第170話
学園長がイヤなタイミングでナルタに現れた。
そして柱のような魔道具を地面へと突き刺す。
「これは……?」
「受信柱と呼ばれる魔道具だ。まぁ、見ていろ。」
柱が発光すると次々とフル装備の魔法師や騎士が現れた。
そして最後に現れたのはマルクさんとビリーさんだった。
「全員整列!!」
マルクさんの号令と共に騎士、魔法師が整列する。
「これよりナルタ防衛戦を開始する!!第一陣である我々は援軍到着までこの地を死守する!いいか、無駄死には許さん!」
「「はっ!!」」
「それでは各自、持ち場へと移動せよ!」
マルクさんの号令と共に兵士達は持ち場へと移動していく。
「お待たせしました。」
学園長がマルクさんとビリーさんに頭を下げる。
「いやいや。君の協力のお陰でこんなにも早く転移出来たんだ。助かったよ。それにしてもまさかラグナ君がもうここまで来ているとはね。」
ビリーさん達は転移の魔道具で移動してきたらしい。
「驚くべき移動速度だな。それよりも……」
マルクさんが俺の頭に手をポンと置いた後にナルタの領主へと振り向く。
「お前は何故こんな所にいるんだ?」
「な、何故とは?」
「領民の命が脅かされている今、何故お前は領主の屋敷にいるのだと私は聞いている。」
マルクさんがギュッと手を握り締めている。
「や、屋敷より領軍に対して指示をしておりました。」
「ほぅ?現場で現状を把握する事もなく指示していたとお前は言うのか?」
「はい。指揮する立場の者に何があっては混乱してしまいますので。」
ナルタの新領主はさも当たり前かのようにそう述べた。
マルクさんの雰囲気がピリピリとしたものに変化。
「現場を知らずに指揮が出来るわけ無かろうがぁぁ!!」
「ぐはぁぁぁぁ!!」
マルクさんに思いっきり殴られて吹き飛ばされる新領主。
「貴族が率先して領民を守らなくてどうする!!お前の生活は誰によって支えられていると思っておるのだ!!」
マルクさんのあまりにも迫力ある怒号にナルタ新領主一家は萎縮してしまう。
「とりあえず王に報告だねぇ。全く……ごめんね、ラグナ君。こんなん見せちゃって。さてと……冒険者ギルドのギルド長呼んできてくれるかな?」
マルクさんやビリーさんの部下達はテキパキと指示通りに動いていく。
『今すぐにアオバ村に行きたいのに……』
その後冒険者ギルドのギルド長が部屋に来ると軍との一時的な協力協定が結ばれた。
最初、冒険者ギルド長は協力協定に対して渋っていたが……
「じゃあ万が一防衛に失敗したら声明を発表するね。ナルタの領民の命を守るために軍は命を賭けて戦い抜いたが冒険者ギルドは一目散に逃げていったって。構わないよね?」
そうビリーさんに提案と言う名の脅しを受けたギルド長は顔色が真っ青に変化し、協力協定について書かれた契約書にすぐサインをするのだった。
「さてと……ラグナ君にも軍と共に戦ってもらいたい気持ちはあるんだけどね……でも村が心配で集中出来ないだろう?だから一つだけ条件をのんでくれたら許可するよ。」
条件だろうと何だろうと村に行けるなら何でもいい。
「条件はね。『絶対に死なないこと。』約束できるかい?」
「絶対とはいいきれませんが、善処し……」
ラグナが言い切る前に地面がカタカタカタと揺れ始める。
『地震?この世界で?』
徐々に揺れが増えていく。
カタカタカタ、ガタガタガタ。
「な、何だ!?」
揺れと共に地響きの様な音が聞こえてきた。
慌てて屋敷から退出し、外に出る。
「グルァァァァァァ!!」
空気がビリビリとするほど大音量の咆哮が聞こえる!
ラグナ達はあまりにも大音量の咆哮に耳を押さえてしまうほどだった。
「何が起きた!?」
すぐに兵士が駆け寄ってきた。
「ド、ドラゴンが出現!!アースドラゴンが出現しました!!」
ドラゴンと聞いて全員に緊張が走る。
「終わりだ……終わりだぁぁ。」
ナルタの新領主は頭を抱えて座り込む。
無様な姿を晒す領主一家を放置すると高台へと急いで移動する。
『スモールアースドラゴンとは戦ったけど、アースドラゴンはあれをデカくした奴なんだろうか?』
アオバ村に行く許可が出たと思った矢先にこれか……
そして高台に登りドラゴンの姿を確認してラグナは固まる。
『で、でけぇ……』
スモールアースドラゴンは3メートルほどのサイズだったが……
『あれどんだけデカいんだよ!!あれの10倍以上ありそうなサイズじゃないか!!』
アースドラゴンが尻尾をぶるんと振るうと魔物達がまるで玩具のように吹き飛び、食べられていく。
「魔物達はコイツから逃げるために魔の森から出て来たのか!!」
「救援を急がせろ!!俺達はすぐに行くぞ!!」
ビリーさん、アムルさん、学園長は現場へと急行する。
『俺は……』
今すぐアオバ村に向かいたい気持ちはある。
でも目の前に現れたあれをどうにかしないと……
ナルタだけでなく王都にも危機が……
両親や村の皆、それにクラスメイトや王都で出会った人達の顔が思い浮かぶ。
「クソドラゴンがぁぁぁ!!」
ラグナは大声で叫ぶと魔道具を起動し、高台から飛び降りる。
そして、そのまま街中を爆走していく。
ビリー達は高台の階段を急いで下っている際にラグナの怒りの咆哮を聞く。
「ラグナ君はドラゴンに萎縮するんじゃなくて、流石だねぇ。」
ビリー達は高台の階段から外に向けて顔を出し、ラグナが叫んだのを見上げると驚いて固まる。
「「……」」
驚くのも無理は無い。
まさか上から飛び降りるとは思ってもいなかったのだから。
飛び降りたラグナを見て慌てて身を乗り出して無事を確認する。
「なんだあれは……」
ふわりと着地したラグナは地面を高速で滑るように移動していた。
「お先に失礼します!」
学園長であるイアンは階段から外へと飛び降りると、空を飛んでラグナを急いで追い掛け始めた。
大臣2人も慌てて階段を駆け降りるのであった。
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