第55話、依頼

 放課後。

 俺、レイ、レノ、サリオ、アピアの五人はショッピングモールにあるカフェに来た。

 今後の予定を話すためである。


「依頼は、王都で探すわよ」


 レイがそう言うと、レノが挙手。


「討伐依頼!!」

「当然よ」

「え、マジ? なんとなく却下されると思ってたぜ」

「あたしらは全員、戦闘向きのスキルを持ってるからね。採取系依頼はそっち専門の冒険者が受けるでしょうし。とりあえず、ゴブリンでもオークでも、討伐依頼を受けてレベル上げないと」

「討伐かぁ……」

「それに、冒険者等級を上げれば、セカンドスキルを付けることもできるわ。というわけで、さっそく王都のギルドに行くわよ」

「こ、これからですか?」


 アピアが驚く。放課後とはいえ、あと二時間もすれば日が暮れる。

 ここから王都の冒険者ギルドまで徒歩で三十分。寮の門限は夜の七時。あまり時間はない。

 だが、レイは言う。


「門限まで戻ればいいでしょ。それと、せっかくだし夕飯は王都の店でどう? 兄さんからお小遣い送られてきたし、みんなに奢ってあげる」

「マジ!? さっすが、リーダー最高だぜ!!」

「……リーダー?」

「あん? 違うのか? オレはてっきりお前がリーダーかと」

「え……あ、あたしが?」

「……ぼくもそう思ってた」

「俺も」

「私もです。レイちゃん、すごく頼りになるから」

「そ、そういうのはリュウキでしょうが!」

「いや俺、何にも知らんし…………なんか自分で言って悲しいな」

「ってか、あたしらチームなの?」

「「「「え、違うの(か?)(ですか?)?」」」」


 全員揃った。

 俺はてっきり、この五人が冒険者チームってことなのかと。

 レイは赤くなり、そっぽ向く。


「……じゃああたしがリーダーで。チーム名は?」

「俺の名前はダメだぞ」

「あれは仮だから。あはは、リュウキくん気にしてた?」


 サリオをチラッと見ると、苦笑いした。

 そして、レノが挙手。


「チーム『バーニングファイヤー』……これで決ま「却下」なんでだよ!!」

「あの~……早く町に行かないと、暗くなっちゃいますよ?」


 アピアの一言でチーム名は保留。王都へ行くことになった。


 ◇◇◇◇◇


 聖王国クロスガルド、王都セイファート……今更だが、王都の名前セイファートって初めて知った。というか、王都の名前くらい知っておけよ俺……と思う。

 五人で冒険者装備で町を歩き、冒険者ギルドへ。

 アピアが挙手。


「あの、レイちゃん。なんで冒険者の衣装に?」

「舐められるから。学生が制服着てワクワクしながら依頼掲示板覗き込むなんて、ベテラン冒険者からすればいいカモよ。みんな、覚えておいて。冒険者にもクズはいるってことを」

「「「「……」」」」


 過去に何かあったのかな……とは聞けない。

 レイはB級冒険者。きっといろいろあったのだろう。

 冒険者ギルドに到着し、俺は建物を見上げた。


「で、でかいな……」


 冒険者ギルド。

 長方形のデカい箱のような建物だ。大きな正面入口のドアは解放され、依頼人や冒険者が出入りしている。レノ、サリオは特に感想もないようだが、アピアと俺は建物を見上げていた。


「初めて見ました……」

「アピア、王都に住んでるんだろ? 見たことないのか?」

「は、はい。ギルドまでは来たことがなかったので」

「そこの二人、行くわよ」


 レイたちがスタスタ歩きだす。

 レノやサリオはここで冒険者になり、依頼を受けてたんだよな。


「とりあえず、依頼掲示板を見ましょうか。運が良ければ、低ランクの討伐依頼が残ってるかも」


 ギルド内は広かった。

 いくつもあるカウンター、そこで対応しているギルド職員、二階は酒場になっているようで、依頼を終えた冒険者たちが飲み食いし、武勇伝を語っている。

 一階には道具屋や素材買取屋もあるようだ……すごい。


「ふわぁ~……」


 アピアもぽかーんとしていた。

 すると、レノが。


「そこの新人、依頼掲示板はこっちだぜ」

「あ、ああ」

「は、はい」

「ふふ、ぼくらもここに初めて来た時はそんな風に見上げてたなぁ」


 サリオはクスっと笑い、すでに依頼掲示板を覗いているレイの元へ。


「とりあえず……ゴブリン、コボルト、オークの討伐依頼があったわ」

「え、マジで? 豊作じゃん」

「まぁね。運が良かったわ。しかもこれ、全部同じ地域にあるの。一日あれば終わらせられるわね」

「では……受けますか?」

「ええ。アピア、たぶん連戦で体力的にキツイと思うけど」

「大丈夫です! 私、頑張ります!」

「よーし。明日は休みだし、一日かけて魔獣討伐よ!」


 レイは依頼書を三枚ひっぺがし、受付カウンターへ。


「この三つを受けるわ」

「確認します。B級冒険者レイ様ですね。こちら、全てD級依頼となりますが、よろしいですか?」

「ええ。新人の指導も兼ねてるから」


 俺、アピア、サリオはE級、レノはD級だ。

 新人指導ね……間違っちゃいないけど。

 依頼を受け、レイは笑う。


「じゃ、ご飯食べに行くわよ!」


 とりあえず、腹も減ったしいっぱい食うか。

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