第11話

自分達の子供の死と突然現れた赤子。


夫婦はゆっくりと寝ていることなど出来なかった。


日が昇り朝になる。


「なぁ……部屋が明るくなったからわかったことだけど……この子って産まれたばかりじゃないか……?」


「確かに……大変!!産まれたばかりなのに何もお世話してないわ!」


「ご飯!ご飯ってどうしたら!パンって食べれるのか!?」


朝起きてから夫婦は重大な事実に気がついた。


1、赤子のお世話をしてないこと。


2、どう見ても産まれたばかりなのに泣き声一つあげてないこと。


3、そもそも男の子か女の子かすら確認してないこと。


「とりあえず…息はあるわね…次は男の子か女の子を確認しましょう。」


「そうだな。とりあえず……」


「あなたは壁を向いていて下さい。女の子の場合は見ては困ります。」


「しかし赤子だぞ!?」


「あなた!!」


「わかりました……」


どうやら異世界でも女性が強いみたいです。


どうも。無事に異世界転生しました、翔弥です。


拝啓、創造神様。


異世界転生って聞いていたので誰かから産まれてくると思っていたら…


まさかの捨て子スタートって難易度高くないですか?


一応、考えがあってこの家族の家の前に置いてくれたんだと思いますが…


正直な所、これからどうなるのか不安でいっぱいです。


大丈夫ですよね?捨てられませんよね?


あと…言葉が理解できるのは助かりました。これはスキルなのでしょうか?


その点には感謝します。


あと、赤子なので目がよく見えないし耳もぼやっとしか聞こえないのですが…


どうやら俺を裸にして性別を確認するみたいですね…


ただでさえ我慢していたのに急に身体が冷えたので限界です。


心の中で謝っておきますね。ごめんなさい。


「あら。立派な男の子ですね!」


旦那さんの方を見て笑う奥さん。


そして……


「キャーッ!あなた!!布!布!」


心の年齢18歳。


見ず知らずの奥さんに放尿してしまいました…


本当にごめんなさい。我慢の限界だったんです…


「元気なやつだなぁ!ちょっと自分にも掛かってるじゃないか。大丈夫か?ミーナ。」


「ちょっとびっくりしたけど大丈夫よ。2人で軽く水浴びしてくるから掃除よろしくね。」


「水は昨日汲んだやつでいいか。床を拭くだけでいいか?」


「それで構わないわ。それじゃあ行ってくるわね。」


本当にごめんなさい。悪気があったわけじゃないんです。


「だぁ、あいだぶ。あぁ、ばぁだぁあぶだぶ。」


「あら。初めて声を聞いたわ。やっぱり赤子の声は可愛いわね……」


やっぱり赤ちゃんの状態だと話は出来ませんよね~…


まぁ急に赤ちゃんが流暢に喋ったら気持ち悪いよなぁ。


とりあえず、これから水浴びかぁ…


これは、目がよく見えないのを喜ぶべきか喜ばないべきか……


あと季節ってのがこの世界にはあるのか分からないけど、ちょっと肌寒い気がする。風邪ひかないといいけど。


外にある井戸の冷たい水で身体を拭かれるんだろうなぁって思ってましたが…


どうやら家の中に水浴びが出来る所があるみたいです。


きっと水は冷たいんだろうなぁ…


コクン。シャァァー。


何かを押した音の後に水が流れる音がし始めた。


「それじゃあきれいきれいしますよ~。」


抱きしめられたまま水の音の中に。


身体に当たる水。


冷たっ!…くない?


あれ?温かい。


抱きしめられたままシャワー?みたいなのでお湯?を短時間浴びた後はすぐに身体を拭いてくれた。


てっきり冷たい水だと思っていたんだけど…

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