第105話
俺達は学園に戻る。
もう疲れた。
敏捷値2は低すぎる。
次はどの能力値を上げるか考えてしまう。
「休憩しつつランチを食堂で摂るのですわ」
俺達は食堂に向かう。
「おお!ビュッフェか。ずいぶん豪華だな」
「この学園に通う者は未来を救うため、魔物と闘う者ですわ。たくさん食べて貰いませんと」
「いつもの席に行こう」
エリス・ファルナ・ヒメ・シスターちゃんと同じテーブルについた。
「ファルナ、王になったのか?」
「そうですわね。おかげ様で王になれましたわ」
「おめでとう」
「ふふ、ありがとうございます」
だからこの席だけが不自然に空いているのか。
ファルナの座る席は気を使ってみんなが開けているようだ。
それにファルナは学園に通いつつ、暇があると書類を書いている。
今も書類を取り出して政務を進めている。
ファルナが働けば国が良くなるから、ファルナの邪魔をしたくないってのもあるんだろう。
「ファルナ、文官が足りないのか?」
「そうですわね。文官も、兵士も、お金も、すべて足りませんわね」
「手伝えればよかったんだけど、俺は自分のレベル上げだけで時間がかかりそうだ」
「ハヤト、何度でも言いますわ。ハヤトが救った兵士が、今の国を支えているのですわ。ハヤトのおかげで今がありますのよ」
「ファルナ、食事を持ってきたよ」
「エリス、助かりますわ」
「そう言えばハヤト、試したいことがあるんだ。紋章カードを装備できるかまた試したいんだ」
「そう、だな、頼む」
俺はストレージの紋章・攻の紋章・防の紋章をエリスに付けてもらおうとするが、うまくいかない。
紋章のチャージもリペアのカードも使えなかった。
斥候の紋章などの追加紋章は他の者も使えなくなったようだ。
「やっぱりだめだよ」
「俺のスキルの紋章が干渉してしまうようだ」
エリスは俺の両手を触る。
そして、両手の甲の紋章をじっと見つめた。
「色んな紋章が混ざり合っているように見えるよ」
実際に右手と左手、どちらを意識しても、
防具の装備と解除・刀の出し入れ・ハンドガンの出し入れが出来る。
紋章の魔法陣が複雑で、両手の甲には同じ紋章が刻まれていた。
ハイブリッドの意味は複合だったか?
紋章が複合されているからハイブリッドなのか?
それとも、色んなジョブの特性を併せ持っているからハイブリッドなのか?
いや、色んなことが複合されているけど、紋章錬金術師に近い気がする。
自分にしか使えない専用紋章。
今の所エリスのように他の者を紋章装備でサポートすることは出来ない。
スキルが強いわけでもない。
でも、手探りで実際にLVを上げて試してみるのは、ゲームを思い出す。
前回よりレベル上げに時間がかかるだろう。
そう考えると、ゲーム感覚で気楽に進んだ方がいいのかもしれない。
「早くレベルを上げたい」
「ハヤト、学園の休み中はきっちり休むのですわ。前のような、休息日を無視したような無茶なレベル上げではすぐに体が壊れますわよ」
ファルナは少し怒っているように見えた。
「5日だけはレベル上げをしたい」
今は8日だ。
学園の休日はパターンが決まっている。
1日
2日
3日
4日 休み
5日 休み
6日
7日
8日
9日 休み
10日休み
のように、3日学園に通い、2日休む。
この繰り返しだ。
だが、明日と明後日の休日は休みたくない。
まだレベル1なのだ。
「ダメですわ」
「ファルナ、禁止してもハヤトは抜け出すよ。それよりは、僕が一緒にダンジョンに行って、時間をかけずに帰ってきてもらうようにした方が安全だよ」
「……分かりましたわ。ですが、14日からは学園の休日を守って、休んでくれますわね?」
「……分かった」
「もっとはっきりと言って欲しいですわ。約束してくれますわね?」
「分かった!」
お母さんかよ。
でも、心配して言ってくれているんだよな。
「ハヤト、君はまたずる賢く立ち回ってファルナに取り入っているのかい?」
「アサヒか」
何故かヒメの顔が引きつったような気がした。
「バトルモードの件なら、今日の15時からのはずだ。まだ時間はある」
「ふ、どうだろうね?君はすぐ逃げるだろう?君のレベルは?」
言うと思った。
アサヒは何も変わらないな。
「レベル1だ」
「はははははははははは!今日のバトルモードは楽しみにしているよ。逃げたら君の為にもならないからね。なんせこれは女神が決めた君の無能を暴く為の神聖な儀式だからね」
そう言ってアサヒが去って行く。
「所で、アサヒは前にも増して嫌われてないか?」
「アサヒは、転生後すぐにヒメを襲おうとして、あ、ヒメはもちろん無事だったよ。その後更に教会騎士団の取り調べがあって勇者騎士団を解散して、昨日まで停学になっていたんだ」
「凄い!たった7日でここまで嫌われるって凄くないか?」
アサヒは自分を中心に世界が回っていると思っている人間だ。
そういう認識に問題がある。
それに、スティンガーの英雄騎士団に入ろうとして、英雄騎士団を恨んで潰そうと動いた。
次はアルナに取り入ろうとして、アルナを殺そうとした。
アサヒは味方になっても敵になっても厄介なのだ。
そんなアサヒと、俺は今日バトルモードで戦う。
これも試練の1つだ。
あ~、行きたくない。
皆と食べる楽しいランチの気分が……台無しだ。
さっきまでの希望と期待に満ちた学園生活の気分が台無しだ。
いや、俺はアサヒに反応しすぎているのかもしれない。
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