第164話
「次の目的地はここだよ。」
以前ミーシャさんが案内してくれた魔道具屋へと到着した。
「へぇ、メイン通りじゃなくてこんな場所にも魔道具屋があるなんて知らなかったよ。」
3人で店内へ。
「いらっしゃい。」
店内に入るとニコニコと笑顔な老人の店主がすぐに現れた。
そして俺達3人の服装に付いているマークをチラッと確認していたのを俺は見逃さなかった。
「お久しぶりです。入れ替え試験の後に来る予定がこんなにも遅くなりごめんなさい。」
ラグナは現れた店主にすぐに謝罪する。
『たぶん覚えられてはいないだろうけど……』
しかし店主の反応は違っていた。
「ミーシャさんに連れられてきて以来ですね。活躍は耳にしております。学園内の記録を塗り替えて記録更新を続けていラグナ君に、珍しい魔法を使える双子のルーさんにテオ君ですね。こんな小さなお店にようこそいらっしゃいました。」
覚えてくれていた事にも驚くけどルーとテオの事を完全に把握していたことにも驚くばかり。
驚いている俺達を余所に店主が店の入り口から外に出ると表示札を切り替えていた。
『休憩中』
「お待たせしました。これでゆっくりご案内出来ます。では以前の約束を果たすとしましょう。私の後について来て下さい。」
店主のお爺さんの後に続いて店の奥へと進む。
すぐに店の壁が現れて行き止まりに。
「行き止まりやな……」
「見た目ではそう見えるようにしてますので。」
そう言うと店主は突然驚く言葉を発する。
「開けゴマ!!」
するとゴゴゴと音を立てながら地面が開いていく。
そして現れたのは地下へと向かう階段。
「では下に降りるとしましょう。」
驚いて止まっている俺達に早く来るように店主は催促するとスタスタと階段を降りていく。
そして階段を降りた先にある扉を開くと真っ暗な空間が広がっていた。
『真っ暗で何も見えない。』
店主が暗闇の部屋の入り口付近の壁を触る。
すると部屋の照明が点灯し明るくなる。
「凄い……」
部屋の室内全面に剣や杖だけでなくアックスやハンマー、ガントレットや弓やよくわからない形の武器?のようなもの。
騎士が装備するような鎧からローブ、様々なサイズの盾。
それらが綺麗に触れられないように囲われて展示されていた。
「こちらに展示されている武器や防具、アクセサリーなどは全て魔道具になっております。伝説の装備と呼ばれている魔法効果を持った武器や防具やアクセサリーなどを人の手によって再現した物がこちらの品々です。」
展示には説明文などが記載されておりどのような効果が発動するのか。
魔石の消費量はどの位なのかが記載されていた。
うわぁ……物によっては馬鹿みたいに魔石をガンガン使ったり魔力消費のみで起動出来る武器など様々だった。
『うーん……剣の魔道具なんかはなぁ……ファイアーソードとかアイスソードとかは魔法剣が使えるから必要ないよなぁ。』
それからも説明文を読んでいるがこれと言ってピンと来る物が無い。
しばらくふらふらと見て回っていると雑に床に放置されている武器や防具の場所に辿り着いた。
「こちらの品は商品としては売り物にならない物ばかりでして……」
説明文が直接商品に張り付けてあるくらい雑に扱われていた。
「作者が少しばかり変人でして……尖った性能のものばかり作るんですよ。たまに大当たりもあるのですが……」
3ヶ所ほど持ち手がついている杖を手に取る。
『擬似エクスプロージョン発生装置。爆炎魔法を擬似的に再現した杖。起動には魔法師3人の魔力が必要。暴発の危険有り。』
皆が集まって1つの杖を握ってるってシュールな光景だよな……
それに魔法師3人の魔力を使って暴発の危険だなんて目も当てられない……
でも爆炎魔法を擬似的にとはいえ再現出来たのは凄いな。
隣に置かれていた分厚い靴底が物凄く歪な形で窪んでいる靴の説明文はさらにぶっ飛んでいた。
『ダッシュシューズ。靴に魔力を流す度に靴底にて小さなウィンドボールが発生。靴底にて爆発した衝撃で高速移動が可能になる。』
「流石にこれは……」
「えぇ……何度か連絡しやり取りをしているのですがこの様な物ばかり作っているんです。」
店主のお爺さんが遠くを見つめながら疲れきっているように見えた。
ん?これは?
おもむろに迷彩柄のローブを手に取る。
『草原や森限定、カモフラージュローブ。魔力を流している間のみ装着者の臭いをカット、風景に溶け込むような色へと変化し隠れることが出来る。』
「へぇ、これ面白いな。これ欲しい。」
その後もこの作者の作品だけをひたすら漁っていく。
店主曰く何故か魔石交換タイプを作るのを嫌がり、作品は全て魔力消費タイプしか作らないとのこと。
何度言っても魔石交換タイプなど邪道だの一点張り。
まぁこの人の作品はぶっ飛んだ物ばかりだから魔石交換タイプだと魔力が足りなくて起動出来ないんじゃないか?
『ホバーシューズ。魔力を流している間強力な風が出続けるので地面より数センチ浮くことが出来る。』
もしかして……黒い○連星で有名なド○ごっこが出来るのか!?
でも地面から浮いてるだけじゃ移動は出来ないし……
そう思っていると隣にピッタリな商品がありました。
まるで本当に再現されているかのようなバーニアノズルが背中に付いているような鎧が。
『ダッシュメイル。魔力を流す量によって威力は変化するが鎧の後ろから風が出て移動をサポートしてくれる。また緊急時には鎧前方に開いている穴からも風が出るので急制動も可能。』
よし、買おう。
店主さんにカモフラージュローブとホバーシューズとダッシュメイルを購入することを伝えると何度も本当にいいのか確認された。
過去に面白いからと買って怪我をした人もいるらしい。
何があっても文句は言わないと伝えると渋々販売してくれた。
「3つで本来ならば大金貨4枚ですが……長年売れ残っており処分にも困っておりましたので、大金貨2枚でいかがでしょうか?素材だけは一流の物を使用しているので元々の仕入れ価格が高額なのです……」
本来ならば大金貨4枚……
半額だとしても大金貨2枚……
まぁミルクティーのレシピが大金貨5枚で売れたから遺産に手を付ける訳じゃないしいいか。
「それじゃあ大金貨2枚でお願いします。」
ギルドカードを提示して大金貨2枚支払う。
「なんや、ヘンテコなもん買うたんか?」
「変わってる形状してるね。どんな効果だろ。」
ルーとテオもどうやら魔道具を購入するらしい。
ルーは簡易型魔力障壁装置。
咄嗟の判断で自分の身を守る際に魔力障壁を自分で展開するよりも早く魔力障壁が展開出来るらしい。
テオはまさかの俺と同じ作者の作品を購入。
しかもダッシュシューズを。
テオに対しても何度も本当にいいのか店主のお爺さんは確認していた。
「いやはや長年魔道具屋を営んでおりますが遊び半分ではなく心の底からあの作者の作品を買いたいと望む者が現れるなど思ってもいませんでした。流石、学園最強の1年特級組の皆さまでございますね。一般の方とは異なる感性をお持ちのようだ。」
一応聞いておこうかな。
「この作品の作者の名前を教えていただいてもよろしいですか?」
「作者ですか?名はアヤト・サトウ。海神国シーカリオンの王都に住んでいる魔道具職人にございます。」
アヤト・サトウ……
まるで日本人みたいな名前をしているな。
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