第4話 僕と四姉妹と時々おっぱい④
「……これはいったい、何の試練なんだろうね」
高校で半日授業を受けて。クラスメイトのちょっとしたお願い事を聞いてやり。
それが終わって帰宅したかと思いきや、今度は飛鳥姉の頼みで半魚人の群れと戦うことになり、ようやく1日が終わろうとしている。
入浴とは憩いの時。至福の瞬間。自分が今日も生きぬいたことを実感させられる、人生の洗濯の時間になるはずだった。
「……1人だったらね。こんな状況で落ち着けるかっての」
「…………」
湯船に浸かっている僕であったが……その対面には1人の幼女の姿がある。
日下部家四姉妹。末妹――日下部美月。
12歳の小学生。人間離れした美貌を持ったツルペタロリが全裸でお湯に浸かっていた。
「何というか……犯罪的な光景だよね。未だになれないよ」
実のところ、僕が美月ちゃんと入浴するのは初めてのことではない。
少し前のことになるのだが……僕は裏世界からやってきた悪魔の大群と戦った際、自分の命を捨てて自爆技を発動しようとしたことがあった。
幸い、助けがきたおかげで自爆することなく生き延びたのだが、後になって四姉妹からこれでもかと叱られてしまった。
2人の姉と2人の妹……4人がかりでひたすら説教をされた結果、僕は四姉妹の『お願い』をそれぞれ聞くことと引き換えにして、どうにか許しを得たのである。
日下部家で寝泊まりをするようになったのも華音姉さんの『お願い』を聞いた結果なのだが……美月ちゃんが僕に出したお願いというのが、『毎日、一緒にお風呂に入ること』だったのだ。
「…………」
美月ちゃんはいつもの無表情だったが、不思議とご機嫌そうに見える。
いったい何が楽しいのだろう。タオルを使ってクラゲを作ったりしている姿は、本当にただの小学生にしか見えなかった。
「美月ちゃん……やっぱりお風呂は別々にしないかな? 小学生女子と入浴なんて通報案件だよ?」
「…………」
思い切って提案すると、美月ちゃんがピクリと眉を上げた。
少し唇を尖らせて不機嫌さをアピールして、「パンッ」と音を鳴らしてクラゲを潰す。
「嫌」
美月ちゃんの返答はシンプルである。
まさに問答無用。たった1文字の言葉で僕の要求を却下した。
「えっと……でもさあ……」
「……約束した。約束は守る」
「う……」
「嘘をつくの、わるいこと。にーさまが言ってたこと」
そう言えば……子供の頃にそんなことを言い聞かせたような気がする。
嘘をつかないように。約束を守るように――年下の子供に教える一般的な道徳だったのだが、まさかそれがここに来てブーメランで返ってくるとは思わなかった。
「だ……だけどね。美月ちゃんは知らないかもしれないけど、小学生の女の子と一緒にオフロに入ると偉い人が怒るんだよ? ポリスメンが襲いかかってくるんだよ?」
「だったら……変身する?」
美月ちゃんがコテンと首を傾げながら尋ねてきた。
変身というと……大人の姿になるというのか。あのボンキュッボンのナイスバディなおっぱいさんに変身しようというのか。
「大人になる……だったら問題ない」
「……いや、それはそれで問題なような気がする。2人で入るには浴槽は狭いし、僕だって健康な男子だし」
僕は顔をひきつらせながら拒否をする。
小学生と一緒に入浴するのは不味いが、大人バージョンは大人バージョンで理性崩壊の危機である。
大人バージョンの美月ちゃん……あんな魔乳美女と一緒に風呂に入ったりしたら、僕の下半身まで大人バージョンになりかねない。
「うん……問題ないよね。家族だもん。小学生だろうが幼稚園児だろうが、一緒に入浴しても問題ないはず……うん」
「ん……なら平気。このままで」
「うにゅっ!」
僕の対面に座っていた美月ちゃんであったが……唐突に立ち上がり、グイッと背中を押し付けるようにして僕の脚の間に座ってきた。
浴槽の中で美月ちゃんを後ろから抱きかかえる形になり……うん、すさまじくヤヴァアーイ。
スベスベ滑らかな卵肌が僕の胸をくすぐってくる。銀色の後頭部が鼻に押しつけられ、ラベンダーのシャンプーの匂いが香ってくる。
そして……何よりもエキサイティングなのは、美月ちゃんのお尻が僕のアームストロング砲に衝突直前なことである。
「うぐ……ぐぐぐぐぐっ……」
小学生女子に浴場……じゃなくて、欲情などするわけがない。
するわけない。するわけがないのだが……美月ちゃんが身じろぎするたびに敏感な部位を尻が刺激してきて、ゾクゾクと背筋が粟立ってしまう。
「エレクトしたら負けだ……沈まれ、熱いパトスよ! ここでアームストロング砲を発射してしまったら社会的に終わってしまうぞ……!」
「ん……あとで背中、洗ってあげる……この身体で」
「ぐはっ!?」
美月ちゃんが首だけで振り返り、コクンと首を傾げてさらなる爆弾を投下してくる。
はたして、僕は理性とモラルを守ったまま入浴タイムを乗り越えることができるのだろうか?
僕らの戦いはまだ始まったばかりである。
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