第261話 サマエル復活の下準備
―――場所は変わって神聖帝国。
相変わらず血と快楽と腐敗の地獄で上層部は狂ったように楽しみ、民の重税を強いていた。
飽きる事のない地獄の快楽。人間が獣になっている様を、元は至高神の神殿(今は穢され切っていて見る影もない)ではワインを口にしながら楽しんでいた。
いつ次は自分がサマエルかエイシェト・ゼヌニムの生贄になるかわからないのだ。
それならば、死の直前まで快楽にふけっていた方がはるかに幸せである。
そんな彼女の元に、一人の人間が近寄ってきて耳打ちをする。
「?魔導帝国の残党がこちらに流れ込んできた?構いませんわ。全てサマエル様への生贄に捧げなさい。あの場で死んだ方が遥かにマシだったという徹底的な苦痛を与えて差し上げなさい。私は、無能どもは大嫌いですわ。」
「地脈の力が衰えて作物が出来にくくなっている?生贄を捧げなさい。
人柱を我ら悪魔に捧げれば、作物の豊穣を約束すると密やかに農民たちに伝えなさい。そうすれば、役立たずの大地母神の信仰など投げ捨てて、我ら悪魔信仰に彼らも早変わりするでしょう。」
リュフトヒェンの手によって敵国を弱めるために地脈の流れを弱めた策略は、確かに国を弱らせたが、農民たちを悪魔信仰へと駆り立てる事にも繋がっていた。
追い詰められた人間は何にでもすがりつく。役立たずの大地母神信仰を投げ捨てて、悪魔信仰に生贄を捧げる存在も出てきているのだ。
そうなれば、後は加速度的にモラルは低くなり、モラルハザードを起こす。
自分たちの村以外はどうでもいい、と旅人などを平気で生贄に捧げるだろう。
そういった村や農民たちは、悪魔たちにとって好ましいものだった。
それだけ言うと、ゼヌニムは異空間に存在する異界大空洞へと転移する。
そこでは、奴隷として他国で買われた者たち、この国のスラムなどで暮らしていた者たちなどが様々な拷問によって苦しみ、血を流して、巨大な全長10キロメルーの肉塊へとそれらの血と悲鳴を流し込んでいる。
そのせいか、元はエキドナの培養細胞だった肉塊に、ボコボコと無数の人の苦悶する表情が浮かび上がっているのだ。
その苦悶の顔から憎悪のような魔術の詠唱が次々と木魂する。
これは呪文を詠唱するための生体魔術装置にすぎないのだ。
魔神龍サマエルが降臨するにふさわしくなってきたその極めて巨大な蠢く肉塊を見て、ゼヌニムはにんまりと微笑む。
「順調に成熟しているようですわね。竜の肉体、人の憎悪と苦悶の宿った大量の血、そして我ら悪魔の力の宿ったこの肉塊ならば、サマエル様を降臨させるのにふさわしい。後はふさわしい星辰の日。その日ならば、サマエル様を降臨させることも可能なはず。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます