第15話


 深夜、子供達が寝静まったのを確認して起き上がる。幸せそうな子供達の寝顔。ニナ達にそっと外套マントをかけて、小屋からでようとすると後ろから声をかけられる。


「パパ、お仕事?」


 振り返るとステラが起きてこちらを見ていた、少しだけ不安そうな赤く綺麗な瞳で。


「すまん、起こしたか?」


「ううん」


 他の子達を起こさないように小さな声での会話。


「少しだけ出かけてくるから寝てな」


「パパ…ちゃんと帰ってくる?」


「ああ、勿論だ。 明後日から新しい家で皆で暮らすんだからな」


「ん…わかった。 怪我しないでね」


「そうだな…ステラが心配するしな」


「皆する」


「そっか」


 やっぱりステラは良い子だったな 。


「じゃあ行ってくるな」


「パパ」


「ん、まだ何かあるのか?」


「いつか、パパが私達のパパになってくれた理由を聞かせてね」


「構わないが…別に隠すようなことじゃないから今言ってもいいぞ」


 そんな大それた理由がある訳じゃないしな。


「ううん、それは皆と一緒に聞きたい。…行ってらっしゃいパパ」


「…ああ、行ってきます」


 何か色々見透かされてる気分だ。

 まあ、不思議と悪い気はしないがな。


 さて、それじゃあこの子達との新しい生活の為にお父さんは頑張らないとな。


 俺は拘束してるチンピラの元へと向かった。





「ここがお前達のアジトか?」


 俺は拘束したまま引きずってきた二人のチンピラの方を見る。


「そ…そうだ、な…なあアンタ、助けてくれよ。 俺だって本当は嫌だったんだよ、こんなこと…これからは心を入れ替えて真っ当に生きるからさ、な?頼むよ…」


「お、俺もだ! こうしてちゃんとアジトに案内したろ? 死にたくねぇ!」


 命乞いを始めるチンピラ達。


「俺はちゃんと警告したぞ、そのチャンスを投げ捨てたのは自分自身だろ? 」


 今までコイツ等の犠牲になった人間にとってはこの二人が真面になろうが一切関係ないし、何より俺はコイツらが新しい生活の禍根になると判断した。


「…早く終わらせて帰らないとニナが寂しがるしステラが心配するな」


 俺は首のない二つの死体をその場に残して歩きだした。





 裏路地にある一見普通の民家。だが家の前には明らかにカタギには見えない二人の見張り。

 ……隠したいのか隠したくないのか全く分からんなこれ。


 俺が近くへ歩いてくると見張りの二人が目配せして一人が扉の前へ留まり、もう一人が此方へと近づいてくる。

 多分、何かあったら扉の前に居る奴が中へ知らせにいくのだろう。扉と此方の距離は5メートル程か。


「何モンだお前? カタギじゃねえみたいだが…」


 お前に言われたくねーよふざけんな。


「あぁ? どっからどうみても冒険者だろうが。それよりお前達が強欲な蜘蛛か?」


「……」


 それに答えず扉の前にいた方の男へ視線を向ける、そのまま視線を俺へと戻し


「どうやって調べ……」


「させねえよ」


 扉の前に居た男が扉を開ける前に距離を詰めて首を刎ねる。驚きに目を見開いたまま宙に舞う男の首、さっきまで俺と会話していた男は既に首を失い絶命している。


 何で首ばかり狙うのかって?

 早いし確実だからな。それに首を落としておけばアンデッドとして復活する可能性も潰せる。


 魔法でもいいんだが強欲な蜘蛛に魔力探知系のスキルを持っている奴がいたら、魔法を使えば襲撃に気付かれてしまう可能性もある。魔法はできるだけ控えとこう。

 出入口がここだけとは限らないし、逃げられても面倒だ。



 扉を開けると酒と煙草の匂いの中でトランプをしている男達がいた。俺に気付いた男達は口々に何か言いながらナイフや剣を構える。


「誰だテメェ! 外にいた連中はどうした!」


「殺した、こんなふうにな」


 一番近くにいた男の首を刎ねた。



 ――――――――――



 犯罪組織殲滅RTA


 チンピラ は くびをはねられた!

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