なぜこの小説がここまで人の共感を呼び起こすのか?
それは、カップ麺という食物が人を誘惑し悩ませて止まない悪魔的魅力を持っているからだ。なんちゅうもんを作ってくれたんや、安藤百福……!
実際、カップ麺は夜食とするのに丁度良すぎるポジションにあるのだ。お湯を入れて三分前後待てばすぐに味わえる炭水化物と脂のコンビネーション。
頻繁に新製品が発売されるので、「一度食べてみるか」と買い物籠に気軽に入れてしまいがち。
フライした麺は生麺と比較して軽いので「これくらいなら入る」と軽く考えてしまう。
そして、賞味期限は半年程度と意外に短いので「今食べておかないと捨てることになる」と自分に言い訳しやすい。
ことほど左様に、どんな強固な意志を持ってしても抗うことが難しい、悪魔の食物なのだ。
だが、後の事さえ考えなければ、これを食することは現代人に与えられたこたえられない悦楽とも言える。
明日のことなど忘れよう。ただ今は、真夜中のささやかな宴を無心で味わうのだ。