第26話
前に偶然街中で会ったハルサリアと会話してると憲兵に声をかけられ、近隣の住民から”エルフを売ってそうな男とエルフが会話してる”と通報があった…と言われたことがある。
エルフ売ってそうな男って何だよ。
そしてたった今、人攫いと間違われ憲兵に囲まれている。しかもハルサリアの時と同じ憲兵が居てまたお前か…みたいな顔をされた。
俺も同じ気持ちだよクソが。
この街に住み始めて結構経つ筈なのに、何故いまだに通報されなければならんのだ。
「仮にお前が人攫いじゃないとしたらその子達はいったい何処の子だ? 親御さんも心配してるんじゃないのか」
「俺がその”親御”さんだよ」
「何? 馬鹿も休み休み言え。それならこの子達は姉弟か? 全く似てないじゃないか」
俺の顔とイスカ達の顔を交互に見る憲兵。血を引いてても似てない家族なんて普通にいるだろうが。
「それに……そっちの紫の髪の子供は」
その言葉を聞きステラの肩がビクリと震える。
「あ? この子がなんだ?」
ステラの頭に手を置いて憲兵を睨む。
「っ?! …ふん、貴様がどのような態度をとろうと我々の仕事は街の安全と市民を守ることだ。言いたいことがあるなら詰所で…」
市民を守る? あの程度のチンピラ共にいいようにされていたお前等が?
「あの…」
それまで後ろで黙っていたアリアメルが声をだす。今まで一度も見たことがない怒った顔をして。
「その人…グレイさんの言ってることは本当です。私達はグレイさんの子供で、家族です。貴方達にとっては”普通”の服を着ている子供は市民なのでしょうが余計なお世話です」
アリアメルの後ろに隠れてたニナとラッツが俺の左右の足にしがみついてくる。
「おとーしゃんいじめちゃだめ!」
すまん、どちらかというと俺の方が……。
イスカとフィオも俺を庇うように前に立つ。
それを見た憲兵達は気まずそうに顔を見合わせる。
「行きましょうグレイさん」
そう言って俺の手を引いて歩きだすアリアメル。そして
「……私達がボロボロの格好をしていた時は助けてなんてくれなかった癖に」
小さな声でそう言った。
その時のアリアメルの表情と言葉から前に何かあったのだろう。
暫く歩くと我に返ったのかアリアメルが恥ずかしそうに謝ってくる。
何か、守る筈が逆に守られてしまった。…あの時この子達を助けたことは俺の人生最大の英断だったな。
「「……」」
で、子供達を宿屋の親子に紹介すると二人とも固まってしまった。
「おい」
「っは?!」
「幾ら何でも驚きすぎだろうがよ」
「い、いやだってなぁ?」
宿屋の親父がリナの顔を見る。
「う…うん、これは驚かない方がおかしいよ…」
今現在歩き疲れたニナをおんぶして右手にステラ、左手でラッツをだっこしているが何処もおかしな所はない。
止めろ言うなわかっている。
「お前が突然家を買ったのはその子達の為か?」
イスカ達とリナが会話をしてるのを見ながら宿屋の親父が小さな声で話かけてくる。
「別にそれだけが理由じゃない。この街で暮らし始めて結構経つからな、そろそろ腰を落ち着けてもいいかと思っていた所だったからな。…丁度よかったんだよ、あの子達にとっても、俺にとっても」
「へっ、顔に似合わねえことしやがって」
「”顔に”が余計なんだよ…」
さっきからニヤニヤしやがって…。
「さって、適当な席に座ってな、すぐ飯を用意してやる。おーいリナ! 飯の準備だ」
「あ、はーい!」
そういうと二人は厨房へと入っていった。
でてきた料理はかなり美味かった。子供達は絶賛し、アリアメルに至ってはリナに頼みこんで料理のレシピを教えてもらっていた。
「俺が泊まってた時より美味くなってないか?」
「そりゃあれだよ、家族と食う飯は美味いもんなんだよ。知らなかったのか?」
家族で食べるご飯か……それは確かにそうだな。
ただでさえ美味しいアリアメルの料理に家族が加わってるんだから、俺が太るのも当然か…。
「……」
「ま、何かあったら相談しな。人としても父親としても先輩の俺が優しくアドバイスしてやるよ」
「言ってろ」
――――――――――
幕間をぶっこむタイミングがみつからない…。
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