第78話 クラウ・ソラス、放て!
神聖帝国の方はシャルロッテたちに任せて、リュフトヒェンとアーテルは、エキドナ迎撃作戦のために再度大辺境の上空を飛行していた。
基本的にはリュフトヒェンとアーテル、そしてクラウ・ソラスによる攻撃が主体となるが、地面に落ちた肉塊の処分や着弾観測などを行うため、急遽、魔術師部隊を率いたセレスティーナたちも大辺境へと向かっている。
彼ら魔術師たちの使い魔たちが観測機となって、使い魔たちと視覚共有を行いながら、その視覚をクラウ・ソラスの技術者たちへと転送していくのだ。
《そういえば、一応封印術式の複製をそちらに転送しておこう。
妾とお主の二重封印ならば、多少は封印できる可能性も上がるはずじゃ。》
大辺境へと飛行しながら、アーテルはリュフトヒェンに魔術通信に乗せて、自分の封印術式も複製してこちらに送ってくる。
……正直、あまり高度とはいいがたい封印術式ではあるが、そもそも持っていないリュフトヒェンよりはマシである。
見下ろしているエキドナの塊は、リュフトヒェンたちが吹き飛ばした分もすっかり再生しており、すでに50メルーもの巨体に膨れ上がっている。
あれでもまだまだ再生途中であり、完全復活すれば1キロメルーもの巨体を持つ空中要塞へと変貌してしまう。
そうなれば最早リュフトヒェンたちに打つ手は存在しない。今のうちにエキドナを何とかしなければならないのだ。
《一応確認しておくぞ。まずはクラウ・ソラスが可能な限りエキドナの肉体を切り裂く。そして、できる限り肉体を減らして、竜核が現れたら妾たちのブレスで竜核を消滅。そしてそのまま封印術式でエキドナを再封印する。この流れでよいな?》
《了解。でもエキドナが落とし子を吐き出し始めたらどうする?》
《その時は、妾の配下のワイバーンで対抗するしかあるまい。エキドナが落とし子を出していないのも、まだ奴が完全な復活を遂げていない証拠。
何としてもこの一戦でケリをつける必要があるぞ。覚悟を決めろ。》
高高度を飛行している二頭の竜は、微かに見える遥か下に浮かんでいるエキドナを見下ろす。何故高高度なのかというと、まずクラウ・ソラスが攻撃を仕掛ける際に巻き込まれないようにするためである。
しかしまぁ、竜の指揮下で神剣が振るわれるとは、至高神も想定していなかった事態じゃろうな、と呟くアーテルを他所にクラウ・ソラスの下にある制御室では、発射するための最終チェックなどが行われていた。
《観測通信使い魔から視覚共有来ました!各伝達急げ!!》
《方位角固定!出力最大!地脈吸収機能開始!メイン回路、サブ回路共問題なし!》
《エネルギー充電120%!冷却機能最大!神力変換機能異常なし!!》
その作業員たちの声と共に、クラウ・ソラスの本体の刀身が大地の地脈エネルギーを吸い上げ、バチバチと帯電し、刀身自体が光り輝く。
それは地脈を吸収し、神力へと変換しているシークエンスだ。
そして、その力が柄頭の神力石へと流れこみ、神力石も光を放ち、周囲の大気をバチバチと帯電させ、空間自体を歪めていく。
《最終セーフティ解除!!ターゲットロック!!クラウ・ソラス―—―放て!!》
その叫びと共に、帯電して光を蓄積していた神力石が猛烈な光を放ち、そこから放たれた膨大な光の奔流は、轟音を立てながら大気を引き裂き竜皇国の上空を真一文字に切り裂きながら大辺境へと迫り来る。
『———!?』
そして、その光の奔流は、そのままエキドナの肉塊へと叩き込まれる。
声にならない悲鳴。腐肉であるエキドナの肉塊は、再生力は抜群だが、逆に言えば防御力はほとんどない。
クラウ・ソラスの大火力によって、エキドナの肉球のほぼ中心部に大きな穴がぽかん、と空いた形になってしまうが、その優れた再生能力によってみるみるうちに、その穴は腐肉で埋まっていく。
だが、そうはさせじとクラウ・ソラスは第二射を放つ準備を行う。
《冷却装置最大!次弾発射準備!次弾神力装填!———放て!!》
続いての第二射は、エキドナの上を少しかすめただけで外れか?と思いきや、その光の奔流は、斜めに、まるで袈裟切りのようにエキドナの肉体を切り裂いていく。
まるで、熱したナイフでバターを切るように、光の刃はエキドナの腐肉をゆっくりと切り裂いていき、完全に斜めに切り落とす。
腐肉が焼き切り落とされる不快な匂いと、エキドナの空間を震わせる無言の悲鳴。
斜めに切り落とされた肉塊は、大辺境の森内部へと落下し、木々を薙ぎ払いながら地面へと落ちる。そして、その肉片の残骸はボコボコと脈打ち、そこから小型のエキドナの落とし子たちが生まれ出ようとする。
だが、それを黙ってみている訳ではない。
「撃てー!!」
セレスティーナ率いる魔術師部隊は、魔術砲撃を行いその肉片へと遠方から魔力弾を次々と叩き込む。落とし子が生まれる前に肉片を完全に粉砕する作戦である。
空を飛ぶ鳥の使い魔からの観測により、位置を観測されて粉々に砕かれる肉片。
それを他所に、クラウ・ソラスの第三射が放たれる。
今度は右から左への水平の攻撃。その光刃は、エキドナの球状の肉体の下部を切り落とし、再び無言の悲鳴が上がる。
空間と大気を引き裂き、エキドナの肉体を切り裂いていくその刃は、まさしく神剣、光の剣そのものだった。
だが、エキドナもただでやられている訳ではない。
傷口を再生させつつ、エキドナの肉体に変化が起こっていた。
・エースコ〇バット7の、4で散々苦しめられたあのストーンヘンジが、こちらの切り札になる展開とか大好きなので書けて良かったです。むふー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます