で道場を開いているとか、戦っているとか・・・。」
「それが分からないの。以前ならすぐに居場所が分かったのですけど。今は何処に居るのか・・・。王都を出てからの足取りが誰も辿れていないのよねぇ。以前なら冒険者ギルドで依頼を出せば簡単に連絡が付いたんですけど・・・・。」
「冒険者ギルドでも連絡が取れずに困っているそうじゃ。全くどこに行ったのやら・・・。」
「そうなのか・・・。」
くぅっ!!この手が届きそうで届かない感じ!!でもこれを乗り越えたらきっと俺の元に攻撃手段を授けてくれる師匠が現れてくれるはず!!
「すまんの、わしらも何か分かったら連絡するとしよう。」
「私も!!SNSや掲示板で何か情報を掴んだらお教えします!」
「昔の伝手を使って聞いておきましょうか?」
「皆ありがとう!!もしどこかで話を聞いたら教えてくれ。それまでは自分でも探してみるよ。じゃあな!!」
師匠になるかもしれない人が居るのであれば次は人探しだ!!まずは親父の所に行くぞ!!
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます