第28話

スパイス召喚と収納スキルが使えるようになってから早2週間。


父さんと母さんといろいろ話し合いをしながら家の中でスキルの練習をしていた。


スパイス召喚スキルは大人の両手の手の平の上いっぱいくらいで意識が朦朧としてくる。


収納スキルはどんなに休んだ後だとしても、一度でも使用すると意識を失い倒れてしまう。


まぁ倒れても最初とは違って半日くらいで目が覚めるけど。


収納スキルは身体の成長を待つしか無いのかなとは思ってる。


それに使用する度に倒れていたので両親から本気で怒られてしまった。


もしかしたらRPGのゲームみたいにレベルのような概念があるのかもしれないとは思ってる。


勇者に関するお話でも最初は魔物の討伐すらうまく行かなかったみたいだけど、最終的には魔王討伐する事が出来るくらい強く成長したみたいだし。


目に見えないだけでレベルみたいなのはあるんだろう。


今更だけど両親の話。


話し合いの時に貴族だった時の話も聞くことが出来た。


現在、父さんは28歳、母さんは24歳。


2人とも領地を持つ貴族の子供だったらしい。 


しかも領地がお隣さん。


母さんが15歳の時に父親と兄が王都から領地に戻る際、何者かに暗殺されてしまった。


最悪なことに、この国は男しか領地を持つことが出来ない。


父と兄を殺されてしまい残ったのは母さんとお祖母さんの2人。


そこに母さんの父親のお兄さんが現れた。


領地を引き継ぐ正式な書類を持って。


しかもこいつ。


母さんを嫁に貰おうとしたらしい。


45歳のおっさんが15歳の女の子を。


完全に前世だとお巡りさんこいつです。案件だよ。


その危機を知った父さん(19歳)が自分の父親に話をしたが他家の話については手を出せない。と取り合っては貰えなかった。


父さんには弟が2人居たらしく跡取りに関しては問題ないだろうと思い、いつか母さんを嫁にと部屋に隠して貯めていたお金を持って家を飛び出した。


そして母さんが居る屋敷に行くと引っ越し作業をしておりごたごたしていたので作業員に紛れ込み侵入。


侵入した時にメイド長にバレてしまいすべてを打ち明けた所、屋敷の人達が協力して手引きをしてくれることになった。


何でも元々屋敷で働いていた人間は引っ越し完了後に全て解雇。


手切れ金すら渡さないケチっぷり。


クビになるし最後に犯人が誰かバレない嫌がらせでもしてやろうとみんなで話をしていた所に現れた父さん。


みんなの協力もありすんなりと母さんの部屋へ。


「ミーナ、迎えにきた!俺と共に行こう!」


そう部屋に入り父さんは告白した所。


すでに母さんの姿は無かった。


部屋には置き手紙。


「誰がお前みたいなおっさんと結婚するもんか!お前と結婚するくらいならばオークの方がまだいいわ!」


あの優しい母さんも我慢の限界で荒れたらしい。


それで焦ったのは父さん。


家出して迎えに来たらもぬけの殻。


ミーナはどこに!?


屋敷の人達の協力により屋敷より脱出。


居そうな所を探し回っても見つけることが出来なかった。


父さんは絶望に包まれながらもガムシャラに走りつづけた。


そして体力の限界を迎えて倒れた。


父さんが倒れた目の前には全く手入れがされていない神像が祭られていた。


「神様、頼む。ミーナの居場所を教えてくれ。あいつの身に何かあったら俺はもう生きていけない!」


そう叫んだらしい。


『千里眼スキルを獲得しました。』


そう頭の中で声が流れた。


何故スキルがこんなタイミングで?


まさか本当に神様が?


「神様、本当にありがとう!」


父さんは心から神様に感謝を伝えた。


そして。


「千里眼スキル!」


初めて使用した時は吐き気がすごかったらしい。


頭の中に上空から見下ろした映像が流れた。


その見下ろした映像の一点が光り輝いていた。


映像の場所は良く知っている場所。


いつか嫁に迎えようと思っていたので、こっそり伝えていたルート。


父さんの領地に何かあった時に領地から脱出する為の脱出路で母さんは休んでいたらしい。


父さんは体力の限界を超えて走りつづけて母さんが居ると思われる場所へ。


ふらふらになりながらも居ると思っていた場所に到着したけどそこに母さんの姿は無かった。


限界をとうに越えていた父さんはそのまま倒れてしまった。



パチパチ。パチ。


火が燃えている音がする。


柔らかい枕の上に居るようだけど俺は何をして……


倒れてしまったことを思い出した父さんは目を見開いた。


すると目の前に女の子の顔が。


「こんな所にどうしたの?次期領主様。」


あぁ、無事で良かった。


「俺はある女の子と一緒になりたくて全て捨ててきた。決まっていた未来も立場も全部捨てて。でも女の子の屋敷に迎えに行ったときにはすでに愛しい人は居なかったんだ。」


「そうなんだ。残念ね。その子とはもう会えたの?」


「あぁ、会えたよ。その子は今目の前に居るんだからさ」



なんだよそれ!


甘い、甘すぎる。蜂蜜の砂糖掛けのようにこってりした甘さだよ。


若干軽い気持ちで聞いたことに後悔。


両親のイチャラブな話なんてただただ恥ずかしいだけだから。

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