第23話
エミリア達とのやり取りを見ていれば分かると思うが、俺達は別に不仲でパーティを解散した訳ではない。
理由は…まあ、一言で言えば方向性の違いだ。当時の俺は冒険者として経験を積み、ランクが上がれば幼い頃憧れた英雄になれると信じていた。
俺が冒険者を目指した理由はガキの頃、魔物に襲われていた時に冒険者に助けてもらった。ただそれだけだ。
実にありきたりでつまらない理由だが俺はあの時……いや、正直言えば今もあの時俺を守る為、魔物の前に立ち塞がったあの冒険者の背中に憧れている。
昔俺が所属していたパーティ『一振りの剣』
メンバーはリーダーで槍術師のアドラス、剣士のエミリア、ヒーラーのカーシャ、
全員揃って田舎者で、冒険者を夢見て大きな街に出てきて俺達は出会った。
因みにこの世界の職業って結構適当だ。貴方の職業は◯◯です。…何て誰かが判定してくれたりする訳じゃないし。
当時俺達は別の国で活動していて、そこそこ有望株な中堅パーティだった。
このまま順調にいけば……そう思っていた。
だが、ランクが上がれば色々と面倒な
次期Sランク冒険者とのコネ作りか。
普通に考えれば互いに益のあることなのだろう。エミリアやカーシャがどう思うかは分からないが。
…いやエミリアなら怒るな間違いなく。
出会った時からエミリアは変に真面目な奴だったからな、よく暴走してはカーシャに止められていた。良いコンビなんだよあの二人。
まあバストークの領主については特に悪い噂は聞かないからもしかしたら、本当に”
俺も気になるし、今度子供達やカーシャと食事でもしながら教えてもらおうかな。
…いやでもイスカとフィオは喜ぶだろうがアリアメルは複雑かもしれない。
イスカ達は何故冒険者になりたいと言い出したんだろうか? もし、もしこれが俺が原因だとしたら……
お父さんは泣く自信がある。
アリアメルの作ってくれた弁当を食べ終わり座ったまま空を見上げる。草の上に寝転んだりしたいが汚れるかもしれないからな。今は家事の殆んどをアリアメルがイスカ達に手伝ってもらいながらやってくれてるし、余り手間を増やすのもな。
……体鈍ってるよな、最近街の近くでこなせる簡単な依頼ばかり受けてるし。
そして体重も確実に増えている。毎日朝、昼、晩と美味しいご飯を食べてりゃそりゃ増えるよな。
…これが幸せ太りというやつか。
立ち上がりせめて冒険者ギルドまで走ろうかとも思ったが無駄なので止めた。
…今日の夜ご飯は何かな?
冒険者ギルドに入るとエミリア達『戦乙女』は既に戻ってきているようだった。早かったな、てっきり夕食ぐらい誘われていると思ったが。
エミリアと目が合うと此方に歩いてくる。その雰囲気はどこかおかしい、余裕がないというか…。
「戻ってきたかグレイ。今日はどんな依頼を受けてたんだ?」
「常駐依頼だよ、街の近くの魔物退治だ。今はさっさと終わらせて日が暮れる前に家帰りたいし、簡単なものしか受けてない」
「…あの子達の為か?」
「俺自身の為でもある。エミリアこそ随時早かったな、夕食には誘われなかったのか?」
「ああ、誘われたが断った」
…この街の領主って伯爵じゃなかったか? 貴族の誘いを断ったのか。
「…それと、今日呼ばれたのは別に”
だろうな。
「じゃあ何だったんだ?」
そう質問するとエミリアは真剣な顔になる。
「他国で神託により勇者が選ばれたそうだ。我々『戦乙女』をそのパーティメンバーとして派遣したいと言われた」
勇者だと? 魔王も居ないのにか?
「何で態々他国のA+パーティにその話が来るんだよ?」
「……我々が”女性ばかり”のパーティだからだろう。勇者は男らしいからな、つまりそういうことだ。ランクも高く不自然さも少ない。うってつけだったんだろう……ふざけている」
「その様子だと受けるつもりもないんだろ?」
「当たり前だ! こんなもの只の人身御供ではないか、冗談ではない!」
「エミー落ち着きなさい。ちょっと声が大きいわ」
そう言ってカーシャが話かけてくる。
「引き留めてごめんなさいグレイ。…出来れば今の話は聞かなかったことにしてちょうだい。行くわよエミー」
「…ああ、すまないグレイ。またな」
「ああ」
エミリアとカーシャが離れていくのを見守る。
高ランクパーティが国からの要請を断る…か。面倒なことにならなきゃいいがな。
――――――――――
勇者といえばハーレムパーティよ(できるかどうかは別問題)
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