第69話、広まる噂
アキューレが俺たちのチームに入り、いろいろと変わったことがある。
まず、俺たちのチームの評判。
アキューレを連れ、学園内を歩いていると。
「あの!! チーム『エンシェント』の皆さんですよね……今、チームメンバーって募集とか」
「してないしてない。悪いけどチームメンバー募集する気はないわ」
「そ、そうですか」
こんな風に、声をかけられるようになった。
ちなみに、チーム『エンシェント』というのはアピアが付けてくれた。冒険者チーム『エンシェント』……いいね、すごくいい。
学園内を歩くだけで、ヒソヒソ噂される。
「あれ、大罪魔獣を倒したチームだってよ」「マジでか?」
「すげぇ……」「エルフの姫、可愛いじゃん」「な、チーム入れないか?」
遠巻きにヒソヒソ噂されている。
大罪魔獣。伝説の魔獣の一体を討伐したというのは、相当な手柄だ。近く、クロスガルド国王陛下からも表彰されるのではないか、とアピアも言う。
それを言うなら、学園ダンジョンの地下にいたマルコシアスもなんだけど……まぁ、あれは俺が全部食べちゃったから検証しようがない。
今回は、素材を回収してから喰ったから証拠は残った。さらにギガントマキアの構成員を倒したことも大きかった。ギガントマキアの構成員は全員がA級レベルの冒険者で構成されているらしく、倒すのが大変なのだとか。
一番注目されているのは、俺だった。
「リュウキ、めちゃくちゃ注目されてるよな」
「だなぁ……あんま目立ちたくないな」
「あはは。リュウキくんらしいね」
レノ、サリオが笑う。
ちなみに、今はショッピングモールでお昼を食べた後だ。これから各部門ごとの授業になる。レイとアピアはAクラス教室に戻った。
俺は、アキューレに聞いてみた。
「アキューレ。これからどうする? 部門ごとの授業だけど」
「リュウキと一緒でいい」
「あのな……せっかくいろいろな部門があるんだから、興味があるやつを選べよ」
と、サリオがアキューレに部門のリストを渡す。
アキューレはリストをジッと眺め、長い耳をピコピコ動かした。
「歴史部門、おもしろそう。クロスガルドの歴史、わたし知らない」
「お、歴史部門は俺も取ってるぞ」
「あと……『風魔法部門』。わたし、風魔法得意。あと『弓技部門』もいいなぁ」
「なんだ、やりてーことあるじゃん。な、リュウキ、これから歴史部門の授業だろ? アキューレ、連れてったらどうだ?」
というわけで、今日は俺と一緒に歴史部門で授業を受けることにしたアキューレだった。
◇◇◇◇◇◇
午後、俺たちは学園ダンジョンにやってきた。
アキューレは木製の弓を手に、腰には矢筒とナイフを装備。軽装重視なのか、胸当てとマントしか装備していない……防御面で不安がある装備だ。
レイは言う。
「アピアは実家の用事で休みだから、今日はこの五人でダンジョンに入るわよ。リュウキ、変身は最悪一歩手前までしないこと。レノとサリオはいつも通り。アキューレ、あんたは初めてだろうから気を付けて」
「わかった」
「それと、くれぐれもリュウキとレノに矢を当てないように」
「大丈夫。シルフィードが守ってるから」
「……じゃあ、行くわよ」
俺たちはさっそくダンジョンへ。
一度中継地点へ行くと、そこからスタートできるようだ。なので、十一階からのスタートになる。
中継地点では、マルコシアスがいた先へ進む階段が消えていた。なので、今度は安心して先へ進める。
十一階層では、ロックワームが現れた。
「マジか……うぇ、嫌な思い出だぜ」
「ま、いいだろ。やるぞ、レノ」
「おう!!」
俺とレノがロックワームに向かって走り出す。
俺は短剣を両手に、レノは腕力強化した拳でロックワームの頭を潰した。
何匹か倒していると、ビッグロックワームという通常のロックワームより大きな個体が現れた。
「援護する」
「え、あんた」
すると、レイを無視しアキューレが矢を三本矢筒から抜き、三本まとめて弓に番える。
俺の後ろに付き、目で合図した……そういうことか。
「援護任せた」
「うん」
俺は『闘気精製』で剣を造り、ビッグロックワームに向かって走り出す。
『シャァァァァッ!! ブガッ!?』
俺に向かって口を開けた瞬間、矢が三本ビッグロックワームの口に突き刺さった。
俺は剣を振り、ビッグロックワームの眼を斬る。
そして、とどめを任せた。
「レノ!!」
「おう!!」
腕力強化したレノがビッグロックワームの頭に飛び乗り、拳を固めて俺が斬った眼の部分に拳を突き刺した。ビッグロックワームは断末魔を上げ、そのまま倒れ絶命した。
レノは体液で汚れた手を振り、カバンから水のボトルを取り出し洗う。
「うーきったねぇ……でも、いい感じに倒せたぜ。アキューレ、ナイスな援護だ!」
「うん、リュウキのおかげ」
「そ、そうか?」
「ほらそこ、魔獣解体して素材手に入れるわよ」
アキューレの援護はかなりのものだ。
中距離役として、これからも活躍してくれるだろう。
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