第285話 人間の盾

 その後何度も行われた散発的な怪物たちの奇襲も、地形を知り尽くしている地元住民たちの支持を取り付けた竜皇軍には損害を与えられなかった。

 軍の特殊部隊などならともかく、統制を取るのが難しい怪物たちの軍勢が地元住民の目を逃れることは難しい。

 解放されて食事を与えられた村人は、飢えから助けてくれた竜皇軍の味方となり、何のためらいもなく敵を見つければ竜皇軍へと報告を行っていった。

 もうすでに竜皇軍は飢えに苦しむ村々からの救世軍としての噂が広まりつつあった。

 それに痺れを切らしたのは、神聖帝国だった。

 彼らは、ついに禁断の非人道的手段を取る怪物軍を動かそうというのだ。


「グフフフ。おい!人間のメスどもを出すでブ!!」


 そう叫ぶのは人間と豚が混じったような存在、つまりオークである。

彼らは、馬車から次々と裸や布切れを巻き付けただけの、大量の女性たちを引きずり出す。

すすり泣く彼女たちを見ながら、オークたちはにやり、と嫌らしい笑みを浮かべる


「グフフフ。こいつらをトロールやオーガたちの体に縛り付けるでブ。

 こうすればメスどもの人間鎧の出来上がりでブ。

 人間というのはメスどもを盾にすれば手出しできない愚か物どもでブ。

 どんだけメスどもに弱いのか笑っちゃうでブ!!」


 そのオークの言葉に、一斉にオークやオーガたちは醜い哄笑を上げる。

 人間の女性たちを盾にすれば、何故か知らないが人間どもは弓矢攻撃などを仕掛けてこない。特に、女性を体に巻き付けた人間鎧は近接戦闘でも十分に効果的である、と知れ渡っている。

 あとはその人間を自分の力でボコればいい。

その非人道的な手段を取れるからこそ、彼らは怪物なのだ。


女性たちは必死に抵抗するがそれも無意味で、次々とオーガや、トロールの体の前面に縛り付けられていく。そして、さらに女性たちを前面に立たせて、鞭を打ちながら無理矢理進めていく。

こうすれば、相手が攻撃魔術や、弓矢を仕掛けてこない、と彼らは経験上知りつくしているのだ。そうして、準備が整った彼らは前進を開始した。

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