第66話

「そう言えば商業の女神はマリオン様なんですか?海神国シーカリオンの主神、海の女神マリオン様じゃないんですか?」


素直な疑問。


確か海の女神って聞いたことが有るんだけど。


「海神国シーカリオンは魔道具の製作に優れていることは知っていますか?」


確か父さん達がそんなことを言っていた気がする。


「はい、聞いたことがあります。」


「魔道具の製作には各工房が競争し切磋琢磨して取り組んでいます。しかし無断で他人の技術を模倣したり盗んだりそう言うことが一時期多発してました。開発者が報われない。このままではと不憫に思った海の女神マリオン様が以前初代勇者様より特許と言う概念があることを聞いていたのでその制度を取り入れることにしました。」


確かにせっかく作った物が無断で他社に模倣されたり盗まれたりするのは許せないよな。


「特許と言うのは新規に作られた新しい技術・新しい概念・新しい製品・新しい料理のレシピなどに対して5年間、権利が認められます。他人がその権利を使用して商売をしたり開発をした場合は売り上げの2割を開発者に支払う義務があります。これにより開発者は無断で模倣され利益を失うことは無くなりました。ちなみにバレないだろうと無断で使用していると女神様からの御告げで直ぐにバレます。」


海の女神様凄いな。


そう聞くとめちゃくちゃ忙しそう。


「この様に商売に関することを積極的に取り組んでいた海の女神マリオン様は次第に商業の女神マリオン様と呼ばれるようになりました。」


「それじゃあレシピの申請と言うのは商業ギルドの職員がチェックしてその後に認められるのですか?」


「特許に関しては全て女神マリオン様のご意志の下行われています。申請用紙に記入し商業ギルドに提出。ギルドには女神マリオン様に申請用紙を奉納出来る場所があるらしく女神マリオン様に送ることが出来ます。申請の結果は大体1時間ほどで帰ってきます。そして認められた権利については全て1ヶ月間商業ギルドにて掲示されます。」


「1ヶ月も掲示されていると商業ギルドが埋まってしまうんじゃないですか?」


「それが特許自体が本当に中々狭き門なのですよ。新しく作った物と思い申請したら以前すでに似たような物が作られており登録済みだったりするんです。なので開発者達は何かを閃き製作する前に商業ギルドの書物庫にて似たような製品の申請が行われていないか確認し、無い場合のみ開発を行っています。」


まぁ確かに確認もしないでお金を掛けて開発した結果すでに開発済みだった場合は無駄になってしまうからね。


「でも女神マリオン様って凄いですね。全国の申請を確認しているんですから。絶対に忙しいですよ。」


これには支配人さんも頷く。


「確かに我々人間には出来ない仕事量でしょうから。女神様だからこそ出来ることなのでしょう。」


マリオン様は大変だなぁ。それとも女神様だから簡単にこなしているんだろうか?


「それでは引き続き御料理の方をお楽しみ下さい。」


そうだったと思い出してラグナは食事を再開。


肉料理に魚料理、サラダを味わったあとはデザートに果物が出て来た。


やっぱり甘味ってのは基本的にフルーツになるんだろうな。


全てをペロリと平らげたラグナはイスに座ったまま休んでいた。


大人達はお酒を飲みながら豆のようなものをツマミに語り合っている。


休んでいると再び食堂の扉が開き支配人さんが現れた。


「お食事の方はお口に合いましたでしょうか?」


「はい、とても美味しかったです!」


「うむ、本当に美味かった。」


「喜んで頂いたようで私共としてもとても嬉しく思います。そしてラグナ様、おめでとうございます。」


「ありがとうございます?」


何に対してのおめでとうなんだろう?


「先ほどのレシピが女神様によって認められました。よって開発者としてラグナ様のお名前が登録されております。」


えっ?パンを切って具材を入れただけだよ?


確かにサンドイッチとか焼きそばパンみたいな料理は見たこと無いけど辺境だからって訳じゃないの?


「ラグナ、凄いじゃないか!おめでとう!」


父さん達も喜んでくれている。


「あ、ありがとう。」


本当にあんなので良かったのだろうか?


前の世界の料理のレシピだよ?


「つきましてはラグナ様には明日以降でお時間がある時に商業ギルドにて登録を行って欲しいのですが……」


父さん達の方を振り向くと頷いている。


「わかりました。明日はブリットさんに呼ばれているのでそれが終わり次第登録に行くことにします。」


「それでは今回のレシピに関しては明日旦那様からお話があると思いますのでよろしくお願いします。」


思っていたよりも大事になったな。


「このあとは如何なさいましょうか?」


父さん達はまだ飲みたいだろうな。


「僕はまたお部屋でゆっくり温泉に入っていようと思います。」


「それでは大人の方々はこちらのお部屋へどうぞ。バーと呼ばれる酒場になっております。」


「ラグナ、本当に1人で大丈夫か?」


「大丈夫だよ。だから父さん達もゆっくり楽しんで!」


父さん達と別れて部屋に向かうラグナであった。

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