第25話 道を作ります!(爆撃で)
とりあえず食糧危機という問題を解決するために、あれやこれや奔走しているリュフトヒェンだったが、そこには大きな問題が立ちふさがりつつあった。
そう、それは道、道路である。
『しかしともあれ……。食料が近くの村に来てもそこからウチの村にまで輸送できる道がない。馬車が通れるような道を作らないと、大量の食糧は輸送できないからなぁ……。』
この世界の大量の食料輸送や運搬となれば、当然馬車による運搬が基本となる。
だが、当然の事ながら、馬車はある程度整った道がないと走る事はできない。
ましてや、獣道すらない大辺境の内部にあるリュフトヒェンの村にまで馬車を輸送させるなど到底無理がある。
しかし、未開の地に道路を作るなど生半可ではない努力と金が必要である。
まずは森を一直線に切り開いて、切り株などを取り除いた後で馬車が通れる道を作り上げなければならない。それを考えると今から頭が痛くなってくるが、そんな彼に対してアーテルは至極あっさりと答えを出した。
『何じゃ。そんなの簡単じゃろう?空から一直線に地上に対して魔術爆撃を行えばよかろう。とりあえず一直線に吹き飛ばした後で、ゴーレムやら何やら使って残骸をどかして道を作ればいいじゃろ。』
確かにアーテルの意見は極めて乱暴ではあるが、有益な意見である。
リュフトヒェンの村から近くの村までは鬱蒼とした森が障壁となっており、獣道すら通っていない。
だが、問題はその吹き飛ばす下に何らかの存在(エルフの集落)などが存在していないかどうかである。
もし、間違って吹き飛ばしたら大問題になりかねない。
『うーん……。それじゃウチの村のエルフを斥候に出して進路に何もないか確認しておこう。何もなければそれで結構という事で。』
実質隠れ里であるこの村が探知される可能性もあるが、それよりもこの村に他から輸入した食料を運び込めないという事の方が大きな問題である。
『何じゃ。妾がやるのか?まあそれは構わんが……。その代わりウチの村に食料が来たらきちんと妾に美味しい物を食べさせるのじゃぞ!!じゃないと妾拗ねるからな!!』
まずは村人のエルフが下見に出した後、爆撃予定地点に何もない事を確認して、リュフトヒェンが上空を飛行し、魔力で一直線に引いてそれを目印にする。
そして、その上空をアーテルが飛行して次々と魔術爆撃を行っていく。
周囲の魔力塊から地上に向かって射出される魔力レーザーによって、森の木々は次々と爆発と共に吹き飛ばされていく。
その爆発と轟音と飛び散る木々などで、一斉に動物や鳥などが逃げていくが、彼女たちにとってはこの程度の自然破壊やら何やら、別段どうでもいい事である。
その爆撃を安全圏の村で遠目で見ながら、セレスティーナはおずおずとリュフトヒェンに問いかける。
「あの……。ご主人様。あの真下に何もない事は分かりましたが、あれだけ派手に爆撃していると、爆音や何やらに恐れを成した怪物たちが暴走したり、逃げ出したりして村に向かう可能性もあるのでは……。」
『……あ。』
そのセレスティーナの言葉と共に、近くの村々に渡したリュフトヒェンの鱗から魔術的な救難信号が鳴り響くのを彼は感じ取った。
『……いやあ、すまなかった。ついうっかり。』
すぐにリュフトヒェンは飛行して近くの村々に駆け付け、大辺境から溢れ出て村々に襲い掛かるゴブリンやオークを次々と雷撃で焼き払う事になった。
空を飛ぶ事によってすぐさま駆けつける事ができたので、村々に被害が出なかったのが不幸中の幸いという奴である。
「竜様、やるのは構わないんですが、そういう事はこちらにもきちんと言っていただかないと……。話を聞いていれば、こちらも対応できますから。」
大辺境外周部の村は、ゴブリンやオークなど怪物が溢れる事を想定して村の防壁はそれなりにしっかりした形になっている。
中に入れてそこから射撃のできるウォーワゴンと木の壁や馬防策、そしてそのさらに全面に作られた簡易的な堀やそこに備えられた逆茂木(さかもぎ)で怪物たちの動きを封じ込め、遠距離から攻撃を仕掛けるのがセオリーである。
あふれ出てくる怪物たちと接近戦を行うのは、最後の手段である。
その防御陣地に引っかかっている怪物たちを、リュフトヒェンは空からの雷撃の範囲攻撃で次々と焼き払っていったのである。
『いやぁメンゴメンゴ。怪物たちがこちらに襲い掛かってくるとは思わなかったわ。
他の村に襲い掛かってきた奴らも全部焼き払っておいたから。
でもほら、これで我が君たちを助けるってことは理解してくれたでしょ?
こちらが切羽詰まっていない限り、何かあったら助けに来るから。』
この村や大辺境外周部の村は、リュフトヒェンにとって人間社会との窓口となる重要な拠点である。
まだ開拓したばかりで農作物すら取る事のできない彼の村において、その窓口である近隣の村々は生命線にも等しい。
それらの村の信頼を獲得し、人類社会から様々な品物を輸入するためにも、彼らの信頼を得る事は極めて重要なのである。
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