第40話、ダンジョンから帰還後

 ダンジョンから帰還後。

 レイ、管理者さんは学園に『危険階層の鎖を取り換えた者がいる』ことを報告しに行った。リーダーとしての仕事だとか何とかで、俺たちはダンジョン入口で解散となった。

 ダンジョンは崩壊しなかった。つまり、あのスキルは秘宝ではなかったのだろう。レイは『ダンジョンの隠し通路かもね』なんて言っていたけどな。

 レノ、サリオは「いろいろあって疲れた」といい部屋へ戻り、アピアもいつの間にか来ていたセバスチャンさんと一緒に「ではまた」と言って帰った。

 俺も、部屋に戻る。

 マルセイはいないので、リンドブルムからもらった宝石に闘気を込める。

 すると、一分ほどでリンドブルムが窓からやってきた。


「リュウキ、呼ん───え?」

「リンドブルム、話があるんだ」

「……パパの匂い、すごく強くなってる」

「え?」

「何かあったの?」

「……ああ、ちょっとな」


 リンドブルムは俺のベッドに飛び込むと、うつ伏せになり足をパタパタさせる。

 俺は、ダンジョンで起きたことを話した。


「そっかー……」

「な、闘気を使い過ぎるとどうなるんだ?」

「わたしの場合は、ドラゴンに戻っちゃう。このヒトの姿は擬態なの。本来はすっごく大きなドラゴンで、闘気を解放すればするほど、ヒトの姿を保つのが難しい。それに、本気で戦うなら、ヒトじゃなくてドラゴンの姿」

「ドラゴン……」

「リュウキは、よくわかんない。ヒトがドラゴンの力を得たなんて初めてだもん。しかも、パパの力」

「みんなが言うには、腕が伸びたりデカくなったりしたらしい」

「たぶん、完全にパパの闘気を解放したわけじゃない。もしパパが本来の力を発揮したら、聖王国クロスガルドの周囲一帯は更地になっちゃうよ」


 サラっと言うリンドブルム。

 いや、怖すぎるだろ。


「今はできる?」

「……たぶん。みんなには言わなかったけど、腕に違和感があるんだ。闘気を一定量解放すれば、両腕が変わるかもしれない」

「やってみて」

「え」

「結界張った。音も漏れない、闘気も魔力も通さない結界。やって」

「…………わかった」


 俺は立ち上がり、闘気を解放する。

 ダンジョンではほんの少しの闘気解放でオーガを圧倒した。

 でも、今は違う。できる限り、目いっぱいの闘気を解放する……すると、俺の腕に鱗が生えた。

 いつもはここで止める。だが。


「もっと」


 リンドブルムがそう言った。

 さらに闘気を解放すると……右腕、左腕に変化が現れる。

 鱗が巨大化し、鎧のようになり左右の腕を包み込む。さらに、目の色が変わり、髪の色も変わった。そして、二本のツノが頭から生えてきた。

 闘気が爆発的に増えた。だが、完全に制御できる。

 まるで、エンシェントドラゴンの闘気を完璧に扱うためだけに、肉体が変化したようだ。


「まるで、パパの力を扱うためだけに、身体が変身したみたい」


 まったく同じことをリンドブルムも考えていた。

 

「リュウキ、制御できる?」

「……ああ。すごく頭が冴えてる」

「何ができそう?」

「『闘気解放』はもちろん、『闘気精製』もできる……」


 俺は、黄金の闘気を右の指先に集中する。

 すると、掌に乗るサイズのエンシェントドラゴンができた。

 金色の置物を見て、リンドブルムは嬉しそうに抱きしめる……何も言ってないけど、もうリンドブルムの物になったようだ。


「右腕は武器。左腕は闘気を大量に吐き出せる……すごいな、完全なバケモノだ」


 闘気を押さえると、身体の変化も元に戻る


「リュウキ、これからはあの姿で戦った方がいい」

「……あのバケモノでか?」

「違う。あれはパパがくれたリュウキの力。自分を否定しちゃダメ。そうだね……『龍人変身ドラゴンライズ』って名付けよっか」

「……わかった。ありがとよ」

「うん。それに、『獣化』っていう動物に変身するスキルもある。リュウキも、そのスキルを手に入れたってことにすればいい」

「あー……それは難しいな。実は……」


 俺はスキルイーターの話をする。 

 リンドブルムは「おおー」と言った。


「スキルイーター、珍しい。レジェンドスキルだよ」

「……レジェンド?」

「知らない? スキルの等級」


 スキルの等級は以下のように分かれている。

 ノーマル。

 レア。

 エピック。

 ユニーク。

 そして、レジェンド。最上級のスキルであり、現在持っているのが世界に数人しかいないとか。

 そんなスキルを俺は手に入れてしまった。


「ど、どんなスキルなんだ?」

「ドラゴンにぴったり。スキルを持ってる人の一部を摂取すると、そのスキルを覚えるの」

「…………無理」


 そんなグロイ方法かい……これ、使えないわ。

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