第406話 戦後処理 その1

「亜紀……」

「抵抗したら……二村が持っていた、カッターナイフで髪の毛を切られた」


「!?///」


「キッ!」


 俺は困った表情で亜紀に言うと、亜紀は驚き、直ぐに二村を怒った表情で睨み付ける。

 二村は亜紀に睨み付けられて、バツの悪そうな表情を見せる。


「……///」


「……彩織!」

「あなた……自分がしたこと理解している?」

「学園内とは言え、これは立派な傷害罪だよ!?」


 亜紀は二村に眉をひそめながら、怒りと呆れを含ませた口調で言う。

 二村はどうしようも無い表情で、亜紀に言い始める。


「仕方ないじゃん。亜紀…///」

「三國が、私の言うことを聞いてくれないから……」


「はぁ~~」


 二村の言葉の後。亜紀は岡谷君のように大きなため息を吐く。

 戦いは終結を見せたが、まだ戦後処理が残っている……


 俺の実質的被害は、頭部髪の毛の一部損失で有るが、これをどう処理すべきか。

 俺の担任に報告して、事態を大事に発展させるか、それとも内内にさせるべきか?


「……///」


「……(汗)」


 二村と松田は逃げ出すことは無く、二人とも『参ったな…』の表情をしていた。

 亜紀が来なければ、二村・松田の思惑通りことが進んだろうが、亜紀が俺を助けに来てしまったので、それは失敗に終わった。


(鏡が無いから分からないが、頭皮が見えるまでは切られていないだろう)

(だけど、この髪型で生活を続けるのは無理だから、これが終わったら散髪に行かないとな…)


 俺が心の中で思っていると、亜紀は悩んだ表情で話し掛けてくる。


「武蔵君……どうする?」

「先生達に報告する?」


「本来だったら、そうするべきだろうけど、それをしてしまうと、俺と亜紀の関係が学園全体に広まる恐れも有る」


「これ以上、見えない敵は増やしたくは無い」

「出来れば、穏便に済ませたいところで有るが……」


 俺は困った表情で亜紀に話す。

 すると、亜紀は穏やかな表情に変わり、俺に話し始める。


「なら、武蔵君!」

「この後処理を、私に任せてくれない?」

「武蔵君の悪い様にはしないから…!」


(悪い様にはしない……この言葉って、良い意味では、余り使われない言葉だよな?)


 どうやら亜紀には秘策が有るらしく、この後処理を俺主導では無く、亜紀主導で行いたい感じで有った。

 俺と亜紀は恋人関係で有るから、亜紀もおかしなことはしないだろう!?


「分かった」

「亜紀の方が俺より遙かに優秀だし、頭も切れる!」

「亜紀に一任させるよ!」


 俺は穏やかな表情で亜紀に言う。

 亜紀は微笑みながら、俺に言い始める。


「……ありがとう。武蔵君…」

「私たちに、有利な条件を導き出すよ!」


「あっ、ちょっと、耳を貸して…!」


「?」


 亜紀は最後の文章を『何かをひらめく』表情で言うので、俺は亜紀の口元に耳を近付ける。

 亜紀は小言で、ささやくように俺の耳元へ話し始める。


「武蔵君……今から、彩織達と話し合いをするのだけど、武蔵君のスマートフォンで、その会話を録音しておいてくれないかな?」

「彩織は真面目な性格だから問題は無いと思うけど、松田君は信用出来ない子なんでしょ…(汗)」


「うん。分かった…」


 俺は亜紀の言葉を、素直に頷きながら言う。

 俺が余計なことを言うと、二村・松田に感づかれる恐れが有るからだ。


 亜紀はこれから行う、和平交渉の内容を録音しておきたい。

 こうしておけば、後から二村や松田の『言っていない。しらない!』が、通用しなくなるからだ。


 亜紀は俺より遙かに、上を行く人で有った!

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