第147話 合体複合属性大魔術
《相手の弱点をつくのは基本中の基本!光に弱いならそれを付くまでじゃ!》
そう言いながら、アーテルは、魔術で光弾を作成し、それを次々とニーズボッグ分体へと撃ち込んでいく。
目映い光を放つだけの光弾を放つ魔術であり、殺傷能力はさほどではない。
元々、ダークドラゴンである彼女は、光系の魔術は不得手なのだ。
だが、その光弾はニーズホッグ分体の傍を通っていくだけでも、彼は悲鳴を上げる。
太陽の光ですら目を焼かれるほど光に弱いのに、それを上回る光を浴びせられれば、それは退化した眼球を焼き尽くす痛みになる。
『ガァアアアア!!』
それに耐えかねたニーズホッグ分体は、ついに己の眼球を己の手で潰してしまう。
こんな劣化した痛みを与えるだけの役立たずの眼球なら、無いほうがマシという考えなのだろう。
目を潰した彼は、超音波を放った超音波視覚でリュフトヒェンたちの方向へと飛翔していく。だが、その機動の鋭さは、大ダメージを背負ったその体では明らかに鈍っていた。
治癒魔術を使って背中の剥がされた皮膚と鱗を治療している状況では、もたもたしているとこのまま、傷を癒されて元に戻ってしまう。
何としてもここで決着をつける必要があるのだ。
《よし!協力して合体魔術を仕掛けるぞ!妾が奴の周囲を円状に飛行する!
貴様は五芒星を描くように飛行しろ!》
《了解ッ!!》
アーテルはぐるり、とニーズホッグ分体の周囲に大きな円を描く機動を取りながら、ニーズホッグ分体を空中の円から逃さないように、周囲に旋回しながら魔術による攻撃を仕掛けていく。
その後でリュフトヒェンは真横、斜めと直線を描いて機動を行い、ニーズホッグ分体を中心にする巨大な五芒星を空中に描く。
そして、その空中に描かれた五芒星を起点として、アーテルとリュフトヒェンは協力して、多大な魔力による大魔術の起動式を作り上げ、大魔術を発動させる。
シュタイフェ・ブリーゼ・シュラーク!!
リュフトヒェンとアーテルのその詠唱と共に、五芒星内部の空間中に猛烈なソニックウェーブと真空刃、そして強力な雷撃、そして漆黒の魔力レーザーが荒れ狂い、五芒星内部に存在する敵を切り刻み、雷撃で焼き尽くす。
風の大魔術と雷と純粋な魔力との大魔術との複合魔術。
アーテルとリュフトヒェンの合体同時詠唱魔術によって、魔術をはじき返す鱗を失ったニーズホッグ分体の肉体は大ダメージを負っていった。
特に、鱗を失った背中と弱点である鱗のない腹の部分に、次々と雷撃と魔力レーザーが突き刺さり肉体を焼き尽くし、体液を蒸発させ、真空刃が肉体を切り裂く。
眼球を失った顔面にも雷撃が流れ込んできて、彼の肉体は完全に焼き尽くされる。
体中のあちこちから黒い煙を吐き出して、ニーズホッグ分体は地面へと落下していった。
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