試験②
生産の試験が終わって私はアレクシアと合流していた。次は戦闘の試験。形式は数人でグループを作り総当たり戦だ。つまり子供たち同士での戦いになる。今はそのグループの発表を待っている。
「エマの方も大丈夫だったんだね。良かったあ」
「あはは、ちょっと変なこともあったけどね」
アレクシアの方も問題なくできたようだ。むしろアレクシアは突っかかれることも無く試験が終わったようで羨ましい。
私の方はキアンとかいう男の子に文句を言われて散々だった。試験は問題なく終わったものの変な人に睨まれてしまった。これから学園生活中も絡まれることになるかと思うともう帰りたくなる。お母さんも一人にしてるし、もう帰ってもいいんじゃないかな。この学園も別に来たくて来たわけじゃ無いし。
「エマ! グループ表が張り出されたよ」
「は~い。行くよ~シュラ~」
私は帰りたいと思いつつグループ表を見に行く。シュラの鼻の上には蝶の姿のメアリーが乗っていた。最近のメアリーのお気に入りの場所らしい。シュラはメアリーをみて鼻をふんふんしている。シュラは結構違和感があるらしい。
私が呼びかけるとシュラとメアリーは私達の元へと来た。私達は四人でグループ表を見に行く。とりあえずあの男の子と一緒にならなければいい。あと戦いたくないからアレクシアも別がいいなと思う。試験を受ける人数は多いからそう簡単に当たりはしないだろう。
「アレクシア見っけ」
私は自分より先にアレクシアを見つけた。アレクシアのグループを見るが私はいない。どうやらアレクシアとは戦わなくて済んだようだ、良かった。
「エマもあったよ?」
「どこ?」
エマが指さす方を見ると私の名前が書いてあった。私はそのまま同じグループの人の名前を見る。そこにはこう書いてあった。
ウォルスス・キアン
「はぁ、帰りたいなあ」
「来たなエマ・レアンドル! 勝負だ!」
「はぁ」
私はアレクシアと別れて試験の場所へ向かった。同姓同名の別人を期待したがそんなことは無く目の前にいるのはさっきの試験で私に怒鳴ってきたあの男の子だ。なんという不幸。
しかも私と彼の対戦は一番最初ではないか。私はさっき盛大にフラグを立てていたらしい。服装からして良いところの坊ちゃんという感じだから私としてはあまり目を付けられたくないのだけれど、どうやらやるしかないようだ。
「またその猫を抱いているのか! 真剣にやれ!」
そんなこと言われてもシュラがいてくれないと私は困る。シュラがいる私が真剣で全力を出せるのだけれどシュラは精霊だとばれるわけにはいかない。王国では精霊を奴隷のように扱う風潮があると聞いたからなおさらだ。だからシュラについて説明しづらい。
「真剣ですよ」
「嘘をつくな!」
説明のしようが無いから納得してもらうことはできない。そうこうしているうちに試験官がやってきた。試験官もシュラを見て私が真面目に受けていないと思ったようだが、この試練も持ち込みは自由なので別にルール違反をしているわけでは無いからそこまで文句は言われなかった。
「それでは、両者構えて」
試験官の合図で戦う準備をする。キアンは右手に剣を構えて左手は開いている。魔法騎士のスタイルだ。左手で魔法を放ち、近接戦は剣で対応するようだ。
対する私は何も持たずシュラを撫でている。こうしていると自分でもなめていると思われても仕方が無いのかもしれない。それでもこれは今からシュラの力を借りるからよろしくねというコミュニケーションなのだ。
「では、はじめ!」
試験官の合図でキアンは剣を構えて突進してくる。この向きは、シュラを狙っている!?
「させない!」
私は錬金術で大量の人形を作り出す。今までの小さい人形とは違う、大人の人間のサイズのものだ。人形はそれぞれ剣や槍などの武器を持っている。
「な、なんだこれは?」
「行けッ!」
私が命令すると人形はキアンに向かって動き出す。
私がシュラと契約して出来るようになったことの一つに人形の自動制御がある。私一人で人形を動かすなら、人形一つ一つの細かな動きを全部自分で設定しなければならないが、シュラが居れば私は大まかな命令だけで後の設定はシュラがやってくれる。だから私達二人で一小隊を作り出すことが可能だ。あっという間に人形はキアンの剣を弾き、キアンを押さえつける。
「そこまで」
試験官の言葉で私は人形を土くれに戻した。人形を作るために削った地面を平らに直す。
「くそ、なんでだよ!」
キアンは未だ納得がいかないようで荒れているが私は気にせず試験官に挨拶し次の試合の準備をする。この調子なら悪い成績にはならないと思う。その後試合を終え、アレクシアと合流した。私は全勝したがアレクシアは一度負けてしまったらしい。
後日送られてきた結果は、私達は二人とも好成績を収めていた。
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