第114話

俺達もすぐに解散し部屋へと戻る。


「少し休まれますか?」


「大丈夫ですよ。」


「それではこれより学園より支給された備品を持ってまいります。」


ミーシャさんは一度部屋を退出するとカートを押して戻ってきた。


まずはと渡されたのが教科書、参考書、初級の魔法書。


これはすぐに自分が使いやすい位置へと収納していく。


次にと出てきたのがローブと杖。


「こちらは全生徒同じ性能の物となっております。」


まぁ性能まで違いをつけるのはどうかと思うしね。


ローブを羽織ってみる。


「うわぁっ!」


ダボダボだったローブが急にピッタリのサイズになった。


「こちらのローブは自動サイズ調整機能が付属されております。」


サイズ調整してくれるとか……


前世を超えた技術の品がとうとう出てきたな。


「ローブのこの虹にドラゴンのマークは?」


「こちらは特級組を表すマークとなっております。」


派手な虹色だな……


杖を持ってみる。


こっちはサイズが変わらなかった。


「1年生のうちは指定の杖を使用するように定められています。」


「2年生からは違うのですか?」


「2年生からは自由に好きな杖を使える様になります。なので自分の実力を杖によって上乗せすることも可能です。」


それは……


「お金を持ってる人達が有利になりますね……」


「いい装備を手に入れることも力のうちですから……」


そう言われると何とも言えないけど。


「学園からの支給は以上となります。何か御座いますか?」


「いや、大丈夫です。」


「それでは買い物へと出発しましょう。」


すぐさま外出の準備をして出発。


ミーシャさんと2人で学園内を歩く。


あんまりジーッと見てはいけないんだけど……


ミーシャさんって美人だよなぁ。


俺の視線に気がついたのかミーシャさんがこっちをむいた。


「どうかしましたか?」


「い、いや何でもないです。」


美人だなぁって見てたなんて言える訳が無い。


「それにしてもあまり学生が居ませんね。」


何人かはふらふらしてるけど同学年っぽい。


「それは当然でしょう。ラグナ様達1年生以外は皆、授業中ですから。」


そっか。


上級生は俺達の入学式が終わったら授業に戻ったのか。


買い物に向かう途中に食べ歩きしている同学年らしき生徒を発見した。


「……あれは。」


ミーシャさんが俺の視線の先に気がつく。


「あぁ、あれですか。あれは最近販売されるようになったグーナパンと呼ばれている料理です。パンに切れ込みを入れて好きな具材を入れて食べられるので、気分によって色々違う味が食べられると好評なのですよ。しかも手軽に食べれますからね。」


マジか……


他人のアイディアをパクッただけの料理なのに……


「私達メイドの間でも時間が無いときでも簡単に作れてすぐに食べれるとのことで好評ですよ。」


まさか目の前でこんな光景が見れるとは思ってもいなかった。


「ラグナ様もあとで一つ頂きますか?」


「ミーシャさん……実はですね……あれ開発したの僕なんです。」


「えっ……?」


クールなミーシャさんの表情が驚きに変わった。


「ラグナ様が開発……?ラグナ……グナ……グーナ……グーナパン!?」


ミーシャさんの表情がコロコロ変わって面白いな。


すると最終的に厳しい目つきに変わった。


あれ?


「ラグナ様。この様な秘密を簡単に他人に教えるのはよろしくありません。私はメイドとして決して主人の話を広めるつもりなどありませんが。この件はあとでお話し合いしましょう。」


「……はい。」


怒られた……


「とりあえずは買い物ですね。」


「……はい。」


こんなところで広まってるとは思ってもいなかったからな。


うっかり話しちゃった。


ミーシャさんと2人で買い物をしていく。


てっきりメインの売店に向かうものだと思っていたら小さいお店に案内された。


「てっきり学園近くの大きい売店に行くと思っていました。」


なんでわざわざこっちなんだろう。


「こちらの売店は専門店なので特化した品揃えはあちらよりも豊富なのですよ。それにきっとあっちの売店は新入生でごった返していると思います。」


そっか。俺達はミーシャさん達が案内してくれてるからこうやって買い物出来るけど一般の生徒はわからないもんな。


何を買えばいいのか理解しないまま、とりあえず1番大きな売店にいけば全部揃うでしょ。って考えで行動しちゃうのか。


とりあえず最初は着替えなどを揃えていく。


制服の替えと普段着、寝間着、下着類をミーシャさんに必要な枚数を聞きながら買って行く。


正直服装については全くわからないのでミーシャさんにコーディネートをお願いした。


下着はトランクスタイプからボクサータイプ、ブリーフタイプまで存在していた。


きちんとゴムになっていて驚いた。


「この伸びるやつの素材は何ですか?」


お店の人なら知ってるかな。


まさかゴムの木が存在していたりとか。


「これは植物の魔物から採れる素材なんですよ。バンジートレントって名前の魔物だったかな?枝を振り回して攻撃してくるみたいですが、その時に枝が伸びたり縮んだりらしいですよ。確か初代勇者様がこの素材に目を付けてエチゴヤの方に頼んで伸縮性のある下着などが作られたと聞いたような覚えがあります。」


初代勇者はこれが直ぐにゴムの代用として使えるって目をつけたのか。


ミーシャさんは私にお任せ下さいとパンツの柄まで選ぼうとしていたので、流石にそれは自分で選んだ。


後は他のお店で筆記用具を買ったり紅茶の茶葉を買ったり。


細々した物まで買い揃えていった。


途中で剣と盾がクロスした看板のお店を発見する。


「ミーシャさん、あのお店はなんですか?」 


「あれは冒険者ギルドの出張所ですよ。上級生ともなると休日に冒険者稼業を行う人もいますので。」


まじか。


「でもいちいち学園から外に出るのは大変ですよね。一般街から職人街まで移動しなきゃいけないですし。」


「いちいち移動しなくても学園には専用の門が設置されてますよ?そこを通ればすぐに王都の外に出れますし。」


知らなかった。


でも考えてみたらそうか。


外への演習の機会だってあるだろうに。


いちいちぐるっとまわる時間が勿体ないよな。


冒険者ギルドの前をちらっと覗いていると建物に隠れて見えなかったが商業ギルドのマークの建物が裏手に設置されていた。


「商業ギルドもあるんですか。」


「はい。冒険者ギルドに卸された素材の買い取りや生徒からの注文を受け付けたりしています。生徒ですと他の街まで武器や防具を買いに行く時間なんてありませんからね。どんな物が欲しいのか商業ギルドに頼んで探してきてもらうんですよ。」


へぇ。確かに他の街まで探しに行く時間なんてなさそうだしね。


そうだ。


「ちょっと寄ってもいいですか?」


ミーシャさんが不思議そうな顔をするも、


「わかりました。行きましょう。」


と答えてくれたので商業ギルドへと2人で向かうのだった。

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