第2話 僕と四姉妹と時々おっぱい②


「弟くーん! 心配しましたよー!」


「わっぷ!」


 華音姉さんが飛びつくようにして抱き着いてきた。

 たわわな胸が顔面を包みこんできて、幸せ過ぎる感触に心も身体も埋もれてしまいそうだ。

 華音姉さんは仕事着である黒の和服を着ており、そこがまた未亡人みたいで背徳があってグッドである。


 日下部家四姉妹の長女である華音姉さんは昔からスキンシップ過剰な女性であり、こうやってことあるごとにボディタッチをしてくるのだ。

 昔からやたらと甘やかしてくる華音姉さんであったが……1年前に夫を亡くなってから、さらに愛情が爆発するようになっていた。


 その夫というのが僕の兄――八雲玲一である。つまり、華音姉さんはたんなるお隣さんではなく、本当に血のつながらない姉にあたるのだ。

 兄は僕にとって唯一の肉親。彼が死んでからというもの、華音姉さんは夫の分まで僕のことを大切にするのだと蕩けるほどに甘やかすようになっている。

 正直、戸惑う部分も大きかったが……たった1人の肉親を亡くした悲しみがそれで埋められたのも間違いなく事実だった。


「か、華音姉さん……姉さん達も怪我がなさそうで良かったよ」


 今回の半魚人型エルダー討伐作戦において、華音姉さんと美月ちゃんは敵の退路を塞ぐ役割を果たしていた。

 まずは敵の本拠地であるビルに僕が先頭になって突撃。人類の敵を打ち滅ぼす力を持った女神の加護――『正義の聖剣』を手にして突っ込み、そのまま攫われている女性達を救助する。

 火力に長けた飛鳥姉、一撃必殺の異能を持った風夏が後に続き、討ち漏らした半魚人を撃破する。


 華音姉さんの役割は結界を張って敵を逃がさないこと。

 逃げた半魚人が町に逃げ込めば面倒なことになってしまうため、『陰陽師』である姉さんに結界で敵を閉じ込めてもらったのである。


 そうして逃げ場を失った半魚人を強力な攻撃手段を持った美月ちゃんに焼き払ってもらい、敵を逃がすことなく全滅させるという作戦である。


「うぷぷっ……」


 見事に作戦を成功させたご褒美として、このおっぱいサンドは十分すぎる報酬だが……このままでは窒息してしまう。

 僕は抱擁してくる華音姉さんの背中をタップするが、姉さんは離れることなくさらに両腕の力を強めてくる。


 いかん。

 このままでは本格的にヤバい。世界で最も幸せな死に方をしてしまう。


 そう思った矢先……天国に片足を突っ込んだ僕に、救いの手が差し伸べられた。


「華音お姉様、そんなに強く抱擁してはお兄様が窒息してしまいますわ」


「あんっ!」


 穏やかな口調で言いながらも、有無を言わせず華音姉さんが引き剥がされた。

 黒い和服を着た華音姉さんの首根っこを猫を捕まえるように掴んでいるのは、とんでもなくエッチな格好をした銀髪の美女。

 日下部家四姉妹の末妹である日下部美月である。


 年齢12歳。間違いなく小学生の幼女であるはずの美月ちゃんであったが、その姿はどう見ても華音姉さんと同年代の美女になっていた。

 それというのも……美月ちゃんは幼少時の事故によって命を落としており、その身体を『裏世界』からやってきた悪魔に乗り移られているのだ。

 ふだんは年齢相応にツルペタロリの美月ちゃんであったが、悪魔の力を開放した時だけはボンキュッボンの魔乳美女に変身する。変身後はやたらとエッチな水着姿になってしまうため、目のやり場に困ってしまう。


「ああ……助かったよ。美月ちゃん」


「恐縮ですわ、お兄様。華音お姉様の抱擁は感情が暴走するばかりで、品がなくていけませんわね」


「あー……まあ、所構わずに抱き着かれるのは困っちゃうかな?」


「そうですとも……愛情ある抱擁ハグというのはこうしてやるのです」


「わっ!」


 今度は美月ちゃんが抱き着いてきた。

 華音姉さんのように顔面に圧迫するようなことはせず、僕の右腕をやんわりとサンドイッチするようにして胸を押しつけてくる。

 プリンのようにやわっこい感触に右腕が包まれ、電気が駆け抜けるように全身に幸福が行き渡ってきた。


「み、美月ちゃん……!?」


「愛情表現である抱擁で相手を窒息させるなどもってのほか。抱き着くのならば腕だけでも十分ですわ。こうして工夫をすれば……ほら」


「うひゃあっ!?」


 変なところから声が出てしまった。

 美月ちゃんが僕の腕を抱いたままスリスリっと胸を動かしてきて、おまけに指先が彼女の脚の間に誘導されてしまったのだ。

 水着のような薄着……そのかなりきわどい部分に指先が触れてしまい、とんでもなく不味い状況になっている。


「ほら、こうすれば腕一本だけでも十分に愛情を注ぐことができますわ。お兄様を苦しめることなく、快楽だけを与えて奉仕することができますの」


「むう……美月ちゃんってば、いつの間にそんな技を……! 恐ろしい子……!」


 華音姉さんが戦慄する。

 一応は小学生であるはずの美月が繰り出したエロい技を目の当たりにして、某・有名少女漫画に登場するキャラクターのように白目を剥いていた。


「こうなったら、姉妹の長女として負けてはいられません! えいっ、お姉ちゃんのおっぱい攻撃!」


「うひゃうっ!」


 華音姉さんが左腕に抱き着いてきた。

 未亡人のような黒い着物を着ている華音姉さんであったが、和服の胸元をわざとはだけ、僕の左腕を開いた胸元に強引に突っ込ませる。

 変身した美月ちゃんよりはわずかに小ぶりなものの、十分すぎる大きさの爆乳に左腕が包み込まれた。しっとりと汗ばんだ肌の感触が全力で自己主張をしてくる。


「む……流石は華音お姉様。素晴らしい手腕ですわ! 貞淑な未亡人の象徴である黒い和服……そこに男の腕を入れるという荒業。兄嫁である女性の身体に触れることで発生する罪悪感をスパイスにするとはまさに妙技! 美月は感服いたしましたわ!」


「ふっふっふ……お姉ちゃんとして妹に負けるわけにはいかないのです。可愛い弟くんの筆おろしは長姉である私の役目ですよ!」


「これは負けていられませんわ……『淫蕩アスモデウス』の名を冠する悪魔の誇りにかけて、殿方を誘惑する手練手管で敗北するわけにはまいりません!」


「君ら何言ってんの!? 今ってそういう状況だっけ!?」


 左右から押し付けられる乳房に慌てて叫ぶ。

 右腕に美月ちゃんの魔乳。左腕に華音姉さんの爆乳。

 巨大な4つの山が僕を攻め立ててきて、理性という名の城壁をバキバキと打ち崩してくる。


 うん、どんな状況だコレは。

 敵のアジトに侵入し、女性を誘拐する邪悪なモンスターを倒すバトルパートかと思いきや、これじゃいつも通りのおちゃらけサービスパートじゃないか。


「アハハハハ! 2人ともユウに構い過ぎだって! そんなにエッチなことをしたら…………私も構いたくなるでしょーが!」


「わっ!」


 魔法少女エクレア・バード……つまり、飛鳥姉までもが便乗して飛びついてきた。

 首にぶら下がるようにして密着する飛鳥姉だったが、現在はいつものナイスバディな大学生ではなく小学生の姿である。

 そのおかげで理性は保つことができているが……後ろから首を絞めてくるからムチャクチャ痛い。

 イタイタしい魔法少女に痛いことをされている……うん、すごい状況だな。コレも。


「ちょっと3人とも、こんな時にエッチなことをしないでよ! 早く離れなさい!」


 この場において唯一、理性的な風夏がムッとした顔で割り込んでくる。

 僕と3人の姉妹をどうにかして引き剝がそうとするが……そのせいで風夏も僕に身体を密着させることになり、無意識なのだろうが胸を押しつける形になっていた。

 風夏の胸は華音姉さんと比べるとかなり物足りないが、中学生としては十分なボリュームである。

 以前よりも一回り大きくなっているような気がするし、スクスクと順調に成長しているのがわかった。


「いずれは姉さんらに負けないおっぱいちゃんになるんだろうな……楽しみなような、末恐ろしいような……」


「心配しなくても風夏ちゃんを仲間はずれにはしませんよー」


「そうそう、風夏もおいでって!」


「きゃあっ! ちょ……勇治、どこ触ってんのよ!?」


「お姉様達と一緒になってご奉仕ができるなんて……美月は果報者ですわ」


「…………」


 きゃあきゃあと騒ぐ四姉妹に囲まれて、僕は降参するように頭上を仰いだ。


 世界の危機が訪れても。宇宙からの侵略者が現れても。悪魔の軍勢やら悪の秘密結社やらと戦ったとしても。


 僕と四姉妹の関係は変わらない。

 僕達は今日も変わらず家族だったである。






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