第127話 残骸の有効活用とドラゴンスケイル
エレンスゲを見事撃退したリュフトヒェンとアーテルだったが、それだけでは終わらなかった。
地面に墜落したエレンスゲの肉体をできる限り回収するべく、速度を落として落ちた近辺を探索を行い、墜落したエレンスゲの残骸を発見する。
『うわぁ、墜落しても粉砕されずにほとんど原型を留めているとは……。
さすが腐っても竜族。頑丈じゃな。』
墜落して最悪粉々に粉砕したグロ映像になるかと思っていたが、意外なほど原型が残った形で墜落しているのを見て、アーテルは驚いた。
竜族の肉体の強さと最後の悪あがきに魔力噴射を行っていたのかもしれないが、それはどうでもいいことだ。
森の中に墜落して、煙を上げているエレンスゲの残骸に対して、貴重な素材が腐敗しないように、冷凍魔術や保存魔術、腐敗防止魔術でガチガチに魔術防御を行った後、リュフトヒェンは両手両足を掴んで、魔術によって重量を軽減して、よいしょ、と持ち上げて何とか飛行を行う。
竜の遺体というのは極めて高価な魔術的素材となる。
骨はセレスティーナが手にしている魔術杖になるし、牙は竜牙兵、肉体も高度な魔術的素材になるので、魔術師ならば喉から手が出るほど欲しい素材である。
そして、何よりその体に流れている竜の血は、少量でもポーション用の最高の原料となる。リュフトヒェン自身もちょくちょく外貨を稼ぐポーション用に、自分の血をセレスティーナたちに提供しているほどである。
『よし、アーテルは抜け殻の方を回収してきて。鱗も魔術か何かでできる限り回収してくれると嬉しい。』
道も何もない野生の原生林の中に、回収部隊を向けるのは難しい。
となれば、空を飛べる自分たちがエレンスゲの肉体を回収するのが一番である。
アーテルもぶちぶち文句を言いつつも、抜け殻や飛び散った鱗などをできる限り回収を行っていった。
そのまま、リュフトヒェンたちは疲れた体を押して自らの開拓村へと戻っていく。無事に帰還してきたリュフトヒェンを見て、セレスティーナたちはほっとした表情で彼らを出迎える。
「ご主人様!ご無事で……。何事もなく帰還していただいて安心しました。」
『ただいまー。エレンスゲの残骸も回収してきたよ。
これはそちらに任せるから、好きなように魔術的素材にしてくれて構わないから。
抜け殻の鱗とかでドラゴンスケイルとか作って辺境拍に渡しておいたらどうかな?
彼女も喜ぶだろうし。』
先ほども言ったように、竜の肉体は極めて高価な素材であり、その鱗も強靭であり通常の金属の鎧を遥かに上回る。
その鱗によって作られたドラゴンスケイルは、金を出しても購入できるような物ではない。それを渡しておけば辺境拍も多いに喜ぶだろう。
『あ、そうだ。余った鱗でまだドラゴンスケイルが作れるんなら、君がもらっちゃっていいよ。苦労ばかりかけているから、これぐらいはしないと。』
「ご、ご主人様からまたご褒美がいただけるのですか!?
ありがとうございます!」
やったやった♪と飛び上がって喜んでいるセレスティーナは、リュフトヒェンから見ても非常に可愛らしい。
色々苦労かけてるし、もっと色々贈り物や気を使ってあげないとなぁ、と思いながらも、小型化したリュフトヒェンは、エレンスゲの残骸を見て回ってチェックする。
『ふむ、まだ血液は残っているから血抜きしておこうか。
……もったいない。これだけの血液があれば大量のポーションが作れるのになぁ。
流石にエキドナ因子が混じってる血をポーションにするのはなぁ……。』
エキドナの恐ろしさと再生能力は、実際に戦った彼が一番恐ろしさを知っている。
ポーション化すればあの再生能力を多少でも得られる可能性もあるが……エキドナ因子を持った人間を大量に増やすなどぞっとしない。
ある日因子が暴走してエキドナ化した異形の人間が溢れかえるなど、もう責任が取れない状況である。
そんな血液をポーションにするなど……。と考えているリュフトヒェンに対して、セレスティーナは声をかけてくる。
「もうこれでポーション作ってしまいましょうか?エレンスゲの血液のエキドナの因子は、薄めて濾過すれば問題ないはずです。……多分。」
『多分!?』
その驚愕の声を上げるリュフトヒェンに対して、セレスティーナは眉をひそめて言葉を返す。
「いや流石に完全に因子の濾過とか難しいですし……。まあ、元々竜の血を使ったポーションはかなり薄めて使用するので、濾過して薄めた状態ならエキドナの因子もさほど人間に悪影響を与えないのでは。さすがに大量に飲んだ場合や長期間の影響は何とも言えませんが。」
セレスティーナの言葉に、小型化したリュフトヒェンはしっぽを左右に振って否定の意思を示して言葉を放つ。
『よし、中止中止。ポーションじゃなくて他の魔術的実験に役立ててね。
そういうのでなければ好きに使っていいから。』
それを見て、セレスティーナはそれくらい良くない?という顔だったが、この程度でリュフトヒェンの言う事に逆らうでもなく、分かりましたと素直に頷いた。
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