新たな仲間

「よし、お前の名前は『グレイ』だ。よろしく頼むぞ!」

「ガウォン!」


 名前を付けられ、シルバーアッシュウルフ改め『グレイ』は嬉しそうに一吠え。デカい尻尾をビュンビュン振っている。ハハハ、かわいい奴め。


 思わずその毛をずっとナデナデしていたが、ミュアとゼファーの怪訝な眼差しに気づいてふと我に返る。おっと、いけないいけない。


「ゼファー、ミュア。ありがとうな。お前たちの協力でテイムに成功したよ。これでやっと従魔士って胸張って言えるぜ」


 俺がそう言うと、二人とも嬉しそうに笑いかけてくれた。良かった、嫌われてなかった。


 因みにレア個体のテイムはかなり厳しいらしく、今のところレア個体を狙っていてもテイムできたという話は見かけていない。まぁ、俺みたいに秘匿しているという場合もあるが。


 なにはともあれ、これでまた新たな仲間が加わった。さて、ステータスを見てみよう。


 ――――――――――――――――――


 名前:グレイ

 レベル:20

 種族:シルバーアッシュウルフ【レア】

 状態:従魔契約

 契約者:ユーク


 HP:210 / 210

 MP:80 / 80

 STR:390【×1.3】

 VIT:260【×1.3】

 INT:65【×1.3】

 MIN:65【×1.3】

 AGI:325【×1.3】

 DEX:26【×1.3】


・アビリティ

【獣性】【孤高の狼】【獣戦術】【忠誠心】【レア個体】

・スキル

『スタイルガード』

・アーツ

『咆哮』・獣戦術(『単爪斬』『連獣爪』『グラビティバイト』『ノックアタック』『ビーストラッシュ』)


 ――――――――――――――――――


 テイムしたグレイはレア個体として出現した時よりもレベルが下がっていた。普通のモンスターであれば、テイムすると特定のレベル帯に下がるらしい。ゼファーがレベル1だったのもそういう理由なのかもしれない。ミュアが現時点のカンストだったのは謎だ。もしかしたらまだ先の方で開放される系のキャラだったのかもしれないが、真相は不明だ。


 ゼファーやミュアが完全にINT特化型のステータスだとしたら、グレイはSTRとAGI特化型のモンスターである。スタイル的にはレンに近いが、あっちは更にスピードを高めているので、相手にならない。というかプレイヤーと純粋なモンスターを比較してはいけない。


 VITの数値も高いので、近接攻撃や物理攻撃に対しては、AGIが低いため避けきれないことがあるミュアを庇うということもあるかもしれない。唯一のスキルである『スタイルガード』は仲間を庇う際のダメージ量を一定割合減少させる効果がある。


 因みに、モンスターは自分が発動したいと思ったタイミングでスキルやアーツを使用する。そのタイミングはモンスターによってまちまちであるため、従魔士であるプレイヤーがちゃんと指示をしてあげなければ、変なタイミングで使用する場合がある。


 ある程度信頼を重ねると、従魔士との絆によってこちらが指示をしなくてもベストなタイミングでアーツやスキルを使用するようだが、まぁそれは追々の話だ。


 で、そのアビリティなのだが結構色々覚えている。これもレア個体故なのか。


 まずはウルフ系を始めとする獣型モンスター全般が持っている【獣性】だが、これは獣らしく戦うことを示すアビリティで、これがあるとレベルアップ時にSTRが上がりやすくINTが上がりにくいという効果がある。まぁ、成長方針のアビリティになる。


 次に【孤高の狼】だが、これは従魔が自分一体である時に、全ステータスが1.2倍になるというもの。現在はグレイの他にゼファーやミュアが居るので発動していない。逆にグレイ一体だけの場合なら高いステータスが更に高くなるので強力だが、せっかくの従魔士の特性を無視して一体だけ強くなっても不便なので、残念ながら死にアビリティとなる。


 【獣戦術】はレベルアップ時に獣戦術アーツを習得するという技能アビリティ。ゼファーの【精霊術】と同じようなものだ。因みにゼファーでもそうだったが、モンスターの場合はアビリティレベルではなくモンスターレベルに応じて新しいスキルやアーツは習得する形となる。


 【忠誠心】は単純に『号令』なしでも俺の指示を素直に聞いてくれるという効果だ。最初の方のゼファーのように話を聞かなかったり、勝手な行動をしたりすることが無くなるようだ。成程、お前さてはいいやつだなグレイ。


 最後の【レア個体】は、レア個体であることを示すアビリティで、レベルアップ時にレアなアビリティを習得しやすくなるという効果だ。どのようなアビリティを習得するかは不明で、おまけにどのタイミングで習得するかも不明となる。一応、その手のアビリティは『☆』のマークがアビリティ名の後ろに付くらしいので一目でわかるらしい。まぁ、貰えるだけマシだと思っておいたほうがいいのかもしれない。


 アーツは吠える獣なら覚える、相手に恐怖状態とスタン状態を確率で与える『咆哮』と、後は獣戦術アーツだ。


「ざっと見たが、中々いい性能しているな。流石はグレイといったところだな。よし、これから宜しく頼むぞ!」

「ガウゥン、ガウァ!〔よろしくお願いします、主殿!〕」


 グレイの鳴き声と共に、【テレパス】の効果でグレイの心の声が響いてくる。お前、そういう感じの忠誠なの? 主殿ってお前……いいやつじゃん。


 ついさっきまで命のやり取りをしてたとは思えないが、まぁそれはそれ。今は共に戦う仲間になったのだから良しとしよう。


 さて、それでは俺のレベリングを再開しよう――ってそもそも元はゼファーのレベリングだったな。




 ――――――――――――――――

(9/12)グレイのアビリティ【希少種】の名前を【レア個体】に変更しました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る