第11話 町をつくろう!

 シーテンの街を出て俺達の家【不死城】に帰ってきた。


「ここが元魔王が居たダンジョンですか。まさか自分がここに来るとは、不思議な感じがしますね」


「そうですね。わたしは冒険者では無いので、自分がダンジョンに入るなんて考えた事ありませんでした」


なにやらクレアさんとリリアは感慨深そうにしている。


「いやぁバッカスさん!魔動車っていいですね!私も欲しいです!」

「ハハハッ!そうだな!俺も欲しいな!」


 バッカスとニーナは魔動車がだいぶ気に入ったらしい。クレアさんも素晴らしいと褒めてくれた。今度から魔動車を公用車として使用するらしい。


俺はダンジョンの入口を造り中へと案内する。


「これが俺達が造ったダンジョン【不死城】です。1階はまだ回復エリアしか造って無いので、これからどうするか考えながら一緒に造って行きましょう」


「これがダンジョンの中か?何もねぇってのが奇妙だなぁ」


「そうっすね。ダンジョンの中とは思えないです」


 冒険者にとっては違和感しか無いかもな。ダンジョンってのは死ぬ可能性がある危険な場所だからな。


「町ごとつくるというのが面白いですね。すでに建物がある状態では普通出来ませんからね。お店をどのように配置するか好きに出来るのは楽しそうですね」


「はい。これを実際の街でやろうとしたら、すでに住んでいる人との話し合いと莫大なお金が必要なので、まず無理ですからね」


 商人として、ただで好きに店を建てる事が出来るというのはかなりオイシイ話であるから、クレアさん達もかなりやる気に満ちているようだ。


「取りあえず今考えているダンジョンの構造はこんな感じですね。1階のは取りあえず欲しい施設を書いておきました」


そう言って俺は壁にこのダンジョンの構造を表示した。


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最上階 俺達の家

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6階 食材エリア (家畜、畑、海、湖等)

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5階 ドロップ目的エリア

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4階 訓練エリア(洞窟)

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3階 訓練エリア(森) 

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2階 訓練エリア(草原)

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1階 各ギルド 飯屋、酒場 娯楽施設(本屋)

   鍛冶屋・道具屋 服等の生活必需品

   回復エリア

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地下ダンジョン(予定)

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「…………なるほどな、好きに造れるってのは非常識だな」


「そうですね。海ってなんですか?あと山があると良いと思いますよ(混乱中)」


驚いてくれているようでちょっとうれしい。山も造っておきます。


「訓練エリアはまぁ大丈夫だろう。こっちで指導する冒険者を見つければいいだけだし、引退したやつとか誰かいるだろう。ドロップ目的は何が欲しいかによるから商業ギルドの管轄になるな。冒険者としては地下に造る予定のダンジョンが興味あるな」


 バッカスは地下に造るダンジョンをどうするか考えている。ギルドの支部に関してはダンジョンの入口の側で良いだろうとの事だ。


「商業ギルドの支部は冒険者ギルドの隣で良いと思いますよ。お店では飲食店や宿泊施設はギルドの近くが便利だと思いますね」


「回復エリアは病院のような施設にしても良いんじゃないですか?人はいた方が良いですよね?」


 クレアさんとリリアがどこにお店を建てるか話している。回復エリアを病院にするのはダンジョンに入らなくても利用できるし良いかもしれない。


「実際に町をつくったら此処に引っ越してもらう必要もあるかもしれない。そうなったら家を建てる必要があるけど、一々俺が一人ずつ対応してられないから木材とかを用意して大工に普通に建ててもらった方がいいな」


「そうですね大工の仕事も増えますしそれでいいと思います。6階の食材エリアで資材もつくれますか?」


「出来ますよ。さっき言ってた山とか岩場とか造ればいいだけですから。自然と違ってすぐに復活しますから、ダンジョンの魔力がある限り何度でも生やせますよ」


「それは凄いですね。……町をつくるなら川や湖もつくって公園なども良いと思いますよ」


 資材とか思いつかなかったなぁ。公園ものんびり出来る場所はあった方が良いかも。やっぱりギルドに相談してよかったな


「おーい!俺とニーナで訓練エリアを見て回りたいんだが、どうすればいいんだ?」


「あっはい!階層を移動する転移魔方陣があるのでそれで行けますよ。陣の所にどこに行くか書いてます」


「おーわかった!よし!行くぞニーナ!」

「わっかりました!」


―――あの2人は元気がいいな。


「それじゃあ造ってみますね。ギルドはシーテンのを参考に少し大きめに建てて少しそれでやってみましょう」


「はい。よろしくお願いします」


 俺は操作盤でイメージした町をつくる。するとダンジョンが発光し、光が止むと町が出来ていた。


「…………これは凄いですね。一瞬で町が出来るなんて目の前で見てもしんじられません」


「…………はい。まるで夢の中のようです」


 2人ともかなり驚いているな。という俺も町なんてつくったのは初めてなので、感動している。町があるのに人が居ないので変な感じがする。


「それでは私はシーテンに戻って、此処に来れる人を募集しますのでしばらくお待ちください。リリアを連絡役として残していきますのでよろしくお願いしますね」

「よろしくお願いします」


「わかりました。最上階に俺達が住んでるからそこに泊まってくれ、ベアトリスとククルも居るから大丈夫だ」


「はい。わかりました」


「それじゃあ後でシーテンまで送って行きますね。バッカスさんがどうするかわからないので、戻ってくるまでさっき建てたお店でおやつでも食べながら待ちましょう」


―――そして俺達はおやつタイムを楽しんでいたら、冒険者組が戻ってきた。


「おい!何だこりゃあ!戻ってきたら町が出来てんじゃねぇか!」

「あっ!おやつ食べてる!私も食べる!」


まぁ……いきなり町が出来てたら確かに驚くよな。と思いながらニーナにおやつとジュースをわたす。


「取りあえず建ててみました。冒険者ギルドもシーテンを参考にしてます」


「そうか!まぁ使えりゃ俺は何でもいいがな!」


「それならよかったです。クレアさんは一度シーテンに戻るらしいですが、バッカスさんはどうしますか?」


「そうだなぁ、俺も一度戻っていろいろやらねぇといけねぇ事があるからなぁ……。めんどくせぇが、ニーナを小間使いに置いてくから好きに使え」


「小間使いってなんスか!?まぁここ楽しそうなんでいいですけど!」


バッカスさんも戻るらしい。ギルドマスターだから仕方ない。


「そうだ!あの一人用の魔動車売ってくれ!それで帰るからよぉ!」


「あぁ、良いですよ。そのうち一般販売されると思うんで、そうなったらいろいろな魔動車とか派生した乗り物も出てくると思いますよ」


「そうですね。今いろいろな所で開発が進んでいるようですよ?海を渡るの物も空を飛ぶ物もね」


クレアさんが、今まさにいろいろ開発されていると教えてくれる。


「ハッハッハ!そいつは楽しみだな!」


 俺は、ダンジョンの機能で魔動車を出してバッカスさんに渡した(形は魚じゃ無くてドラゴンが良いと言ってきた)金額は考えてなかったが、クレアさんが1人用なら一台20万ギリ位で良いんじゃないかと言っていたのでそうしておいた。お金は後で振り込んでおいてくれるらしい。


「それじゃあ先に帰るぜ!またな!」と言って帰って行った。


「それでは、私も一度帰ります。道中の護衛お願いしますね?」


「わかりました。そうだ、ニーナとリリアは何か必要な物があれば買ってくるぞ?」


「あっ!それなら一緒に行っても良いですか?」

「じゃあ私も行く!」


 リリアとニーナが自分達も行くと言ってきた。俺が女物買うのも抵抗があるし、その方が助かるから許可した。


「ニーナが行くなら私は必要ないかな?」と、ベアトリスは家に残る事にしたらしい。


「あぁいいぞ。護衛は2人いれば大丈夫だろ?ニーナはけっこう強いとバッカスさんが言ってたしな」


「そう言えば……マギ先輩って、時空間魔法が使えるんすよね?じゃあ転移魔法で街まで行けないんすか?」


「…………えっ?転移魔法?」


「?」


「…………そういえば、お前が転移魔法を使ってるとこ見た事無いな?どうしてだ?」


「…………そういえば使えるな…………完全に忘れてた」


「「「「えっ?」」」」



―――そして俺達は、転移魔法で一度シーテンに戻った。




バッカスさんの事を忘れて…………。















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