第306話 最大の敵は自分の肉体

 サマエルの肉体が、マイクロブラックホールによって大きく削り取られる上に、降着円盤による膨大な熱とX線を放射する宇宙ジェットによってさらに焼き付させる、そして超重力の塊が蒸発して消え去っていくのを見て、シュオールは叫ぶ。


《わははは!どうじゃ儂の本気は!このまま一気に……はおぅ!?》


 次の瞬間、シュオールの腰から、びきり、と嫌な音が響き渡る。続けて再度の攻撃を仕掛けようとしていた彼女の体が、びくん、とひきつって激痛が走る。

 そう、つまりは、ぎっくり腰である。


《がああああ!こ、腰があああ!体があああ!腰だけでなく全身筋肉痛じゃあああ!》


 連続の戦闘体勢すら維持できなくなった彼女は、激痛にどたんばたんとのたうち回る。

 ぎっくり腰の激痛は、並大抵の物ではない。

 それは、竜である彼女であっても耐えられない痛みだった。

 今まで大空洞の中で、のんびりと数千年引きこもっていた彼女が、準備運動もなく、いきなり全力攻撃を仕掛けたのだから、こうなっても不思議ではない。


《だから引きこもってばかりいないで、たまには外に出て運動しなさいと言っていたでしょうが!!》


 そんなのたうち回る彼女に対して、サマエルの憎悪と怨念の魔力で構築された、魔力の奔流のドラゴンブレスによる反撃をまともに食らってしまう。


《ぎゃーー!!》


 痛みにのたうち回っている所に対して、無防備に攻撃を食らってしまったらたまったものではない。

 致命的ではないにせよ、それなりのダメージを彼女は食らってしまった。

 大地の治癒力による治癒魔術で肉体を癒す彼女だか、ぎっくり腰までは完全には治癒できない。


《おごごご。や、やっぱりいきなり全力攻撃は無謀だったか…。儂反省…。》


 そんな中、サマエルは通常空間に戻ったのを見て、近くの村の上空まで飛行すると、残った肉体の下部から巨体な口が展開し、そのまま落下することによって村々と森を丸ごと飲み込み、食らいつくしていく。


押し潰され、全てが食らい尽くされて村と森ごと飲み込まれていくその惨状に、皆が絶句し、再度浮上したそこは、大きなクレーターへと変貌していた。

その生き汚さに、その場にいた皆は驚愕と絶句していた。




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