第30話 大人が増えたら…

 大学から東京で一人暮らしをしていた長女が、就職してから一年半でやっぱり地元がいいと、昨秋、Uターン転職をして帰って来た。それを追いかけるように、やっぱり地元がいいと、先月、仙台から次女も帰って来た。

 6年前、次女の大学進学で始まった夫と二人の生活は笑いもなく静かで退屈だったが、お互い、縛らずに自分の時間を使うのが当たり前になり楽だった。そこへ急に若い娘たちがたて続けに実家に戻って来たので、家の空気も流れも大きく変わった。

 賑やかになって嬉しい変化ではあるが、慣れるまでに少し時間はかかった。6年前の4人暮らしの時は、大人2人子ども2人だったが、今度は大人が4人。

 まず大人4人分の食事の適量が難しい。今までの倍にすればいいかというと、そうでもない。仕事で遅くなるとか今日はいらないとか、つまむ程度でいいとか、対応も必要だからだ。そもそも食事の支度に手を抜くことが当たり前になっていたから、ものすごく手際も悪くなっている。洗い物も増えた。

 洗濯物も大人服4人分はかなりの量で、天気が悪いからと一日サボると、翌日、干す場所が足りなくなってしまう。

 そんなこんなで、なんだか忙しくなった。ご飯できてる、洗濯されてる、お酒飲み放題、実家最高〜!と喜んでいる娘たち。

 なんか違くない?動ける大人が増えた分、母は楽になるはずじゃないのか?と納得いかないまま増えた家事をこなす毎日。

 ま、賑やかな笑い声が響く家は、明るくていいか。

 

 

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