第411話 虹心へ戦果報告 その1

 ……


「……」


 俺は教室に戻るが教室内は無人で有り、俺を心配して待っていてくれた人は、誰一人居なかった。


(……俺は、陰キャラだからな!)

(けど、そんな陰キャラが、学年一の美少女と恋人関係だ!♪)


 と俺は、心の中でバカなことも思いつつ、自席に有るカバンを手に取り、学園から床屋に寄ってから、俺は帰路に就いた……


 ……


 ☆


 普段行っている床屋で整髪をして貰った後。俺は家に到着する。

 傷は浅かったため、普段通りへ近い髪型でどうにか収まった。

 イメチェンと考えればいいだろう!?


 床屋の店の人いわく。もう少し髪を切られていたら、スポーツ刈りなどの短髪にしないと、全体のバランスが保てられなかったそうだ。

 俺は店の人に『親友に、遊びで切られてしまって!///』と、困った笑顔で言ったが、店の人は『どうせ、苛めだろ…』と、複雑そうな表情をされた!!///


 昔から通っている床屋なので、床屋の人も俺が、喧嘩に弱い子だと知っている。

 今日は床屋に寄っていたため、普段よりかなり遅い帰宅時間と成る。

 だが、門限前の時間で有るので、母親や虹心に連絡は入れていない。


 俺は玄関内に入ると、玄関の靴置き場に当たる場所には、俺と父親以外の靴が揃っていた。

 よくよく考えれば、母親と兄は夜勤明けで有った。


(今晩は、父親以外のみんな揃うんだな…)


 俺は心の中で思いながら靴を脱ぎ、廊下を歩き、母親と虹心が居る台所に顔を出す。

 この時間帯なら、あの二人は確実に台所へ居るからだ。


「―――」


「―――」


 台所では母親と虹心が、調理の会話をしながら晩ご飯を作っていた。

 俺は母親と虹心に向けて、穏やかな表情で帰宅挨拶を始める。


「ただいま!」

「母さん、虹心!!」


「お帰り…。武蔵」


 俺の言葉で母親は、俺の方に顔を向けて澄ました表情で返事をする。

 虹心は何時も通りの、和やかな表情で俺に話し掛ける。


「兄ちゃん。お帰り~~♪」


「……あれ?」

「兄ちゃん、床屋さん寄って来た…?」


 虹心は、俺の髪型が違うことに直ぐ気付く!

 本当……この妹は、良く見ているな!!


「うん…。ちょっとな!///」


 俺は困った笑顔で虹心に言う。

 母親と虹心の前で『二村に髪を切られたから、床屋に寄ってきた』とは言わない方が良いだろう。

 虹心には後から言うけど、母親の前では絶対言わない方が良い。


「ふーん……兄ちゃんも、遂にお洒落を気にしだしたか!♪」


 虹心は、顔を“にやつかせながら”俺に言う!

 普段の俺なら反論をするが、今日はそれをすると“うっかり”失言をしかねないのでしない。


「まぁ……そんな所だよ。虹心!///」


「……?」


 俺は困った笑顔で言うと、虹心は澄ました表情をする。

 俺が反論をして来ないので、変だと感じ取ったのだろう。


(虹心が余計なことを言い出す前に、台所から立ち去ろう…)


 俺はこれ以上の会話はせずに、そのまま台所を出る。

 虹心も母親と料理中なので、俺に再度声を掛けたり、追い掛けて来ることはしなかった。


 ……


 この日も、何時も通りの時間が過ぎていく。

 虹心もあの後。髪の毛のことは一言も聞いてこなかった。


 晩ご飯・家族団らんの時間も終わり、それぞれが自室に向かい始める時。

 俺は虹心に穏やかな表情で話し掛けた。

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