第164話 これで美味しい料理食べ放題じゃ!
さて、その一方、アーテル領では仮の拠点をドワーフたちに立ててもらったアーテルが、腕組みをしながら哄笑していた。
「わーっはっは!ついに妾の領地にそれなりの料理人を招く事ができたぞ!何人か妾の専属として雇って美味しい物食べ放題生活じゃ!」
そう、治安維持にも力を入れてある程度落ち着き、さらに実際に金が出て人も集まってきているという事で、アーテルの街にも料理人たちが流れ着いてきたのである。
当然のことながら、それを逃すアーテルではなかった。
料理人と知るや、瞬時に金で雇って自らの専属料理人として雇ったのである。
「しかし、アーテル様。いくら料理人を雇おうと、食材がなければどうしようもありません。そこのところは大丈夫ですか?」
普通の人間と異なり、竜は極めて大食であり、それは人間形態であっても変わりはない。通常の人間と同じに考えた量では、到底竜族にとっては足りない。
そして、それは食料備蓄の面でも同じである。
いくら料理人がいようと、大量の食糧備蓄がなければアーテルは満足できない。
だが、それをアーテルはふてぶてしい笑いで跳ね返した。
「ふっふっふ。きちんとその辺は計算に入れておるぞ?まず、リザードマンたちと契約して、妾の所に大量の魚を仕入れるようにしておる。さらにハイエルフたちとも契約して、イノシシやら鹿やら野生の動物も仕入れはばっちりじゃ。開墾も行って畑も作りつつあるしのう。(食料の面では)勝ったなわはは!」
なぜこういう行動力を普段でも発揮しないのか、そう思いながらアリアは思わずジト目でアーテルを見てしまうが、アーテルは気にせずわっはっは、と哄笑を上げる。
「ふっふっふ。しかも、妾たちは塩を格安で手に入れる手段をもっておる!
そう火山に存在する塩じゃ!あれを切り出して食用にすれば!リュフトヒェンにも頭を下げずに安い塩が手に入るというものじゃ!」
確かに、火山の麓には、地中の鉱物を含んだ塩水がマグマの熱により熱せられ、地表に噴出することによりできあがった極彩色の景色が広がっている。
元は塩水だった塩は自然乾燥して、他の鉱物や硫黄、アンモニアなどと共に沈殿して茶色い大地の上に黄色やオレンジ、緑に青に白と様々な色合いを見せている。
そこから塩自体は採取することはできるが……アリアは渋い表情を示す。
「いえ、アーテル様、あれは様々な有毒な物質が混じった塩ですので、到底食用に適する安全な塩とは言えません。やはり比較的安全なリュフトヒェン様の岩塩が一番かと。」
「納得いかぬ!なんでせっかく宝の山があるのにそれを放置して高い塩を買わねばならんのだ!ええーい、何とか安全な塩に加工する技術か何か研究するがいい!」
正直、大人しく安全な塩を買った方がいいのでは?と思いつつも、アリアは大人しく頷いた。これでダメだと分かったら、ぶちぶち言いながらもリュフトヒェンの塩を購入するのだろう。
実際問題、リュフトヒェンの岩塩は非常に高いという訳ではなく、格安で良心的な価格である。
塩は人間にとって必需品であり、なくてはならない物だ。
そのため、中国などでは財政が苦しくなると塩の専売を行い、それによって財政をまかっていたが、それに耐えかねて大規模な反乱が起こった事もある。
それに比べ、特に専売制ではなく、きちんと安い価格で販売しているリュフトヒェンの会社は極めて良心的といえた。
「はー、とりあえず地道にやっていくしかないのぅ。そろそろ税収らしいが税なんて妾払いたくなーい。とはいえ、あやつらには世話になっておるから仕方ないか…。」
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