第296話 悪夢
以前から回収したエキドナの核の一部を培養して巨大な肉の器を作り上げ、そこに多大な生贄の血と魂を注ぎ込んで、作り上げられていたサマエル用の肉の器。
異界で建築・建造していたその器を、エイシェトはついに解放してこの地上に解き放ったのである。
だが、そこにエネルギーを注入して、サマエルを降臨するための術式を妨害されている状況だ。
エネルギーが足りないというのなら、それを補うしかない。
上空に存在している巨大な肉塊の表面がうぞうぞと蠢き、無数の竜の首が巨大な肉塊の下部へと現れる。
そして、その無数の竜の首は下へと伸びていって、逃げ回る帝都の住民やレギオンを次々に食い散らかしていく。
何とかレジスタンスたちの働きで帝都の半数は脱出はできたが、残り半分はまだまだ帝都内部を逃げ回っている状況である。
人々の混乱と憎悪の負の思念により、帝都の魔術式は増幅していく。
もはや、逆五芒星の力は30%ほどにまで力を発揮するようになっていた。
「くそっ!竜たちよ!迎撃に入れ!!」
アスタロト配下の竜たちも上から襲い掛かって来る無数の竜首の迎撃にかかるが、それでも手が足りない。
おまけにそちらに手を取られると儀式妨害の力が足りなくなる。
今や50%に到達した儀式は、帝都の各部を魔術分解し始めていた。
帝都の建物だけでなくレギオンや人間たち、彼らも少しずつ分解されて肉の器に吸い込まれているのだ。
『あの女のことだから、下手をすればこのまま無理矢理サマエルを降臨させかねんぞ。不完全な状態で降臨したサマエルがどんなふうに暴れだすか想像もつかん。』
「言ってる場合か!仕方ない。こうなったらこちらも最終手段を使う。地脈の流れを遮断して無理矢理儀式を強制終了させる。そうすれば……。」
バエルとアスタロトがそう口にした瞬間、空の肉塊に変化が起きた。
数十キロメルーの肉塊にぴしりと真横に線が走る。そして、それは左右に開きそこから巨大な牙をもった口が現れる。
ゆっくりと降下しているところを見ると、直接的に帝都全てを貪り食らうつもりらしい。
その悪夢の光景に、帝都の人々は絶望に囚われた。
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