第87話
初めてみる王都。
ナルタで初めてみた防壁の堅牢さにも驚いたけど王都はもっと凄い。
巨大な防壁の上には何かの兵器なのか均等に設置されている兵器がある。
そして王都へ入る手続きを終えて門を潜ると街の先にも大きな防壁がある。
「サイさん……王都って防壁の中に防壁があるんですか……?」
「そっか。ラグナ君は初めてだもんね。王都は全部で4つの防壁が設置されているんだよ。」
王都の作りとしてはこんな感じだった。
今チェックを受けた1番目の防壁から2番目の防壁までの街は職人街。
武器や防具や服など生産を主に行う人々が生活する街が第4区画。
次の2番目の防壁から3番目の防壁までは一般街。
ここにはヒノ魔法学園やヒノ騎士学園、数多の商店や一般の人達、つまり平民と呼ばれる人達が多く住んでいる。
つまり学園に入学出来たら俺もここの区画にある学生寮で暮らすことになっている。
そして3番目の防壁から4番目の防壁までに作られているのが貴族街。
この区画からは一般人の立ち入りが厳しく制限されている。
貴族と貴族に仕える人々が住む区画。
そして最後の防壁に守られた先にあるのが王城。
異世界だから洋風の城かと思いきや遠くに見える城はなんと日本風の城。
本当に異世界から来た人間としては違和感しか感じない。
イメージとしては中世の城壁都市の防壁によって守られている日本の城。
何故初代勇者はこんなバラバラな世界観の国を作ったのか俺には理解出来ない。
「それじゃあとりあえず一般街の商業ギルドまで行くぞ。」
馬車から職人街の街並みを見学する。
煙突が備えられていてモクモクと煙がでている。
あちこちで金属の打撃音がしていた。
この雰囲気はなんか好きだな。
そしていよいよ一般街へ。
サイさん達は商業ギルドの会員証の提示、俺は会員証と魔法学園の入学試験の受験申込書の提示をした。
「ようこそ王都へ。」
衛兵達にそう言われて街に入る。
「なんで2番目の城壁に入るときにようこそって言われたんですか……?」
皆が言いにくそうにしている中、アムルさんが教えてくれた。
「職人街以外に住んでる奴らにとって職人街は王都と見なしていないのさ。所詮下の人間がやることだと見下しているんだよ。本当にくだらない。自分達の生活は誰に支えられているのか全く理解していない奴らばかりだよ、この国は。」
この国は貴族だけじゃなく一部の国民ですら駄目だってことなんだろうか。
本当にこの国を作った初代勇者は今の現状を見たらなんて言うんだろうか?
暗い雰囲気になったまま馬車は目的地である王都の商業ギルドに到着した。
「ラグナ君はこれからどうするのかね?」
「とりあえずどこかに宿を借りようと思ってます。」
「ふむ、ならば商業ギルドの寮ならば空いているが来るかい?」
商業ギルドの寮ならば宿を借りるよりもお金は掛からなそうだし。
お願いしようとした時にサイさんが口を開く。
「ラグナ君は受験日までうちに泊まりなよ。そこで妹と共に受験日まで試験の対策をしたらどうだい?」
サイさんからも嬉しい提案がある。
「神殿からも言伝があります。宿を使うつもりならば王都の神殿へどうぞ。とのことです。」
神殿からも提案……
「えっと……皆さんからの提案は本当に嬉しいのですが……僕は普通の子供ですよ?」
提案してくれるのは本当に助かるからありがたいんだけど……
「ここにいる人間は誰1人として普通の子供と認識してないから安心しろ。お前は決して普通では無い。」
みんなも頷いている。
さて、どうしよう。
神殿はちょっと扱いが怖いしな。
商業ギルドは邪魔になりそうだし……
そうだな……
「サイさん、ご迷惑でなければ入学試験終了までお世話になってもいいでしょうか?」
サイさんはにっこりと笑うと
「歓迎するよ。これでまた恩を返せるよ。」
「恩なんて……僕こそいろいろと助けてもらい助かっています。よろしくお願いします。」
そして俺はここまで一緒に来たメンバーに別れを告げてサイさんと共にまずはエチゴヤ商会の本店へ。
ギルド長はこの後はこのまま仕事。
商業ギルドから派遣された護衛はこのまま王都に滞在。
神殿騎士の方々は神殿に立ち寄った後にまたナルタへと帰るらしい。
エチゴヤ商会の護衛の人は俺達と一緒に本店へ。
しばらく歩くとデカデカと「エチゴヤ商会本店」と書かれている看板が目印になっている建物が大通りの左右に2ヶ所ある。
一般街から貴族街を繋ぐ大通りのド真ん中。
大きな交差点になっている角地の左右にその店舗は建てられていた。
「サイさん……これは……」
「一般街から歩いて右側にある本店は主に食料や雑貨など生活に関わる商品を取り扱っていて、左側は武器や防具、魔道具など戦いに関する商品の取り扱いをしているんだ。」
でもこれは凄い……
エチゴヤ商会に合わせて建てられたかの様な店の並び。
右側にはエチゴヤ商会と同じ様に生活に関する商品を取り扱うお店が立ち並び、左側は戦いに関する商品を取り扱うお店が立ち並んでいる。
ナルタに比べると商店の数が段違い。
「それじゃあ、まずは父のもとへ行こうか。」
右側の店舗の裏口から入り階段を登り4階へ。
1~3階までは売場、4階は事務所になっていた。
事務所の奥にはブリットさんが座っており書類にどんどんサインしていた。
「ただいま戻りました。」
「お久しぶりです。」
ブリットさんに挨拶する。
「ラグナ君、久しぶりだね。少し背は伸びた感じだね。サイもお疲れ様。」
「相変わらずお忙しいようですね。一応商業ギルドと神殿からもラグナ君を預かると話がありましたが、ラグナ君は私共を選んでくれました。」
「でかした!良くやった!ラグナ君もうちを選んでくれてありがとう。」
ブリットさんは立ち上がるとサイさんの肩を叩いた後に俺と握手する。
俺がどこに泊まるかだけでも駆け引きになっていたんだろうか……
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