第25話


薄暗くした部屋の中、ベッドの上で子供達の寝息を聞きながら天井を見る。

エミリア達のこと、勇者のこと、子供達の将来のこと。色々気になることもあるが俺のやるべきことは変わらない。


そう、取り敢えず。


明日は額縁を買いにいこう。うん。




朝起きて子供達の寝顔を眺めてると廊下をパタパタ歩く音が聞こえる。アリアメルも起きたのか。


子供達を起こさないように静かに部屋から出て一階へ降りると、エプロンを着けてるアリアメルと目が合った。


「あ、ごめんなさい起こしてしまいましたか? これから朝ごはんの準備をしますからまだ寝てても…」


「いや、いつもアリアメルに任せっぱなしだから今日くらいは手伝わせてくれ」


「そうですか…ふふ、それじゃあお言葉に甘えて」


こういう時下手に断らないアリアメルは流石である、気づかい上手だ。


二人並んで朝食を作る。メニューはパン、目玉焼きにウインナー、サラダにスープ。

ちょっと多いかなとも思うが、子供達は育ち盛りだし大丈夫だろう。


「~♪」


鼻唄まじりの上機嫌なアリアメル。


出来上がった料理を並べてるとフィオが二階から慌てた様子で降りてくる。


「わ、わ! ごめんアリア姉寝坊しちゃった! …ってグレイさん?」


「おはよフィオちゃん、夜更かししちゃった? 寝癖ついてるよ」


「おはようフィオ。丁度良かった、皆を起こしてきてくれるか?」


「えう…直ぐに起こしてきます…」


とぼとぼと二階へ上がるフィオをアリアメルは優しい顔で見ていた。

直後に二階の方でどたばたとフィオがイスカを起こす音が聞こえた。そしてそれを目覚まし代わりにニナ、ステラ、ラッツが降りてくる。三人共まだ眠そうだな。


「おはよう、ほら三人共顔洗ってこい」


「……ぅー」


「パパ……わたしまだねれる……」


駄目だなこれ、ラッツも立ったまま船を漕いでる。


「ちょっと三人の顔を洗ってくる」


「はい、その間に準備を済ませときます」


俺タオルを三枚持って戦場へ…!






「……」


「ふ…ふふ…ご、ごめんなさい。大変だったんですね…ふふ」


ああ、大変だった。ニナは顔を水につけるのを怖がり、ステラは桶に入れた水を飲み、ラッツは桶に顔を突っ込んだまま動かなくなる。


お陰で朝からボロボロになった。そんな俺の姿がツボにでも入ったのか、アリアメルはさっきからずっと笑っている。

こんなに笑っているアリアメルを見るのは始めてだ。


大変だったが…アリアメルがこんなに楽しそうな姿が見れたんだから報酬としては充分だな。




「ああ、そうだ。アリアメル、今日はお昼の弁当は用意しなくていいぞ」


朝食を食べながらアリアメルに話かける。


「え、そう…なんですか?」


何で微妙に残念そうなんだ。


「ああ、今日は依頼を受けるつもりはないからな。昼は皆で食べにいかないか?」


「おとーしゃんほんと?!」


俺の言葉にニナが反応する。


「ああ」


今日は額縁を買いに行って、この子達を宿屋の親子に紹介しよう。


「パパ……私も行っていいの?」


「? 当たり前だろう、家族で出掛けるんだから」


まあステラが何を心配してるかはわかる。自分のせいで俺達まで変な目で見られるんじゃないかと思っているのだろう。

ステラはこの家に引っ越してきてから殆んど出歩いてないしな。

だが他人の目なんぞ気にする必要はない。


ステラを苛める奴は俺が斬……刎……やっつけてやろう。


「じゃあお出掛けの準備しますね。…よかったねステラちゃん」


「……うん」


しかし実際にステラ達と出掛けて気づかいたことがある。……ヴァンパイアハーフやクォーターに対する偏見より、俺の顔に対する偏見の方が勝っていたことに。


――――――――――


でれでれおとーしゃんモード

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