第143話

『残念~、全滅だよ~。これからも頑張って強くなるんだゾ!』


第2回戦はドリルホーンとの戦い。


これまでに5組のグループが全滅により失格になっている。


騎士学園 2年生 全滅により失格。

     1年生 全滅により失格。


魔法学園 4年生 全滅により失格。

     3年生 全滅により失格。

     2年生 審判判断により失格。


魔法学園の2年生の生徒達は連続で失格になり倒れていく先輩の姿に萎縮してしまい、とても戦える精神状態では無かった。


あの魔道具が戦闘開始の合図すら出さなかったのだ。


『君たちぃ。とても戦える状態じゃないねぇ。君達は失格だよ!!また1から鍛え直したまえ!!』


いよいよ次は俺達の番。


試合会場に向かうときに1人の生徒とすれ違う。


「おっと、ごめんよ。前を見てなかった。」


ワザとらしくぶつかってきた挙げ句、俺の手に何かを手渡してきた。


「大丈夫か?」


「うん。それよりもなんか手渡されたんだけど。」


3人で手渡された物を広げる。


『今後も学園で学びたいのならばリタイアせよ。しなければお前だけでなく、周囲の仲間や身内に不幸が訪れるぞ。』


「「なっ……」」 


あまりにも理不尽な内容に驚く。


急いで振り向くが既にぶつかってきた人物はいない……


「どうしようか……」


「さっきぶつかってきたのはうちの学園の制服だったよな。」


「……もしかして……」


流石に自分たちだけでなく仲間や身内に不幸が訪れると言われてしまうと……


『次の生徒達~。まだかなぁ。は~や~く~。』


「やばいな……とりあえず行くしかないが……」


どうすればいいんだ……


どう対応すればいいのか判らないまま試合会場となる舞台に上がる。


俺はどうしたら……


『それじゃあ第2の試練いっくよ~!!』


試合がもう始まってしまう……


どうしよう……


2人の顔をチラッと見るが悩んでいる様子。


『準備はいいかな~!!君に決めた!!』


光の球が転がってきて魔物へと変化した。


『あれ?あれあれあれ?ちょっまてよ~。』


試合開始の合図が無いのに魔物がゆっくりと近寄ってくる。


思わず俺達3人は身構える。


『おっと、攻撃は無しだよ~。』


ゆっくりと近付いてくると俺の前で止まる。


『はぁはぁはぁ、動いちゃ、動いちゃ駄目だからね。大丈夫、痛くないから。』


ちょっと気持ち悪い感じがしたものの動くなと言われたのでじっと我慢する。


ドリルホーンの角が俺の頭と触れる。


するとローブの中に突如手を突っ込まれた感触がする。


「あっ!!」


ローブの中に仕舞い込んでいた先ほど手渡された紙が空中へと浮いている。


しかもその内容が闘技場全体より見えるようにスクリーンが現れて空中に投影されている。


『えっと、なになに。今後も学園で学びたいのならばリタイアせよ。しなければお前だけでなく、周囲の仲間や身内に不幸が訪れるぞ。だって。へぇ?こういうことする奴がいるんだぁ……』


先ほど手渡された紙の内容が全員に暴露される。


『ねぇ、この国のえらい人達~。君達はこんなんでいいと思うのかな~?初代勇者であるヒノが生きていたならがっかりするような内容だよねぇ。』


闘技場全体がザワザワとしている。


まさかの不正要求に憤慨している人間達もいた。


そしてその1人である人物がブチ切れた。


「どこのどいつだ!!舐めた真似をしやがったのは!!出て来い!燃やしてやる!」


観客席から叫んでいたのはフィオナ先生だった。


「先生……」


周りの先生達に取り押さえられて下がっていく。


『おぉ、生徒思いのいい先生もいたもんだねぇ。んで?偉い人たちよ?これどうすんのよ?』


闘技場で貴賓室?のような豪華な席に座っていた人物2人が立ち上がったのがスクリーンに投影された。


「あっ……」


立ち上がった人物を見てセシルが声をあげる。


『軍務大臣をしているマルク・ラヴァンだ。この交流試合を汚すようなこの行為、誠に残念だ。すぐさま犯人確保に動くように部下に命じる。』


『私は戦略魔法大臣のビリー・アブリックです。才能ある子供達の未来を遮るようなこの行為は、私としてもとても擁護できるものではございません。犯人確保にむけて私共も協力いたします。』


『だそうだよ?国の偉い人がそう言ってくれたんだ。言ったことは守ってくれるように祈ってるよ。』


大臣の2人は席に座ると2人は背後に控えていた部下に何かを命じていた。


『それじゃあ子供達3人よ!面倒な事は偉い人に任せて君達はただ純粋に実力を見せてくれたまえ!』


なんで毎回毎回何かしらに巻き込まれなきゃいけないんだ。


理不尽に絡まれたり、巻き込まれたり……


「お、おいラグナ。」


「ラグナ……」


2人がラグナの異変に気が付く。


ピリピリとした魔力をラグナから感じ取れるからだ。


「2人とも。ここは僕1人に任せて。あと2人は試合開始後にすぐに後ろに下がって魔力障壁張っておいてね。」


2人は素直にコクコクと頷く。


「やばいな……ラグナがブチ切れてる。」


『お~!!やる気はMAXだね!いいよ~!お姉さんそう言う子供は大好きだよ!』


どんどんラグナは魔力を高めていく。


『それじゃあいくよ~!!レディー、ゴー!!』


スタート位置に戻っていたドリルホーンが突っ込んでくる。


ラグナの左右にいた2人はすぐに後ろに下がりありったけの魔力障壁を発動して自分達の身を守る。


「燃やせ、燃やせ、燃やし尽くせ!エクスプロージョン!!」


貴賓室から見ていた大臣2人は思わず立ち上がり前のめりで試合会場を覗き込む。


「爆炎魔法だと!?」


「おい!すぐにあの子を調べろ!」


ラグナが詠唱を完了するとドリルホーンの目の前に炎の塊が発生。


炎に驚いたドリルホーンは一瞬立ち止まってしまう。


すると炎の塊は一気に圧縮されて小さくなる。


そして凄まじい衝撃、爆発音、激しい炎があたり一面に広がる。


きゃーー!!


観覧している生徒達に向かって迫り来る炎は魔法障壁によって防がれた。


しかし前方で観覧していた生徒達は迫り来る炎の恐怖に足がすくみ座り込んでしまった。


ラグナが発動させたエクスプロージョンはドリルホーンの目の前で爆発。


爆発による凄まじい衝撃波と爆発音はラグナの後ろで魔力障壁を張っていた2人に襲いかかる。


「まじかよ!」


「ぐっ……」


2人は必死に魔力障壁を張り爆発の衝撃から身を守る。


そして数秒間耐えた後、衝撃波が収まった。


しかし目の前は煙に覆われて何も見えない。


『すっごーい!!トップタイムぶっちぎりで更新だよ! 試合時間28秒!! 瞬殺、瞬殺だよ!!」


徐々に煙が晴れていく。


「あ~、すっきりした!!2人とも大丈夫?」


すっきりした顔をしたラグナは笑顔で後ろに振り向く。


「2人とも大丈夫だった?」


「大丈夫?じゃないわ!!本気で死ぬかと思ったぞ!!」


「本当よ!!少しでも障壁を緩めたら死ぬって思って必死だったんだから!!」


あれ? 


そんなに怖かったかな?


「何不思議そうな顔をしてるんだ!爆炎魔法が使えるなんて聞いてないぞ!!」


「そうよ!!いきなりあれは酷すぎるわよ!!」


イライラはすっきりしたけど、2人からはそのあとも責められ続けた。

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