第12話

身体はとってもさっぱりした。


「大丈夫だったか?」


「えぇ。大丈夫でしたよ。とっても大人しくしてくれたので水浴びも簡単でした。」


「ならよかったよ。でもこの子は全く泣かないな?」


「泣きはしないけど水浴びの前に声は出してくれましたよ?」


「まじか。ちょっとそれは見たかったな。」


そう言うと黙り込む2人。


何だろう、この空気。


なんか急に暗い雰囲気に………


ちょっと声を出してみようかな?


「だぁ……だぁぶぅー?」


ダメだやっぱり発音が全く上手く出来ない。


「うん?おぉ。こんな声なのか。どうした?声なんか出して。」


「お腹すいたのかしら?そう言えばこの子はまだご飯食べてないわね…」


「ご飯?そうか、ご飯か…パンをふやかせばいいのか?」


「こんな歯も生えてない赤ちゃんがそんなの食べれるわけないでしょ。」


「なら何を食べさせたら…」


「そんなの決まってるじゃない…」


なんか布が擦れてる音が…目がよく見えない。全体的にぼやぁっとしかわからないけど…


これはあれですよね?つまりは…


「さぁどうぞ…?」


「でも大丈夫なのか…?」


「だって…本当にあげたかった子は…」


「すまん。思い出させた。」


何だ…?何がこの2人に起きたんだ?


それに今口に当たってるのは…


つまりそれってことですよね?


これはあれか…吸えって…吸えってことなのか?


心は大人なのにこれを吸えと?


羞恥心を捨て去れと?


だがしかし…身体は正直だ…


お腹がすいて仕方がない…


そうだ。これは仕方無いことなんだ。


俺は悪くない。生きていく為には仕方無いんだ…


と言うことで覚悟は決めました。いただきます。 


「おっ。元気に吸い始めたぞ。」


「流石に恥ずかしいわ。あっちを向いててよ。」


「おぉ。すまない。ちょっと外で薪割りでもしてるわ。」


お腹空いていたからか…


母乳って思っていたよりも甘くて飲みやすいな。


おっと…これ以上は飲み過ぎだな。


御馳走様でした。


「あら。もうお腹いっぱいなのかな?」


お腹がはちきれそうです。


「えっと…確か母乳を飲ませたら背中をトントンしてゲプッとさせるんだったかしら?」


優しく抱っこして背中をトントンしてくれた。


赤ちゃんって母乳飲んだらゲップしなきゃいけないんだっけ?


うーん…もうちょっと上をトントンしてくれたら出そうだけど…


「あれ?全然出ないわね…もう少し強くかしら?」


うん?あれ?ちょっと強くない?


それにお腹圧迫されて…


「叩く位置が違うのかしら?」


背中の叩く位置はそこだけど!


ちょっとお腹圧迫し過ぎで今ゲップなんてしたら!?


「ゲプッ。げぇぇぇっ」


「キャァーッ。」


「どうした!?ってあぁ。吐いちゃったのか…」


「ゲプッとさせなきゃって背中トントンしても出なくて、ちょっと焦って力入れ過ぎちゃったら……全部出て来ちゃった……」


見つめ合う2人。


「ふっ。ふふふ。」


ふぅ…飲んだの全部出しちゃったよ。せっかく綺麗にしてくれたのにごめんね?


思うとおりにいかないな、この身体。


「ねぇ、あなた……」


「あぁ、わかってる。村長の所に行ってくる。」


旦那さんは今から村長の所に行くのか…


俺はどうなるのかなぁ。


流石に捨て子スタートは予想してなかったからなぁ。


「またばっちっちぃになっちゃったからきれいきれいにいきましょうね~。」


優しい人で本当に良かった。


とりあえずお礼を言わなきゃな。


「あぁ、だぁだぁうぅばぁ、いだぶ?」


「本当に可愛いなぁ…それじゃあまた行きますよ~」


このあとまためっちゃ綺麗にしてもらえました。

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