第39話
うさぎ亭で俺達は盛り上がる。
「たくさんの猪肉を取引出来ました!ハヤトさんのおかげですよ」
「私のレベルは30に上がったよ!ありがとう」
「スキルを上げることが出来たよ。ハヤトのおかげだよ」
俺は皆に褒められた。
ヒメの周りには10体のスライムが居て、更にきゅうを抱く。
まるで我が子のように扱う。
それ俺の固有スキルだからな。
ま、いいか。
「新しいスキルを覚えたのに、使えなかったよ」
「どんなスキルなんだ?」
「スライムにポーションを飲ませておけば、仲間を回復してくれるよ」
「ヒメはこれから回復役も出来るな」
スライム自動ポーションか。
俺がダメージを受けた場合予めスライムに飲ませておいたポーションを俺に使ってくれる。
ただ、回復してくれる時、スライムが体にまとわりついてべとべとになるんだよな。
いや、俺じゃなくて3人がケガをした場合ぬるぬる状態を見ることが出来ると考えれば、有りだな。
ダンジョンで3人がぬるぬるにならないかな~?
「僕は紋章のLVを上げて、追加の紋章装備を作れるようになったんだ」
「まじでか!両手の甲以外に装備できる紋章だよな?」
両手の甲の紋章が武具の紋章だとすれば、追加紋章はアクセサリー的な能力を持つイメージだ。
「そうだね。一通り作ってあるからハヤトに張り付けようか?」
「ぜひ頼む」
「今日の夜に張り付けるよ」
「今できるか?」
「出来るけど」
「今付けてくれ」
「わ、私は外に出てるね」
ヒメは出て行った。
追加の紋章装備は尻に貼る。
左右の尻に2つの紋章を張れるのだ。
紋章を張り付けるには尻を丸出しにする。
斥候の紋章や状態異常耐性の紋章などがあり、つける事でスキルLV10を超えて1つにつき1LV上げることが出来る。
闇魔導士なら斥候スキルを覚えるまでは斥候の紋章2つを張るのが普通だ。
敵感知と罠感知を覚えたら状態異常耐性2つ張りが定石になる。
だが。
「斥候の紋章と異常耐性の紋章にして欲しい」
偽装LV10でも相手が分析LV10を持っていればステータスを覗かれる。
だが、偽装LV11になればその心配もない。
偽装のLVが1でも高ければ分析を無効化できる。
俺の勘だけど、アオイは分析LV10を持っている気がするんだよな。
あいつ女好きなのに俺を見ていた。
前に出ず、エリスとヒメを後ろから見つつ俺も見ている気がした。
落ち着かなかったが、これでダンジョンの魔物狩りに集中できる。
俺は紋章を張り付けてもらうが、トレイン娘は俺を凝視していた。
トレイン娘は短剣と短剣アーツ。
そして罠感知と敵感知を使える。
みんな強くなった。
紋章でパーティーをサポート出来るエリス。
攻撃も回復も出来るヒメ。
罠と敵を感知出来るトレイン娘。
俺抜きでも3人でパーティーを組んでダンジョンで活躍できるだろう。
少し火力が足りないが、エリスのレベルが上がればそれも解消されるだろう。
俺の紋章の貼り付けが終わるとヒメが戻って来る。
「思ったんだけど、勇者のジョブって意味あるのかな?」
「どういう意味なんだい?」
「だって、勇者は色んなジョブのスキルを覚えられるけど、他のジョブだってジョブチェンジをすればスキルを覚えられるんでしょ?」
「確かに!そうですよね。どのジョブでもジョブチェンジで万能になれます」
確かにそうだ。
勇者はブレイブアーツを3つ放ってしまえばただの器用貧乏だ。
そしてその器用貧乏もジョブチェンジで再現できる。
だが、勇者の固有スキルLVを上げればある程度改善される。
「アサヒの固有スキルがLV5になれば、そこそこ強くなるか」
【勇者アサヒ視点】
「くそ、僕抜きでダンジョンに挑むなんてどうかしてる」
アサヒはカインに投げ飛ばされてから悔しさで震える。
僕が中心にいるべきなんだ。
あの汗豚が何で僕を投げ飛ばせるんだ!
運動も勉強も僕の方が出来た!
しかも僕は借金を背負っている。
このままでは強くなれない。
「勇者アサヒか?」
兵士の格好をした男3人が僕の前に立った。
「誰だい?」
「我らは英雄騎士団、我らに協力してもらえるなら、借金を肩代わりし、レベル上げにも協力しよう」
「どうして助けるんだい?」
「勇者である君がくすぶっているのはおかしい。我らが協力しよう」
やっと僕にも運が回ってきた。
僕は勇者だ。
レベルだ。
レベルさえ上げれば僕が勝つんだ。
汗豚も、ツヨシも、そしてハヤトも全部僕が倒して僕の最強を証明する!
その後は魅力の能力値を上げて女は僕の物になる。
皆に尊敬される。
僕が世界の中心になるんだ。
アサヒは笑った。
【ハヤト視点】
「ハヤトさんは午後もダンジョンに行きますか?」
「そうだな」
「ダンジョンに行くなら、私と少しだけ1階のラビットを狩りませんか?」
俺はトレイン娘が前に言っていた言葉を思い出す。
『ハヤトさんとは温泉でもダンジョンでも長い
温泉のトイレじゃなく、今度はダンジョンか!
「1時間だけでいいか?」
「はい、1時間で十分です」
「分かった」
1時間で十分という答えで、俺の鼓動は早くなった。
午後、俺とトレイン娘2人だけでダンジョンの1階に向かった。
今のラビイなら1人でも安全に狩りが出来るだろう。
敵感知のスキルがあるのだ。
わざわざ俺に協力を頼む必要は無い。
だがそこは何とでも言える。
しかもトレイン娘は危なっかしいイメージがある。
俺がついて行くのは自然に思える。
そしてエリスは紋章作りで忙しい。
ヒメはポーションを作っている。
どちらもやる事がある。
2人は紋章とポーションを作る事で戦力アップ出来るだろう。
俺とトレイン娘だけで出かけるのも自然だ。
俺達は自然な流れでダンジョンに向かった。
俺とトレイン娘はラビットを狩る。
5分で狩り終わった。
「スケルトンを出しましょう」
「スケルトンを出す」
俺とトレイン娘が同時に同じことを言った。
俺達はお互いに笑う。
「この場所はいいですね。前から目を付けていました」
「川の音がして、水浴びできるし木に囲まれているからな」
「その通りです!更にスケルトンの効果は1時間です」
「してる時はスケルトンが魔物を狩る。そしてスケルトンが消えると、1時間を知らせてくれる」
「ですです!」
その後、トレイン娘の笑顔が消えて、目を潤ませる。
温泉のトイレの時のように顔を赤くした。
これが、トレイン娘の本当の顔だ。
トレイン娘は紋章装備を解除した。
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