第287話 怪物軍との戦い

 そして、ついに竜皇軍と怪物軍がぶつかり合うときが来た。

 戦場は半ば山に取り囲まれた平地部分。そここそが彼らが選んだ戦場である。

 竜皇軍はあらかじめ陣地を敷き、怪物軍たちを待ち構えている。

 裸や布切れを纏っただけのボロボロの女性たちに縄で縛り付け、無理矢理進める、そしてその女性たちを鎧代わりに体の全面に縛り付けている。

 そのあまりに非道な行為に、竜皇軍たちの皆にも怒りと衝撃が伝わっていく。


『よし、それでは我の咆哮を食らうがいい!!』


『あーもうめんどくさいのぅ!!』


 リュフトヒェンとアーテルは揃って敵軍に対して咆哮を開始する。

 竜の咆哮は相手の士気を破壊する。それは怪物たち、ゴブリンやオークたちであっても例外ではない。

 そして、その咆哮は周囲の山々とあらかじめ仕込んでおいた音声反射結界によって反射・反響し何度も怪物軍へと襲い掛かる。

 これはいわゆる「山彦」と言われる効果である。

 山や谷の斜面に向かって音を発したとき、それが跳ね返ってくる状況。

 それを魔術的に再現しようとしたのである。


 ただでさえ、相手を恐慌に陥れる竜の咆哮が響いている中で、それが何度も反響したとなれば混乱状態になっても不思議ではない。

 そんな混乱に陥っている怪物軍に対して、セレスティーナは新たな手段をとる。


「それでは、本当にいいんですね?そちらの魔力をお借りしても?」


 セレスティーナは自らの竜骨杖にティフォーネの鱗を装備している。

 これより、ティフォーネの体内に存在する膨大な魔力を少しだけ借り受けて広大な範囲をカバーする大魔術を使おうというのである。


「構いません。その程度の魔力なら指を動かす程度にしかなりません。

 私には生け捕りとか面倒くさいことできずに全て吹き飛ばしてしまうので、面倒くさいことは全てそちらにお任せします。」


「よっし行きますよ。超拡大版『眠りの雲(スリープクラウド)』!!」


ティフォーネの力を借りた眠りの雲は、怪物軍の先陣や人質たちを巻き込んで彼ら彼女たちをたちまち睡眠へといざなう。

その範囲は広大であり、人間の盾を巻き込んで、女性を鎧代わりにしている怪物たちも次々と眠らせていく。


「続けて『眠りの雲』!『麻痺の雲』!『麻痺の雲』!!」


 超拡大版の眠りの雲と麻痺の雲は、怪物軍の前方、人質を取っている先陣に次々と叩き込まれていく。

 それを吸い込んでしまった怪物軍も人質たちも例外なく睡眠や麻痺状態へと陥っていく。いきなりバタバタと倒れていく怪物たちや人質たちを見て、混乱に陥っている怪物軍ではあるが、そこに間髪入れず、新しい方法が襲い掛かる。


「魔術師隊前へ!『閃光』ッ!!『閃光』ッ!!」


そして、次に魔術師たちが混乱状態や睡眠、麻痺に陥っている彼らに対して、閃光の呪文を次々と叩き込んでさらに状況を混乱させていく。

すべては、怪物軍に人間の盾を有効利用させないようにするための罠である。


「―――総員突撃!!女性たちを救出せよ!怪物どもを根切りにせよ!!」


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