第37話
イルセアさんはすぐに村に来てくれた。
「お久しぶりですイルセアさん。」
「ルドさんもお元気そうで何よりです。」
「今日はPTメンバー一緒じゃないんですか?」
「えぇ、ギルドを立ち上げまして今メンバーの勧誘と調整に奔走してます。私も最近はずっとそちらに掛かりきりで、実は今日も村に来るのは建前で少しは休めとメンバーに送り出されたんですよ?」
「良い人達が集まったんですねぇ。道場の時からイルセアさん働きすぎだなぁって思ってましたから。」
「まぁルドさんまで!!酷いです!!」
「はははははっ。」
久しぶりだから会話も弾むね!!イルセアさんの格好はバッチリ魔女って感じになってる。黒い鍔広の三角帽とこれまた黒いローブ。手には木で出来た杖を持っていて胸元には赤い宝石を使った金細工のネックレスが下がってる。えっ?胸部装甲?知らない人ですね。(目を逸らしながら。)
「何やらルドさんから失礼な気配を感じますが・・・。一発逝っときます?」
「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そんな一杯飲みに行く?みたいな軽い話じゃないから!!魔法銃の比じゃないくらい熱量を持った火球で攻撃されたら文字通り逝っちゃうから!!
「さて冗談はここまでとして。」
「冗談で良かった・・・。」
「ルドさん、この度は申し訳ありませんでした。」
「えっ!?あっ?!へっ?なにかされましたっけ?」
「村の防衛を一人にお任せしてしまって申し訳ありません。」
頭を下げるイルセアさん。そりゃ思う所もあるよ?お世話になった村を助けずに他の街や王都に戦力を集中して何やってるんだって。でもさ、一部の人は村に戻ろうとして赤落ちに狩られてたって聞いた。そうしたらそんな怒りもどっか行っちゃった。
「イルセアさんが謝る事じゃありませんよ。それに村は無事守れましたし。」
「ですが村の防衛に参加していればお一人に負担を掛けずに済んだかもしれません。それに村の人達を見捨てる事も・・・。」
「この村の人達は誰一人欠けずに生き残る事が出来ました。確かに他の村の人達は残念な結果になってしまいましたが、なら次は全部守れるように強くなればいい。そうでしょう?」
「・・・・そうですね。」
うーん、やっぱり負い目が在るのかなぁ?表情が硬い。イルセアさんみたいな人なら住民から旅人がどう思われているか察しが付くだろうし・・・。まぁでもこの村に限って言えばその心配は杞憂なんですけどね?教えてあげまっしょい。
「この村に移住してきた人達も最初は旅人に当たりが強かったんですよねぇ。なんで助けてくれなかったんだって。旅人達が居れば村は守れたってね?そしたら村長がこの村はたった1人の旅人に助けられたんだって広めちゃったんですよ。それはもうこっちが赤面するくらいに、辞めてって言っても辞めてくれなかったし。あれは拷問ですよ拷問。」
突然村の移住者の話をし始めて目が点になるイルセアさん。いやぁーあの村長の熱弁。顔から火が出るかと思ったよ!!
「その上で旅人にも理由が在って、中には助けようとした人も居たはずだって説得してくれました。そのおかげで村に助けに来てくれた旅人も居たと、彼らのおかげで命が助かったと証言する人が出て来ましてね?旅人にも色々な人が居る事を知ってくれて、今この村に居る人達は旅人に対して悪感情は持っていませんよ。むしろ今度こそ守り切る為に強くなろうとしているって知って、なら自分達も戦えるようになろうって一緒に訓練してます。だから心配しないで下さい。いつでも帰って来て良いんです。村の英雄である俺が保証します!!」
「ふふふ、そうですか。そうですよね。今度は助けられるように強くなれば良いんですよね。」
やっと笑いましたな。やっぱり女性の笑顔は良いもんだ!!
「ありがとうございます。気を遣わせてしまいましたね。」
「何の何の、道場のお礼だと思ってください。」
「お礼をしたいのはこちらの方ですよ。こちらが約束の品です。」
イルセアさんがローブの下から取り出したのは小さなハンドベルとどこかチュ〇ルを思わせるような魔物用の餌だった。
「このハンドベルが友魔の鈴と言います。こちらの餌がモンチュールと言いまして懐きやすくするものになりますね。モンチュールの方はレシピもお渡ししておきます。
「おぉぉぉぉぉっ!?これが在ればモンスを友魔に出来るんですね!!」
「えぇ、ですが注意点があります。」
「注意点?」
「文字通り魔物と友達になって初めて友魔として登録されます。ですので力で押さえつけたり、何か物を対価に友誼を結ぶことは出来ません。」
「えっ?じゃあモンチュール駄目じゃないですか。」
「それは魔物にこちらの話を聞いてもらうための道具です。モンチュールを食べさせるから友魔になってくれと言ってもすぐに飽きてしまってどこかに去ってしまいます。」
なるほど、話をする機会を作るだけで対価としては価値が無いのね。
「後は友魔となった後もしっかりとコミュニケーションを取り、仲を深めないといけません。強い魔物が居るからと今までの友魔をないがしろにしてはどちらの友魔にも愛想をつかされます。」
「友魔は何匹も作れるんですか?」
「そうですね。ただしあんまり多いとやはり相手にし切れなくて愛想をつかされて全員に逃げられますから2~3匹が適切ではないでしょうか?」
10匹も20匹も連れてたらそりゃ目の届かない子も出るわな。それで嫉妬したり呆れたりで離れて行ったら他の友魔の好感度も下がると。結構維持が大変かな?
「鈴はどう使うんですか?」
「もし友魔となっても良いという子が居たら。その鈴の音を聞かせてあげてください。契約が完了すると鈴が光りいつでも呼び出せるようになります。もちろん常に一緒に居ても問題ありません。ですが中には体の大きな子も居たりしますので、そういう時は鈴の中で休んで貰うんです。」
「へぇ~良く出来てますねぇ。」
俺のサイズ自動調整みたいなスキルがなきゃ街とかにも入れないだろうしね。救済措置だなうん。
「鈴の中はどんな空間何でしょう?」
「プレイヤーは入れませんのでわかりません。ですが、こちらの声は聞こえているみたいですよ?だから鈴の中に居ても話しかけてあげると、呼び出した時に反応してくれます。」
「あぁ、そうやって体の大きい子ともコミュニケーションを取って仲を深めるんですね。」
「そうです。一番は外に出してあげて直接触れ合う事ですけどね。」
鈴に閉じ込めっぱなしってのも檻に入れてるのと一緒な感じかね?ストレスが溜まって暴れ出すかも知れないしな。気を付けないと。
「他に注意点はありますか?」
「友魔は倒されても時間が経てば復活します。細かい理屈は解りませんが、どうやら契約すると鈴の中に魔物の本体とも呼べる物が移るそうです。ですから時間さえあれば元に戻るそうでうね。ですがどのくらい時間が掛かるかは友魔が受けた傷やレベルに寄って変わりますので十分注意してあげてください。」
「わかりました。」
友魔が倒されても復活するのは良いね。でも多分倒され過ぎても好感度は下がるだろうからここも気を付ける必要があるな。
「それでは早速試してみましょうか。」
「付き合ってくれるんですか?」
「休めと言われて時間が在るんです。でも何をしていいのか・・・。」
「ははは、根っからの仕事人間ですね。では一緒に行きましょうか。」
「えぇ、では最初はスライムあたりから挑戦してみましょう。」
さぁて、どんな子が友魔になってくれるかな。楽しみだ!!
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます