第78話
商業ギルドで手続き完了後は重苦しい雰囲気のまま馬車に乗りエチゴヤ商会へ。
「ただいま戻りました。」
部屋に入るとサイさんがブリットさんに挨拶する。
「手続きにしては時間が掛かったな?」
サイさんが少し言いにくそうにしながらブリットさんに耳打ちする。
「なんと!!」
話を聞いたブリットさんは驚き目が見開く。
「それは本当なのだろうな?」
サイさんはコクリと返事をする。
「まさかそんなことが起こるなど……」
ブリットさんのリアクションに村長達は何事かと心配になる。
「何かありましたかな?」
「うーむ……何と言ってよいやら……ラグナ君、話をしても構わないかな?」
「……はい。」
ブリットさんは一呼吸置いて話始める。
「どうやらラグナ君は商業の女神様から神託を授かったようなのだ。」
「「「えっ!!」」」
父さん達は驚いて声を上げる。
「神託の内容とは……」
「神託の内容については話すことが出来ないと女神様から授かった書類に記されていたらしい。神殿はラグナ君を陰ながら支援することが決まったらしい。」
皆が俺を見てくる。
「なんか気がついたらこうなっちゃいました……」
俺だってこうなるとは思ってなかったよ!
「内容について言わなくていい。その神託は家を出なきゃいけない内容なのか?」
父さんが真顔で聞いてきた。
「いや、大丈夫だよ。今すぐどうこうしなきゃいけないって訳じゃないからさ。」
「ならいいが……」
この部屋もだんだんと重苦しい雰囲気になって行く。
「まぁとりあえず、そろそろ昼の時間だ。食事にしよう。」
とりあえず食事と言う流れになった。
ステーキに野菜のスープ、それにパン。
このレベルの食事が普通に食べれることが羨ましい。
「それでは大変お世話になりましたのじゃ。」
食事も終わりそろそろ帰る流れに。
「こちらこそ息子の命を救って頂き本当に感謝します。」
ブリットさんと村長さんが握手をする。
「本当に皆さんのお陰で無事に帰ることが出来ました。本当にありがとうございます。」
サイさんとミレーヌさんが頭を下げる。
「また村に来たりする機会はあるんだろう?」
父さんがサイさんにそう質問する。
「はい、当分まだお世話になります。」
「ならよかった。では次はうちの村で酒でも飲み交わそう。」
「その時はよろしくお願いします。」
サイさんと父さんが握手をして別れる。
「ラグナ君、君は王都の学園に通うんだよね?」
「試験に受かれば、ですけどね。」
「きっとラグナ君なら大丈夫ですわ。来年学園で会いましょう。」
ミレーヌさんが手を伸ばしてきたので握手をする。
チラッとブリットさんを見ると目元がピクピクしていた。
そしてエチゴヤ商会の裏口から出ると目の前には馬車が。
「帰りはこちらにお乗りください。村までお送りします。」
「何から何まで本当にありがとう。」
皆でブリットさん達に頭を下げる。
「いえいえ、帰りはお気をつけ下さい。」
馬車に賠償金が入った袋を箱に仕舞いそして積み込む。その後皆で馬車に乗り出発する。
行きは犯罪者の様に連れられて帰りは馬車に乗り優雅に帰る。
この扱いの違いにびっくりする。
馬車を操作する御者までも用意してもらったので帰りは皆で馬車の中で座る。
そして村長さんが小さい声で俺に話し掛ける。
「ラグナや、御者にバレないように賠償金の箱の中身だけ収納出来るか?」
「たぶん出来ると思うけど……重さが変わって気が付かれないように石でも出そうか?」
「そんなことも出来るのか?それじゃあ頼む。」
皆が御者から見えないように話をしているフリをしながら後ろの視界を塞ぐ。
その隙に箱に近づき金貨を収納し、代わりの石を取り出す。
そしてすぐさま再び椅子に座る。
門番に書類を提出し、そのまますんなりと出ることが出来た。
そして馬車に揺られて村へと続く街道を進む。
「……来てるな」
「あぁ、街からずっと付いてきてるな。」
御者の人も俺達だけに聞こえる音量で注意を促してきた。
「何やら付いてきてるのが居ます。お気をつけてください。」
エチゴヤ商会が用意してくれた御者はただの御者では無かったようだ。
「このペースだと夕方暗くなってきてからだな。」
「打って出るか?」
「いや、このままにしよう。下手に止まって警戒されるよりかはいいだろう。」
村長さんや父さん達が御者と話し合いをしながらも馬車は進む。
どうやら村に帰る前に、ひと波乱待ち受けているのが確定したみたいだ。
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