第84話 開拓村の霊地化

 ともかく、温泉で休息を取って体を癒し、魔力もそれなりに回復したリュフトヒェンたちは、彼の本拠地である山岳要塞へと帰還していた。


 それは彼が作り上げた開拓村や村人たちが対エキドナ戦で被害が出ていないか確認するためである。

 いくら魔術結界が張り巡らされた開拓村といえど、エキドナ戦の余波を食らったり、エキドナの残骸が降って直撃してしまってはどうしようもない。

 それに、山岳要塞に籠っている村人たちもいつまで水や食料がもつか分からない。

 早く行ってやって解放したいというのが本音だった。

(欲を言えば食事をとって魔力回復を行いたかったが、食料の備蓄がどうなっているが不安なため、とりあえず様子見の心境である)


『皆お待たせー。もう外に出てもいいよー。村に異変がないかチェックしておいてねー。』


 山岳要塞に入ってきたそのリュフトヒェンの言葉に、ほっとしながらも皆外に出てきて村に帰っていく。

 村も村人も特に被害が出ていない事に、リュフトヒェンはほっとする。

 さらに、いつリュフトヒェンたちが帰ってきてもいいように、予備の食糧の保存などもきちんと行ってくれていたらしい。

 エキドナを倒した簡単な祝賀会も兼ねて、リュフトヒェンたちの食事を用意してくれようとする村人たちの好意に甘えて、彼らは少しだけ村に留まる事にした。


「ご主人様~。ご無事でしたか~。」


 そして、そんな中で魔術砲撃として動員された魔術師部隊を率いたセレスティーナたちも村へと帰還してくる。

 あちらこちらにまだ存在しているエキドナの残骸の処分なども行いたかったが、彼女も魔術砲撃の連射により摩耗しているのも事実だ。

 それならば、安全な地帯で合流したほうがいい、と踏んだのである。


『うん、何とかね。そっちもご苦労様。ちょっと村で休んでいこう。とりあえず魔力を回復させないと、旧帝都に帰る前に墜落とか勘弁してほしいし。

 それで、そっちの話を聞かせてほしいんだけど……。』


「はい、ご主人様。実は……。」


 そして、セレスティーナから事情を聞いたリュフトヒェンは思わず頭を抱えた。

 どこからどう見てもママンじゃねーか。なにやってるんだあの人……。

 しかし、絶体絶命のピンチを救われたのも事実だし、ちょくちょく力を貸してくれるのも事実なので、実際彼女には大きく助けられている。


「それでご主人様、私の竜骨杖のことですが……。」


『ああ、ママン、借りるとは言ったけど返すとは言ってなかったでしょ?

 他次元封印結界の要になった以上、そのままエキドナの霊体と一緒に他次元行きだろうし、もう取り戻せないんじゃないんかなぁ。』


 予想はしていたが、それを聞いた瞬間、セレスティーナはそんなぁ、と言いながらへなへなと座り込んでしまう。

 あの杖はリュフトヒェンから直々にプレゼントされた物で、彼女にとっては大事なものだったのだ。仕方ないとはいえ、それを無くした彼女のメンタルダメージは大きかった。


『ま、まぁまぁ。まだ竜の骨はあったから、ドワーフに頼んで新しい竜骨杖を作ってプレゼントするから。それで機嫌を直して。』


 確かにリュフトヒェンからのプレゼントを無くしたのは、セレスティーナにとってはかなりのメンタルダメージだったが、新しいプレゼントを贈られると聞いて、何とか気を取り直しながら地面から立ち上がる。


「……そういえばご主人様。この近辺ですが、地脈を各地に送る重要拠点という事で、霊的に重要な拠点、霊地へと変貌しているようです。

これだけ芳醇な霊地なら、ポーション用の薬草や魔術に使用する霊的な植物……マンドラゴラなども質のいいものが大量に育つことができるでしょう。

外貨を稼ぐためにも、農作物だけでなく、そういったものも大量に育てることをお勧めします。」


マジで?という顔になるリュフトヒェン。

ポーションによって外貨を稼ごうとしている彼にとってこれほどありがたいことはない。

リュフトヒェンたちの食べるものを作り、軽い祝賀会状態になっている村民に対して、彼はさっそく亜術死たちがら教えられた薬草の栽培などを指示していた。











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