第342話 市立美術館 その1
『ガタン、ガタン、―――♪』
俺は陽葵先輩と電車内で雑談を楽しみながら、
雑談の内容は陽葵先輩のプライベートより、妹で有る虹心の話題が殆どで有った。
少しは陽葵先輩のプライベートは聞けたが、当たり障りの無い内容ばかりで有った。
『去年までは、お姉ちゃんの手伝いを積極的に行っていた!』や『受験勉強は大変では無いけど、少し不安…』とかの、ごく普通の内容で有った。
俺的には……浮いた話しを少し期待したが、まだ其処までの関係では無いらしく、その様な会話が一切出て来ることは無かった……
陽葵先輩の服装も褒めたが、陽葵先輩からのリアクションは普通で有って、好感度は得られなかった!///
……
陽葵先輩は、虹心のことをかなり気に入って居るらしく、やはり俺と関係を深める切っ掛けとしたのは虹心で有るらしい。
陽葵先輩の中では、虹心が神秘的に見えるらしい!?
自分の青春を犠牲にしてまで、家族を思いやる人は早々居ないそうだ。
だが、陽葵先輩
俺はそれを『ほんまかいな!?』と、感じながら聞く。
確かに……俺が学園を卒園したら、虹心への負担は一気に軽くなるだろう。
現に兄が大学に在学中の時は、自宅での食事は一気に減ったし、身の回りを兄なりに積極的に行うように成った。
それだけ、母親や虹心への負担軽減を意識しているのだろう……
俺も大学へ進学出来たら、兄と同じ行動をするかも知れない?
今の虹心は青春を犠牲にしてまで、家事をしていることが俺の目にも映るからだ。
(と思っても……虹心は確かに優秀な妹で有るが、陽葵先輩の様な器が有るようには、俺には見えないぞ!?)
だが、それは俺と虹心が、身近過ぎる関係でも有るかも知れない。
俺が優秀な人間で有ったら、虹心が並に見えるのだろうが、俺が並で有るゆえ、虹心が優秀に見えてしまう。
しかし、兄妹と言うフィルターが掛けられてしまうと、優劣では無く、上下関係に変わってしまう。
俺は虹心の凄さを理解しているようで、恐らく理解していないのだろう……
☆
午前11時を少し過ぎた時刻……
俺と陽葵先輩は、名美崎市立美術館に到着する。
特に、問題は発生すること無く到着出来た!
今からチケット売り場でチケットを買って、陽葵先輩と美術館の特別展を楽しむのだが、美術館の癖して……意外に家族連れが多い!!
今日が休日で有るが、それにしても多すぎる。博物館並みの賑わいである気がする!?
だが、これには“ちゃんと”理由が有って、現在開催されている特別展は、熊の○○さんの特別展で有る。
子どもに、絶大の人気を誇る熊の○○さん。
知らない人間が居ない、○色の大きい熊さんで有る。
一度は絵本やアニメで、目にしたことは有るはずだ。
この特別展の影響で、普段は人気が少ない美術館も、大賑わいを見せている!?
大盛況と言えば良いかな?
俺はチケットを買う為。人が並んでいるチケット売り場に並ぼうとすると、陽葵先輩が和やかな表情で話し掛けてくる。
「三國君!」
「事前に買って置いた特別展の前売り券と、さっき出して貰った、特急座席指定券のお金も払うね!」
何と、陽葵先輩は事前に、特別展の前売りチケットを買って置いてくれたらしい!
だが、陽葵先輩と最終打ち合わせを行った時。陽葵先輩はそんな事は言っていなかったが??
しかし、俺は敢えてそれを言葉に出さず、和やかな表情で陽葵先輩に言う。
「あっ…。そうなんですか!」
「それは、凄く助かります。陽葵先輩!!」
「三國君!」
「お姉ちゃんがね、気を利かせてくれたのだよ!!」
『特別展のチケットは結構するはずだし……それに、私から三國君にお願いしたことだから、これ位のことをしないとね…!♪』
「お姉ちゃんがそう言って、出掛ける直前に、特別展前売り券を二枚渡してきたんだよ!!♪」
はしゃぐような、嬉しそうな表情で言う陽葵先輩!
真優美さんが、俺たちの分のチケット代を出してくれたそうだ。
粋なことをしてくれるな、真優美さん!!♪
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