第百五十四話 頭蓋骨を抱く
血肉を犯して喰らい、快楽と暴虐の限りを尽くすのは狂う程に爽快でやめられない。それが抱き心地の良い『女』であるなら、尚更。
『生力由来術式』を扱う現人神が現れた頃の、戦乱の時代は特に愉しかった。逆らう
だが『現代』ではかつての如く、思うがままに血肉を喰らう訳にはいかない。面倒な事に、妖よりも圧倒的に
おかげで退屈な『隠世 猫屋敷』に引き籠もり、『魅了』で
代わり映えなく、ただ
「妾を
突然『猫屋敷』に現れたかと思えば、冷静に何を言い出すのか。この女は。
「どうした、『孔雀』。手下に、自分の隠世から追い出されでもしてきたのか? 」
冷静さを何とか装った俺は、同じ原初の妖である目の前の女を鑑賞する。
美しい女だと思う。絢爛な孔雀の尾羽が、視界すら華やかに奪う。鮮やかな
この女は美しくとも、喰えない。油断ならない
「寧ろ、追い出してしまったのは妾だ。『隠世』を人に侵される程、妾の力が弱ってしまったから」
「馬鹿な事を。半不死の原初の妖が、『戦い』と『飢餓』以外で弱る物か」
他の原初の妖が現代まで生き残れなかった理由は、その二つだけだ。だからこそ、『魅了』で隠世に
「あるのだ、三つ目の理由が。それは長い時を生き、特化した『異能』を持つ
「焦らさずに、ハッキリと言え」
「妾は……異能、『
俺が止める間もなく、彼女は簡易な帯を解く。彼女は躊躇いに視線を逸らしながらも、本能を猟奇的に刺激する素肌を晒した。まだ娶ると了承していないのに、床入りには早過ぎないか?
「見えるか、妾を侵食する醜い肋骨が」
白真珠の肌が成す豊満な肉体よりも俺の鼓動を独占したのは、金と白磁の
「何度も『
苦痛を浮かべ、激情を吐く珠翠の白い頬に赤みがさす。その頬に伝う涙に、脳髄に白い閃光が弾ける! 俺は珠翠の記憶ごと愛を知った!
「何故、今になって明かしたんだ……
「……何度もほのめかしたさ。それでも忘れ続けていたのは
憎悪の混じった言葉とは裏腹に、潤んだ翡翠の双眸は俺だけを捉える。隠せない甘やかな熱情に溶かされそうだ。これほど清浄で生ける快楽を、俺は他に知らない。
「素直に俺を愛していると言えばいいのに。
「五月蝿い、この不埒者が。責任をとってから、妾に焼香しろ」
忘却の枷からようやく解放された俺は望むままに、珠翠の腰を抱いて引き寄せた。彼女の頬を濡らす涙も、侵食する翡翠の肋骨も……。珠翠の心と身体を、俺が手に入れてしまったからこそ彼女を殺しかけている証だった。熟れた柘榴の肺が焼かれるように、甘ったるい息が重く苦しい。
「叶うならば、もっと早く娶らせて欲しかった」
「死の
「いいや。幻の華が咲く天上にいる心地だ。珠翠こそ、
「
俺を見つめる珠翠の双眸に、荒れ狂う緋色が
口吸いの間。炎陽に白い腕を絡ませた珠翠が、『彼の瞳の緋色』を
――視ているか?
『これは、大団円では無い。穢れた愛が狂い咲く地獄へと……
『過去夢』の役者を演じていた
―◆*_★【過去夢 展開 end 】★_*◆―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます