第21話


 エミリアとカーシャを家に上げてリビングへと案内する。そこには当然イスカやニナ達が居る訳で。


 さっきからエミリア達は時折二人でヒソヒソと何かを話し合っている。


「あ…えと、グレイさんのお知り合いですか?」


 イスカが不思議そうな顔で尋ねてくる。


「ああ、この二人は昔のパーティメンバーだ」


「……」


 エミリア達の方を向くと二人共なんともいえない表情をしていた。



 リビングのソファーにエミリアとカーシャと向かい合う形で座る。


「…ぅぅー」


「……むー」


 俺の左右にニナとステラが座りガッチリホールドしてくる。二人共エミリアとカーシャを警戒している感じだ。…どうしたんだろうか。


 対してエミリア達はちょっと居心地の悪そうな顔をしている。


「ニナもステラちゃんもグレイさんが取られないか心配なんですよ」


 その時、お茶を持ってきたアリアメルがリビングに入ってきた。


「どうぞ。グレイさんも」


 持ってきたお茶をエミリア達と俺の前に置く。


「あ…ああ、すまない」


「あらありがと」


「ありがとうアリアメル、だが取られるって…」


 アリアメルがニナの隣に座る。


「ほらニナ、ステラちゃん。グレイさん達は大事なお話があるから…」


「や…」


「…(ぷい)」


 ニナ達はより一層力を込める。


「あー、更に訊きたいことが増えたんだが…その子供達は一体」


「俺の子供だが」


「…は?」


「あら…」


 空気が凍る。


「……れだ」


「あ? よく聞こえないぞ」


「相手は誰だ?」


 相手? 何の相手だ?


「おとーしゃんはニナのおとーしゃん…」


 頭をぐりぐり押し付けてくるニナ、これは鼻水がつくパターン…。


「止めなさいエミー、子供達が怖がっているでしょう」


「だが!」


「落ち着きなさい、そもそも年齢がおかしいでしょう。えと、アリアメルちゃん…だっけ、貴女年齢は?」


「あ、えと…13歳です」


 そういえばアリアメル、イスカ、フィオの三人は俺が思っていたより少しだけ年齢が上だった。あの時は栄養が足りなくて痩せていたから実年齢より幼く見えたのかもしれない。


「13歳…それだと私達がパーティを解散した時に、既にグレイに子供がいたことになるでしょ? あの時グレイと付き合っていたのは…」


「おい止めろよせそれ以上言うな」


 勘弁してくれ…。


「あら、ごめんなさい」


 そう言いながらも楽しそうに笑うカーシャ。

 …こういう所苦手なんだよな。


「…ね、所で気になってたんだけど…そっちの子はヴァンパイアよね、ハーフかクォーター?」


 その言葉にステラがビクリと反応する。


「大丈夫だステラ…この二人はステラをイジメたりしないから」


「………わかった」



 その後今までの経緯をエミリア達に説明した。この子達の出会いや一緒に暮らすことになったこと、 サシャにこの家へ案内してもらい購入したこと。

 俺の話を聞いた二人は呆れたように溜め息をついた。


「そういう所は相変わらずだな」


「そうね、グレイってば昔から見た目や態度はチンピラなのに、困ってる人や弱ってる人を見つけるとすぐ手を差しのべちゃうのよね」


 人が気にしてることをずけずけど。


 ……あ、そうだ。


「そういえばこの家の購入代金なんだが…何故俺がこの家を買うとわかったんだ? しかも半分も持ってくれる理由は? いや、正直物凄く有難いんだが」


 やはり理由は気になる。


「ん? この家だけでは無いぞ」


 は?


「どういう意味だ?」


「この街にあるパーティハウスについては全て半額持つとギルドに言ってある」


「意味不明なんだが」


「パーティハウスを購入するということは新しくパーティを組むからだろう、ならば私やカーシャがそのメンバーを見定めてやる必要があるだろう? お前は私達が再びパーティを組もうと言っても、頑なに首を縦に振らなかったのだ。ならお前がパーティを組むのは一体どんな人間なのか…気になるだろう、もしお前が騙されていたら…」


 真剣な顔のエミリア。


 説明を聞いても全く理解できないんだが…俺をそんな世間知らずと一緒にするなよ。


「だがそうして見に来てみれば子供が5…いや6人も…」


「そうね、流石にびっくりしちゃったわ」


「まあそれは……ん?」


 そうだろうが、そう続けようとしたらニナ達が眠そうに目を擦っていた。


「ほら二人共眠いんだったらベッドへ行こ?」


 アリアメルが立ち上がりニナとステラに声をかける。


「ぅー…おとーしゃんいなくなる… 」


「ニナ、ステラ大丈夫だ。話が終わったらすぐ俺もいく、いなくなったりしないから先に行っておいで」


 アリアメルが二人と手を繋いでリビングから出て行った。ずっと所在なさげだったイスカ達と一緒に。


「よくできたお姉ちゃんだろ?」


「……あれは子供というか」


「完全に…ねえ?」


 何が言いたいんだ一体。


「取り敢えず今日の所は夜分遅いし帰る…また来る」


 来るのか…。


「ええ、遅くまでごめんなさい」


「わかった、送っていこう」


 そう言って出かける準備をしようと立ち上がると。


「必要ない、私達を誰だと思っている。街の暴漢なんぞに遅れをとったりしない」


「そういう所も変わらないのね、何だか安心するわ。…それに」


「1ヶ月程前にこの街の犯罪組織一つ潰されたらしいからな……全員首を落とされて。それから大分治安が良くなってるみたいだからな。」


 二人が同時に俺の顔を見る。


「…そういえばそんなこともあったな」


 俺は目を反らしながらそう言った。


 玄関の前まで二人を見送りに来ると、ニナ達を寝かしつけたアリアメルが出てくる。


「あ、お帰りですか?」


「ああ、遅くにすまなかったなアリアメル」


「いいえ、グレイさんのお友達ならいつでも歓迎です」


「………お友達」


「えと、何か間違ってましたか…?」


「はいはーい、さっさと帰りましょエミー。あ、また二人でお邪魔するわね? 今度は皆でご飯でもたべましょ」


「あ、ああ。また来い、まだ話も終わってないだろうし」


 ずっと固まって動かないエミリアをカーシャが引き摺っていった。


「一体何だったんだろうな」


「ふふ、お二人ともグレイさんを心配して来てくれたんですよ」


「そうか………もう寝るか」


「はい、お茶を片付けたら私も寝ます」


「手伝う」


 流石に俺の客だったし…全部やってもらうのは気が引ける。


「…はい、ありがとうございます、グレイさん」


 アリアメルは少しだけ嬉しそうに笑いながらそう言った。


 ――――――――――


 修羅場を期待した人達には期待はずれな展開ですいません、前回の話(20話)のコメント数が凄くて急いで更新しました。…今日仕事休みで良かった。


今回ニナとステラがグレイに張り付いていたのはエミリア達がグレイを連れていってしまうことを警戒しての行動。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る