第105話 毒?無効ですが何か?
『……という訳で今回のクーデターもどきを企んだのはウチの一部の勢力ね。全く申し訳ないわ。こいつらは切り捨ててくれて構わないわ。アタシも別に庇う気はないし。』
苦々しい気持ちを声に秘めながら、シャルロッテとの直通通信である鱗でリュフトヒェンはシャルロッテと会話している。
どうも今回のやり方があからさまに待ち伏せを食らって気になったので、直通通信を行ってみればこの状況である。
今回はリュフトヒェンたちの目を引き付けて、王位継承権を持つジェーン・ドゥをさらう予定であったのだろうが、見事に彼らの目論見は阻止された。
ならば、こちらを騙し討ちして葬った後で戦乱を起こすという半ば暴走じみたやり方を行うだろう。
『多分、次は自分の街に招き寄せて、毒で兵士たちやアンタたち纏めて殺すというなりふり構わない手段を取ってくるんじゃないかしら?
もう向こうもなりふり構ってられないだろうしね。何かいい手段ないの?』
『ええと……。あっ、あったあった。竜語魔術に「あらゆる毒を無効化する魔術」というのが存在するわ。これなら我とセレスティーナは大丈夫だろう。
これを神官戦士たちにかけていけば、毒の問題は心配ないと思う。』
ティフォーネとその御子リュフトヒェンに仕える神官戦士である彼らは、そのためにリュフトヒェンたち竜との魔術的繋がりが強く、彼がかける竜語魔術の強化がかけやすいという利点がある。
何十人にも魔術をかけていくのは、流石の彼でも疲労が溜まっていくが、配下の神官戦士ならばそれが遥かに軽減されて多人数でも魔術がかけやすくなるのだ。
(マンティコアの毒針に当たっていたらこれで解毒するつもりだったが、実際は毒にはならなかったので、呪文をかけずにすんだ)
『了解。それなら、通常の兵士や一般人たちを別の安全な街に避難させて、アンタたちだけでクーデターを企んでいる所に乗り込んで、毒を持って安心している所を制圧するという流れでいいんじゃない?』
うーん、確かにそれだけ尻尾を出してくれた方がありがたいか。
仕方ないなぁ……。と思いながらも、リュフトヒェンは神官戦士とセレスティーナたちに解毒魔術をかけていく。
これは一日程度の持続時間があり、その間に毒を食らっても全て無効化する能力を秘めている。念のため、解毒のポーションをあるったけ集めて服用し、他にも特殊能力を秘めた先祖帰りの妖精騎士たちも連れて、他の兵士や一般人たちを安全な街に避難された後、クーデター派の領主の街へとやってきた。
「ははは!これはようこそ竜皇様!宴会の準備は整えてありますぞ!ささ、こちらへ!」
わざとらしい領主の態度。そして戒厳令と言わんばかりに一般市民たちは家に籠り、ガチガチのフル装備の兵士たちがリュフトヒェンたちを出迎える。
どこからどう見てもわざとらしい事この上ない。
そしてわざとらしい会食も終わって、あてがわれた客室に入っていったが、当然のようにリュフトヒェンとセレスティーナは同じ部屋であり、彼女の魔術通信によって神官戦士や妖精騎士たちと位置や場所の確認を行っている。
通常、直通通信である竜の鱗ならともかく、通常の魔術通信は敵魔術師からのジャミング妨害や、盗聴などされる可能性も高いのだが、それが全く行われていない(そもそも魔術師の反応が感じられない)という事は、魔術師が存在しない(人工魔術師ですらいない)らしい。
ここまで来たら、もう神聖帝国にすら見放されているであるのに、当の本人ばかりが気づいていないのだろう。
そして深夜、大量の毒を持って油断しきった兵士たちは、念の為完全武装で武器を持ったままリュフトヒェンとセレスティーナの部屋へとこっそりと取り込んでくる。
もう死んでいればよし、死んでいなければ、首を切り落として晒しものにするためである。
「しかし、あの毒本当に効くのか……?相手は竜だぞ……?」
「神聖帝国から与えられた特別の毒だ。死ぬに決まっている。死ななくても、首を切り落とせば竜でも死ぬさ。」
うんそうだね。それが通じていればね。
戦闘態勢を整えているセレスティーナと、ベッドに座って扉に対してブレス用の魔力を秘めていたリュフトヒェンは、こう叫んだ。
『こんばんわ死ね!ドラゴンブレス!(威力小)』
彼の口から離れた雷撃の吐息(威力小)によって、ドアの前に立っていた兵士たちはまともに雷撃を食らい、一瞬にして体液を沸騰させる。
同時にドアも破壊されたが、そこから一気に攻め込んでくるかと思いきや、彼らは一目散に逃げだしていく。
どうやら、この領地の兵士の士気自体も相当低いらしい。
「どうしましょうかご主人様。このままご主人様が巨体になってこの地を荒らせば反感を買って統治が難しくなるかと……。」
『よし、領主を探し出して捕えた物にはこの領地を与える、と通達しておいて。
これなら皆やる気出すでしょ。』
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